ピグマリオン小説
僕は今、生活のために小説を書いている。不思議だ。
「君の謎を愛す旅」というものが本になった。
この本は僕の自己満足で出来上がっている。
本になるとは僕自身思っていなかったのだ。
本の帯には、ミステリー×恋愛×冒険と書かれているが、内容はそんな大それたものではない。
日常にありそうなことを僕の理想と想像で書いているだけなのだ。
本の内容は、理想の彼女と僕が恋をする。
その彼女はいつもトラブルに巻き込まれる。
それを解決するのにあっちこっちに行くという話なのだ。
理想の彼女を書く時間は、幸せな時間だ。
この小説の中でしか会えないから、僕は食べるのも寝るのも忘れて彼女を書く。
彼女のことは、いくらでも書ける。不思議だ。
名前は【ふわり】柔らかな優しいイメージな名前が好きだ。
髪は黒髪のロングでツヤツヤ。
肌は白くて、照れるとすぐ顔が赤くなる。カワイイ。
年齢は秘密なんだけど、僕と同じ26歳にしておこうかな。
ふわりは実在しない。
それはわかっている。
僕も小説の中で生きられたらなといつも思う。
理想と想像でどんどん出来上がる文章。
たまには刺激的な内容も書こうとふわりの服を脱がせたり…いや、これは多くの人に見られるのと一緒か?恥ずかしいよな?
ごめんね、ふわり。
人の目につかない2人だけの小説を書こう。
僕はいつしか観音小説を書くようになった。
僕の欲求をふわりにぶつける。
ふわりはいつも優しい。
それが本になった時、僕は苦しかった。
本になると思わなかった。
ふわりをアダルトビデオに出してしまったように感じた。
観音小説は、編集者が間違って持って行ってしまい、
「これはまたいいもの書きましたね!」
と言って本になってしまったのだ。
もう、嫌だ。
ふわりとの生活を邪魔されたくない。
そして、僕は小説を書くことを辞めた。
日記を書くことだけが僕の楽しみになった。
2月14日(水)
ふわりから手作りチョコをもらった。
僕はそれを美味しいと食べる。
お返しは何がいいか聞くと、何もいらないとふわりは言う。
指輪やネックレス、カワイイワンピース、最近は猫も欲しがっていたのに。
ホワイトデーのお返しを一生懸命考えようと思う。
「やっぱりお返しすぐ欲しい。」とふわりは言う。
「何が欲しいの?」と僕。
僕に近づいて目を閉じるふわり。
僕はふわりに優しくキスをした…
こんな日記を1日何ページも書いてしまう。
ふわりと一緒に文章の中で生きたい。
僕は僕の望みは…
僕はただただ、ふわりを愛した。