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Eden~楽園のイクェス~  作者: だざい
7/16

蒼の騎士 イクェス

こんにちは、だざいです。

7話「蒼の騎士 イクェス」を執筆しました。

温かい目で見てくれると嬉しいです


カツ、カツ、カツ…


零士はトーシローに連れられて細い廊下を歩いていた。

歩いていてここはどうやら施設というより、

元々は工場のような場所だったのでは?と思った。

時折感じるガソリンのような独特な匂いや

時折聞こえる機械音と蒸気の音などが、

特にそう感じさせたのかもしれない。


きょろきょろと迷いネコのように辺りを見渡していると、

察したようにトーシローが口を開いた。


「ここは廃棄されたMTマニュアル・トランサーの製造工場だ」

「!」


驚いた顔が面白かったのかトーシローはニヤッと笑い話を進める。


「だが今はテルス反乱軍の拠点の一つとなっている」

「テルス反乱軍??」

「あぁ、テルス人は地球人と違って、多少の言語訛りや土地文化は違うが、

 話す言語や人種は同じで、国家が1つしかないんだ」

「黒人や白人のようなものはない…と?」

「あぁ、正確にはそういった人種の括りみたいのが存在せず、

 うんと昔に統合されている。」


多少髪の色が違うくらいの差だ。と付け加え

トーシローは少しため息をしながら、

振り返って少し残念そうな顔をした。


「テルスは国王とその配下12人に統治されているんだが、

 前国王の死後になぜか後継者が見つからず、

 現在は仮の王として配下の序列1位の奴が国を統治しているんだ

 あ、国の名前は「テルスマギア帝国」だど」


「では…その統治の仕方に問題があると?」


「そうだ、本来争いを好まないテルス人らしいんだが、

 現仮国王(序列1位)になってから、

 大幅な軍事強化、過度の税制の導入、また奴隷制度の導入などなど、

 国民に負担と圧力をかける政治を始めだしたらしい」


トーシローが残念そうな、悲しそうな顔をしたのは、

きっとこんな私利私欲のような考えをする所も、地球の政治家に似ている。

それが虚しく思ったからだと零士は思った。


「結果各地でこの現「テルスマギア帝国」の圧政に対し、

 対抗する者たちが続出した。

 それが「テルス反乱軍」で俺を救ってくれた組織だ」


そう言うとトーシローはまた歩き始める。

突き当りの角を曲がったところで扉があり、

その目の前でトーシローは立ち止った。

壁についているボタンを押しながら、


「俺は訳があってこの反乱軍に協力しつつ、地球への脱出方法を考えている所だ。

 零士が襲われたことも名前を知っていたのも、

 ここで感知し救援に反乱軍が向かってくれたからわかったんだ。

 反乱軍の全員が俺を信用しているわけではもちろんないが…

 それでも俺たちの命の恩人には変わりない」


ゆっくり開くドアから光が差し込む。

眩しい…

トーシローは光をバックに静かに零士の方を向き、


「この先にいるテルス人は少なくとも仲間だと俺は思っている、

 だから怖がらないでやってくれ…」


そういって光に包まれていった。


ウィーーーーーーン…ガゥン…


扉が開いて俺は目の前の光景に唖然とした。

そこには5~6メートルだろうか人型のMTマニュアル・トランサーが、

資材をテルス人の指示で運んだり、クレーンなどでMTマニュアル・トランサーを組み立てたりしていた。

雰囲気こそ地球の工事現場の積み荷作業に近かったが、

そのSFアニメのような景色に俺は少し圧倒されそうになる。


「す、すごい…」

「そうだな(笑)地球じゃ見ない光景だからなぁ」

「そしてあれがMTマニュアル・トランサー…なんですね」

「基本的な形の作業用MT【ベイス】だぞ!」


きっと何もなければこの光景に興奮していただろうが…

複雑な思いの中【ベイス】を眺めていた。

初めてしっかりとMTマニュアル・トランサーの実物を、

まじまじと見た俺は不意に心の声がポツリと


MTマニュアル・トランサー…まさに神にも悪魔にもなれるマシンだ…」


そのつぶやきを聞き逃さずに、

トーシローが俺の顔をバッと見たところで、

言葉が漏れていたことに気づき俺は口を押えた。

だがやはり聞いていたらしくトーシローは「いい例えだな」とにやにやしていた。


「その通りだMTマニュアル・トランサーは神にも悪魔にもなれる。

 理性あるやつが乗ればきっと多くの人を救えるだろう。

 だが悪意ある者が乗れば殺人マシーンに早変わりだ」

「…」

「だから乗る奴はそれなりの覚悟をしなくちゃいけない。

 仲間を救いに行きその先で戦うことになったとしてもだ」


