1話
登場人物
ベルグト 18歳 酒場の下働きをしている青年
キャロル 17歳 放浪の占い師
パナ 3歳 野良犬
「おーい!パナ。飯だぞ!」
ここは町の酒場の裏路地。この酒場で下働きをしている街の青年ベルグトは
お店の料理で出た残飯を、最近懐いてきた野良犬パナにえさとしてあげていた。
パナは嬉しそうに尻尾を振って喜んでいる。差し出された残飯をむさぼるように食べ始める。
「ハハハ、腹減ってたんだな。でも、ごめんなあ。店の残り物しかなくてな
こんなものでよければたくさん食べてくれよ」
うまそうにご飯を食べるパナをベルグトは木箱に座りながら眺める。
この酒場で働き始めてから、気まぐれでえさをやったらなつかれてしまった。
ついでにパナという名前まで彼が勝手につけた。
犬はご飯を食べるのがすごく早い。ご飯を咀嚼するというより飲み込んでいるようにも感じる。ぱくぱくぱくっとすぐに残飯を平らげてしまった。
夜も遅くになり、店はもう終わりなのでこの日のベルグトの仕事も終わり
である。
荷物をまとめて店主に挨拶をしてから、愛犬のパナと共に店を後にする。
「よしっ、家に帰るか!」
「ワンワン!」
大きく伸びをして裏路地から街の大通りまで出る。
時刻はもう夜になろうとしていた。街の人通りもまばらである。
そこへふと防波堤の段差に座る人影が目に入った。
辺りは薄暗くなっているがぼんやりと見える。酔っぱらいだろうか?
その人影を目を凝らして見ると、どうやらまだ若い女性らしい。
しかし黒っぽいローブを身にまとい、雰囲気がすごく怪しげである。
こんな時間に一人で、何をしているのか?
向こうの女性も何故かベルグトを凝視しているようだ。
その女性と視線がぶつかる。
何やら嫌な感じがしたので視線を外してパナと共にそそくさと歩き続ける。
「関わらないほうがよさそうだ」と感が告げる。
トコトコトコ、ハッハッハッ
ベルグトの足音とすぐ横を歩くパナの息づかい。そして
コッコッコッコッ
というヒールの音が後に続く。
訝しげに思い後ろを振り返る。
先ほど防波堤に座っていた女性が伏し目がちに、ベルグトの数歩後ろを歩いている。
気味が悪いが思い過ごしかもしれないのでそのまま前を向いて歩き続ける。
コッコッコッコッコッ
ベルグトの足音に続いてヒールの音がする。ずっとついてきているようだ。
歩みを止めて後ろを振り返る。
「何だアンタ?なんでついてくるんだ。俺に何か用か?」
その女性も歩みを止めて立ち止まる。そして顔を上げた。
遠目にはわからなかったが近くで見るとすごく若そうな女性である。
「そなたには凶兆が見える!近いうちに大きな不幸が襲うと見えた!
間違いない!!」
ベルグトの顔を真正面に見ながらその女性はそう叫んだ。
静かな夜の街の通りに声が響いた。
1000文字づつですが完結まで描いていきたいです。
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