表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eden~楽園のイクェス~  作者: だざい
9/16

初めての戦場

こんにちは、だざいです。

仕事の関係で更新が遅くなってしまい申し訳ございません。

やっと零士の初戦闘が書けました。

温かい目で読んでいただけると嬉しいです。


1歩、また1歩、炎の中突き進むように、

【イクェス】の蒼い巨体が歩を進める。


「よし正常に稼働している。一旦ここから離れよう…

 炎が強いな、「ダートレーサー」で一気に抜けられるか…?」


轟轟と炎は燃え上がり勢いを依然として増し続けている。

この基地を燃やし尽くさんとばかりの烈火の勢いだ。

このカタパルトもそう長くは持たないだろう。


「他のみんなはどうしたんだ…?アリアさんは?

 いや今は外に出よう…敵がいるかもしれないから慎重に」


「ダートレーサー」で抜けようとも考えたが落下物の危険があると思い、

一旦カタパルト出口までは歩いていくことに決めた。

零士は、このまま倉庫出口から逃げよう。

そう思ったとき爆風で目の前の黒煙が晴れた。


晴れた視界の先に1機のMTが立っていた。

見たことのないMTだった。

一瞬仲間かと思ったが次の瞬間には敵だと認識した。

右手に今にも振り下ろそうとする赤黒くなった斧、左手には無惨なミーレウスの頭部

そしてその降ろされるであろう斧の先には、

出血し膝まづく「アリア」の姿がだった。


「女ぁもったいないねぇ、一緒に来れば俺の娼婦として生かしてやるのに

 そんなにエメルダのために死にたいなら死になぁ!」

「うぅ…」


初めて見た紫の「敵」、

さっきまで自分と喧嘩をしていた仲間、

敵が何か叫んでいたが、内容など頭に全く入ってこなかった。


けれど【イクェス】は一筋の閃光となって走り出していた

考えるより先に、思うより先に、

「ダートレーサー」を起動させ【イクェス】の最高速度で

敵のMTを自身事倉庫の外に押し出す。


ドゴォ!!!!ギャウウウウウウウウウウウ!!!!


「な、なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ここからでていけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

そのまま炎を突き破り、扉を突破し赤い夕陽の照らす外に出る。

それと同時に【イクェス】は急停止をしたことで、

敵のMTはそのまま勢いを殺せずに後ろ向きに転がっていく。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「はぁ…はぁ…」


零士の心臓は鼓動を速めてバッグン、バッグンと音を立てている。


「はぁ…はぁ…、!?アリアさん!!」


敵を押し出し、急制動による圧力を受けた零士は

視界がぼやけたものの即意識を切り替えて、

アリアの救援に向かおうとした。


が、零士は目の前の光景に絶句した。


夕日が地面まで赤く染めたかのように赤黒い

天まで上るような黒煙

日が落ちても最後まで地表を照らすオレンジの光

そして戦い動きを止めた【ミレース】の白


この四色で染まった世界は「地獄」そのものだった。


「う…」


急激な吐き気が零士を襲う、

所々に兵士は倒れ体は原型を留めずただの「肉」になっていた、

その服についていたワッペンは、

さっきまで一緒に訓練をしていたテルス兵士だった。


「ジーン先輩!!」

「!?…な…仲間がいたのか…?」


吐き気と戦っていた零士は仲間がいたことに気が付かず、

対応が一瞬遅れた。


土煙を上げながら突き飛ばしたMTに駆け寄る声は、

若い同い年ぐらいの青年の声だった。


「先輩大丈夫ですか!?」

「ぐぅぅ…一体何だってんだ…知らないぞ新型のMTなんて…」

「【ソルダート】はまだ動くんですか!?撤退しましょう!」

「馬鹿言ってんじゃねえ!!ここまで来て引き下がれるか!!」


ギリギリと音を立てながらジーンのMTが起き上がりつつ、

差し出された手を強引に振り払って立ち上がる。

【ソルダート】それが彼らのMTマニュアル・トランサーの名だった。

パープルのボディと戦いの中でついたであろう鮮血は「悪魔」とも見える姿であった。


「しかし先輩!!データにない機体と戦うのは危険です!