トーシローの言葉がよみがえる。


…お前に戦う力をやる…


美也子達を探しに行く、

それはその先でテルス兵と戦うことも意味している。

その覚悟を持てと今肌で実感した気がした。


「零士最後の問いだ…行くんだな?」

「…行きます。行かなきゃいけないんだ」


トーシローが頷くと1人のテルス人がこちらに近寄ってきた。

金色の透き通るような髪と蒼い瞳…

一瞬絵画に映る女神かと思う容姿に、零士は一瞬唾を飲み込んだ。

丸みを帯びて柔らかいボディラインから彼女が女性だと本能で感じた。

そして俺にあの無菌室で声をかけ、壁を殴った先にいた、

あのテルス人女性だった。


「ボトベーブシビロバーボソベノブヒビトバメボガベサブメビタバノボネ」

「ボオベウブエビメ!」


トーシローは突然の会話に動揺することなく話始める。

その対応に驚き俺は言葉が出なかった。


なんで話せるんだ…

いったい何語なんだこれは!?


ぽかん…としている俺を見たトーシローは、

一度会話を切ると「すまん、すまん(汗)」と

ポケットをごそごそしだし、骨振動イヤホンのようなものを渡してきた。


「これをつけてみろ」


それを手に取り耳元に付けてみる。

その時気づいた隠れて見えづらかったが、

同じものをトーシローもつけていた。


「私の言葉は理解できそう??」

「大丈夫だエメなんてったって俺が作ったんだからな」

「!?!?!?!?」


イヤホンを通して二人の言葉が聞こえる。

理解できる!!


「トーシローさん!これは!?」

「俺が作った翻訳機さ、

 テルス人の言葉が1つしかなくて不幸中の幸いだったよ」


頭をポリポリ搔きながら二ッと笑う。


「取り合えず傷口は開いてないようね、よかったわ」


静かにテルス女性が話す。

透き通るような声に聞こえた。


「これをあなたが…?」

「ここの医療班が対応してくれたわ。

 私はトーシローと一緒にあなたを保護しただけ」

「そうですか…でも命を救ってくれてありがとうございます」


感謝の言葉を伝えるとテルス女性は驚いた顔をしていた。


「私たちが怖くないの?憎くはないの?」

「正直言うと怖いです…」

「…」

「でもトーシローさんの話を聞いて、

 テルスの人たちも俺たちが怖いんだって知りました。

 だから少しでも歩み寄ってくれる人たちがいるなら…

 俺もあなた達と歩み寄って【友人】になりたい」


そうゆうとテルス女性は静かに頷き、

トーシローはニカニカと笑って歩みを再開したので、

3人で作業ブロックを抜け小さな通路を歩いていった。


コツコツ、カツカツ…


1人1人靴のタップ音を響かせ、

歩きながらトーシローがこの女性について説明をしてくれた

このテルス女性は「エメルダ」というらしい。


この反乱軍拠点のリーダーであり、

撃墜されたメルセデスからトーシローを助けた恩人とのことだった。

最もそう説明しているトーシローを、

「買い被り過ぎだ!」と否定はしていたが…

そこでフッと思い出した。


「あ!エメルダさん…あの」

「どうかしたの?」

「先刻?先日は目の前で壁を殴りすいませんでした…」

「あ、あぁ!監視室のことね。こちらこそごめんなさい。

 トーシロー以外の地球人は初めてだったものだから…」

「いえいえ!そんな謝らないでください!!」


お互いに謝罪ラッシュになりそうなタイミングで、

そういえば…とトーシローが首だけこっちを見てきた。


「にしてもよくあのアクトスチールにひび入れたよな」

「えぇ軽い爆発にも耐えるのに…驚いたわ」


え…そんなのに!?

あのパンチでヒビが…?

ワンちゃん俺の腕折れてないの奇跡なんじゃ…

火事場の…


「さすがになかなかできることじゃない」

「心配になって右手検査したけど…異常はなかったわ。

 地球人は丈夫なのね」

「エメ!違う!そんなことない!

 零士が異常なんだ!!

 零士!お前も訂正しとけ!

 じゃないと今後『地球人は丈夫だから崖から落ちても平気よね?』

 とか言われるかもしれない!!」

「さすがにそんなこと言わないわよ!!」


その夫婦漫才のようなテンポの良さが面白くて笑ってしまった。

久しく笑っていなかったので少し頬が痛い。

そんな俺を見て意を決したようにエメルダが歩みを止め、

それにつられるように俺とトーシローも足を止めて彼女の方を見た。


「零士」

「なんですか?エメルダさん」

「私も一ついいかしら」

「なんでしょう…?」

「【さん】は、いらないわ」

「え…?」

「私たちは【友人】になるのでしょう?

 なら【さん】はいりません。お互い名前で呼び合いましょう」

「あ!俺も【トーシロー】だけでいいど!