 ここは一度引き返し、ズノミー隊長の指示を仰ぐべきです!」

「うるせぇ!ここで引けばエメルダが脱出するだろ!!

 見てろ…あのズノミー隊長も戦果を挙げて出世したんだ、俺だって…!!」


どうする…もめている間に逃げるか!?

いや…逃がしてはくれないだろう…

くそ、「ドッズ・マグナム」は格納庫に!!

なら、何か!何か武器は…


零士は敵兵士の会話の合間に、

必死にこの状況を打破する方法を模索していた。

素行がぐるぐる回り、息が荒くなっていく。

どうする、どうする!?


「みろ新米奴は戦いに慣れていない!

 あんなMTひねりつぶしてやる!!」

キュウィィィィ!!

「ジーン先輩!!」


ジーンが「ダートレーサー」を使い一気に【イクェス】に特攻をかける。

走りながら持っていた斧「ゾル・トマホーク」を両手に持ち

正面から叩き切ろうとする。


「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


零士は突然の特攻をしてくる【ソルダート】に恐怖を感じた。

そしてその恐怖と共に自分は死ぬのかと、

振り上げられた「ゾル・トマホーク」がそれを予見させてくる。


こんなところで…まだ何もできてないのに…


人間というのは不思議なものだ。

「1週回って落ち着く」とはよく言ったものだろう。

零士は「死ぬ」かもしれないこの瞬間に

トーシローの言葉を思い出した。


…お前すげぁ、アクトスチールの壁を割るなんて…


「!?」


零士はとっさに【イクェス】を低い姿勢に操作した、

腰のパワーエンジンから一気に前のめりに動き出し

背中、肩そして右手へとその勢いあるパワーを拳に乗せて

ソルダートの顔面に右ストレートを叩き込んだ。


そのままソルダートは一回点をし顔面から地面にめり込んだ。


ドッガァァァァァンンン


音がし【ソルダート】が沈黙した。


「ジーン先輩!!!」

「はぁはぁはぁはぁ…やったのか…」

「こ、こいつよくも…!!」

もう一機の【ソルダート】が同じく「ゾル・トマホーク」を構えて、

ジリジリと詰め寄ってくる。


「や、やるのか…!?他に武器は…」

「うぉぉぉぉ!!!!」

「き、きた!!!ハッ!小型連射砲!?」


青年の猛々しい咆哮に身震いをしたが、

モニターのイクェスの両胸部に小型連射砲の表示が見えた。

右手のレバーのボタンを押し一気に弾を発射する。


「な、なにぃ…!?!?」


バババとサブマシンガンのような音を響かせながら、

敵に機銃の嵐を叩き込む。

しかし同時に残弾数が勢いよく減っていく。


「くぅぅ…貴様ぁぁぁ!」

ビービービー

「うっ!くっそ…弾が切れた!!」


このタイミングを逃すかと今度こそ「ダートレーサー」を使い、

【ソルダート】が間合いを詰めてくる。


こいつ…強い!!

零士は咄嗟にそう思ったが当たり前である。

敵はこの星の軍人なのだからたった数日【イクェス】に乗った零士と

実力差があるのは当然の結果だ。


「ちぃ!!」


【イクェス】は転がるように避け即座に「ダートレーサー」を使い避ける

ヴォンヴォン!と上下左右に降られる斧を寸前のところで避け続ける。

武器が足りない…何か…ん!?

そこで地面に突き刺さる【ミーレス】の「ミスティックソード」を発見する。


あれだ!!

避ける動作を利用して一気に低い姿勢で旋回しながら、

「ミスティックソード」を手に取る。


「なにぃ!?」

「く、来るのか!?」


【ソルダート】が立ち止まり間合いの図り合いが始まった。

獲物のリーチは【イクェス】が、

物量のパワーなら【ソルダート】が、

お互いが一撃で相手を仕留めるために、

静かにお互いの腹の探り合いをする…

そして…


「いくぞぉぉぉ!!!」

動いたのは【ソルダート】だった


「うぉぉぉぉぉ!!!」

零士も無我夢中でその切り合いに応じる。


ガァァァン!!ガァァァン!!と鈍く金属のぶつかる音が戦場に響き、

攻守一体の戦いが繰り広げられる。

しかし戦闘は【イクェス】の優勢だった。

【イクェス】はその機動力を活かし、【ソルダート】の攻撃を受け流すため、

【ソルダート】は攻めきることができずにいた。


「こいつ一体何者なんだ!?」


本人たちの体感では永遠に続くかと思った斬り合いだったが、

ここで【ソルダート】は大きなミスをした。

足元にあるミーレスの残骸を踏み、

ズルリッ!と左足が滑った。


「しま…!!」

「ここだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


バジバジバジ!!!!!キュゥゥゥゥゥンンン!!!


零士はこの一瞬を見逃さなかった。

【ゾル・トマホーク】を【ミスティック・ソード」ではらい、

体制の崩れた【ソルダート】へ右ストレートを叩き込む。

この時零士は無我夢中で【イクェス】のもう一つの武器を作動させていた。

動力源「テラジウム」から発生するエネルギーを拳に圧縮し、

MTの通常物理パンチの3倍の威力で放出させる、

超近距離武装「バレル・インパクト」のボタンを押しながら、

【ソルダート】へ攻撃を繰り出していた。


メッシャァァァァァ!!!!


【ソルダート】は先程とは比べ物にならない勢いで、

基地の城壁へと吹き飛ばされその巨体は壁にめり込んでいた。

そのまましりもちをつくように倒れこむ


ガラガラ…ズズゥゥン…


「ぐ…ごばぁ…なんなんだ…あのMTマニュアル・トランサーは…」


乗っていた青年はあまりの衝撃に口から吐血をし、

そのままもうろうとする意識で【イクェス】をモニター越しにみる。


「い、今のはいったい…【イクェス】の手が光った??」


零士は今自分が何をしたのか検討もつかなかったが、

ただ目の前の敵を倒したことだけは揺るがない事実だった。

【ソルダート】顔は潰れ首がフレームの破損により力無く垂れ下がっている。


「とりあえず…やったのか…?」

 

2機の【ソルダート】が沈黙しているのを確認して、

零士は少しずつ早くなった呼吸を整え始める。

すると左のモニターに何かが動くのを感じ、

直近の戦闘もあってかすぐに攻撃体制を取る。

しかしそこで動いていたのは「アリア」だった。


「アリアさん!!!!!」


すぐに「ダートレーサー」を作動させアリアの方へ急ぐ【イクェス】。

アリアはよろよろ…と敗れた隊服を引きづり基地の端に吹き飛ばされたトレーラーへ向かっていた。

しかしトレーラーまであと少しという所で緊張の糸が途切れたように垂れ込む。

だが【イクェス】は止まる事をせずそのままアリアを両手で包むようにキャッチし、

トレーラーまで急いだ。


「アリアさん!!しっかりしてください!」

「…おまえ…だったのか…」

「喋らないでください!逃げましょう!!」

「ダメだ中に…う…まだエメルダ様が…脱出していない…」

「そんな!!」

「見たんだ…わた、私は…まだ格納庫のシェルターに…うぐ、

 向かっている異星人と…エメルダ様を…」


ゼェゼェと肩で呼吸をするアリアは必死に状況を説明してくる。


「頼む…エメルダ様を…お願いだ、救ってくれ…」


涙を流し自分より主君の救いを求める。

恐らく零士のことなど信頼などしていないにも関わらず、だ

自信の無力さ、屈辱、プライドそういったものを全て捨て、

零士に縋るように言っているのだ。


「…く!!!」


零士はトレーラーの前にそっと降ろし。

「ダートレーサー」で真横の倉庫に向かう。

距離にして200メートルもない。

急げ!!急げ!!!と零士をもう1人の自分が囁く、

炎を越え、後先も考えずに蒼い閃光となって進む。


「!?」


倉庫の奥に人影が見える。

「若い身長の低い人影」と「身長の高い人影」だった。


「…!?トーシロぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!


叫んだ

その人影がトーシローだったから。

零士は叫んだ

2人の危機だったから。

一度は覚悟を決め、別々の道を進もうとした。

しかし、この危機の中共に逃げることができる。

一緒に!!


「トーーーーシローーーーーーー!!!!」

「…!?」


驚いたような顔でこっちを見る人影

炎が揺らめきその強すぎる熱がトーシローの顔をモニターが写す

その顔は驚きながらもこっちを見て、

いつものような笑顔を向けていた。


救うんだ。

トーシローとエメルダと一緒に逃げるんだ

右手を前に向け勢いを殺すことなく走る。

あと50メートル!!


「零‥!!!!!!」


トーシローが叫んだ瞬間…

強い爆発と共【イクェス】が後ろに吹っ飛んだ。

白い一瞬の閃光と共に


「う…いったい‥‥トーシロー!?」


【イクェス】がうつ伏せのまま顔を上げ見た時、

倉庫はそこになかった。

倉庫のあった所はもう瓦礫のみの跡地だった。


「うぁぁぁぁ!!!!!とぉぉぉぉしろぉぉぉぉぉぉ!!!!」


叫び、叫び、叫び

瓦礫を眺めるがそこにトーシローの影はなかった。

黒煙の炎が舞い上がる、それだけだった。


ビー!ビー!!ビー!!!ビー!!!!


そんな零士を気にも留めず、

【イクェス】のセンサーがアラートを告げる。

零士は感じ取った。


このアラートのぬしがトーシローを殺したのだと。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


【イクェス】が真後ろを振り返る。

そこにはオレンジがかった彩色のMTが首の折れた【ソルダート】の前にいた。

しかしその姿は今まで見たどのMTとも違っていた。

足は無く大きな4つのキャタピラ

肩には2つの大砲

顔には大きなレンズがつき、

まるで「戦車」だった。


しかし、冷静さを欠いた零士は叫ぶ」


貴様おまえが…貴様おまえがトーシローをやったのかぁぁぁぁぁ!!!」


しかし「戦車」のようなMTのパイロットは飄々と答えてくる。


「なるほど、尺詰まだエメルダ達はあそこにいたんだなぁ、予想通りだ」

「こいつ…殺してやる…」


【イクェス】の瞳が光る


「お前のMT…見た事がないタイプだな、

 悪いがここは俺たちが退かせてもらうぞ。

 目的は達成したんだからな」


そう言うと勢いよくキャタピラを回転させて方向転換をする。


「おい!!待て!!!!」


零士が「ダートレーサー」を作動させようとした時には

「戦車MT」は猛スピードで駆け出していた。

咄嗟のことで対応できなかった零士はもう追いつくことはできない。


「く、くそぉぉぉぉ!!


それでも「ダートレーサー」を使い追いかける

出遅れたが【イクェス】はそれでも着実に「戦車MT」に追いつくスピードに達していた。


「こいつ…速いな‥

 おい!!蒼いMTのパイロットやるなぁ!!!」

「絶対に追いつく、絶対に許さない!!!」


走りながら「戦車MT」と零士は距離が縮まるごとに会話が成立していく。


「貴様ぁ!!名前はなんだ!!」

「零士…先導零士だ!!」

「覚えておくぞ零士!!

 俺の名は【ユーキ・ズミノー】だ!また会おう、戦場でな!!」


不適な笑いと共に「戦車MT」から白い煙が噴き出す。

「煙幕だ」

煙は一気に周りに飛散し【イクェス】の視界を奪う


「く!!何も見えない!!!」


先の見えない中「ダートレーサー」で突き進むことは自殺行為だった。

【イクェス】の方が周り大木に掠ったことで冷静になり、

ゆっくりと零士は【イクェス】の歩みを止める。


「く…そ‥くっそぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


どんよりとした白い霧は、

まるで零士の心情を具現化したように、

濃く、そして悲観に満ち溢れていた。


「ユーキ…ズミノー…俺もお前の名前を忘れないぞ…」


零士の初めての戦場は友を失った「敗北」から始まった。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

ちょっと仕事の関係で今後は一週間に一度の更新となりそうですが、

定期的に更新して参りますのでまた読んでもらえると嬉しいです。

ではまた10話をお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