 礼儀正しいのは日本人のいいところだが、

 敬語は堅苦しい!!もっとラフに呼ぼう?」


2人が微笑みながら俺に目線を送ってくる。

突然の申し出に驚いたがそれより、【友人】という言葉に衝撃を受けた。

これが最初の一歩だと感じた。


エメルダの手は少し震えており、

それを察したのかトーシローがその手を取って、

大丈夫だとエメルダを見つめていた。


勇気を出してくれたんだ。

なら俺も…


「もちろんだよエメルダ。

 俺たちは今日から【友人】いや【友達】だ!

 これからもよろしく」


そういうと二人は嬉しそうに微笑み、お互いを一度見つめあって

こちらこそよろしくとエメルダが手を差し伸べてきた。

俺は迷うことなく握手をした。

これがテルス人と地球人の、

共存の始まりになってほしいと願うばかりだった。


通路を抜けたところで今度は大きな扉が目の前に現れた。

と言っても10メートルは無いぐらいか…


「エメ!あれはもう運び込んだのか?」

「さっき最後の調整が済んでここに格納したわ」

「エメ…いやエメルダ」

「…零士は『行く』選択をした。そうでしょう?」

「あぁ…俺は『行かない』選択をした。

 こいつは仲間を探しに行くために俺が作った…

 『行かない』選択した俺より、

 『行く』選択をした零士に俺はこいつを託したい!」


トーシローが強い漢の目でエメルダへ言うと


「あなたが決めたなら、その選択を信じて一緒に進むわ」


とドアに向かって歩いていく。

彼女がカギのようなものを壁に差し込み、

その瞬間扉が開いた。


零士は二人の会話が何を指しているのかわからなかったが、

この倉庫の中には2人にとって大切な何かがあるのだろう。

そしてその何かについて事前に2人で話し合いここにいるのだと理解した。



ガゴゥン…

中は暗くて見えづらかった。

真っ暗だが何かが目の前に二本足で立っている。

トーシローとエメルダの1歩前に出て中を見ようと踏み出した次の瞬間、

パッ!とスポットライトに照らされ、

蒼いMTマニュアル・トランサーが姿をした。


各装甲は蒼く、脚部や腕部は白い二色の機体

シンプルな見た目だが言い表せぬ強い意志オーラを感じる姿だった。

そしてその蒼い色はエメルダの瞳と同じ色をしていた。


「こいつは戦闘汎用MTマニュアル・トランサー【イクェス】だ

 この星のMTマニュアル・トランサーに、地球での機械工学技術を加えて俺が再設計し、

 エメルダが設計図を基にOSを書き換えて建造したワンオフ機体だ」


イクェス…


「零士こいつを持っていけ。役にたつ」

「これを俺に…」

「もともとは俺が仲間を見つけるため、

 自分の命を守るために作った…」


絞り出すような声だ


「だが俺はこいつに乗ることができなかった。

 どうしてもこいつに乗って戦うことができなかった…

 イクェス…【騎士】という名前を付けたが、俺は騎士にはなれなかったんだ」

「トーシロー…」

「だから俺に『仲間を救いに行く』といったお前にこれ(イクェス)を預けたい」


俺は一瞬迷った。

この機体に乗る資格が俺にあるのだろうかと…

悩んだ俺に後ろから澄んだ声で名前を呼ばれた。


「零士」

「エメルダ?」

「あなたの仲間は生きていないかもしれない

 だが数多の危険から救いの手をを待っているかもしれない

 どちらにしろこれから熾烈な戦いは避けられないわ」

「はい…」

「でもたとえ残酷な運命であっても進むと決めたのなら、

 どんな事にも屈しない力が必要だです。

 これからあなたが進む場所は、救いたい想いだけではだめなのです。

 今のあなたに私とトーシローの力は不要ですか?」


俺の力だけでも…

救いたい想いだけでも…


俺だけじゃ美也子達を救えない…

でも2人の想いとならきっと探し出し、救い出すことができるはずだ。

もう俺に迷いはない。


「エメルダ、トーシロー…ありがとう

 2人の力を借りて俺は先に進むよ、

 美也子をみんなを探し出して見せる!!」


決意を新たに再度目の前の蒼い騎士を見つめる。

蒼の騎士イクェス…彼の眼には今どんな未来が見えているのだろうか。


頼む…無事でいてくれ美也子…みんな…


==============


~数日前~


コンコン!


「トーシロー入ってもいいかしら?」


エメルダの声が聞こえて俺は目を覚ました。

しまった…途中で寝てしまった…


ウィン!とドアがスライドしエメルダが入ってくる。


「おいおいおい!ストップ!ストーップ!!

エメルダそんなに簡単に男の部屋に入ってきちゃだめだ!」

「…?どうして?」

「どうしても何も男はみんな狼だから、

 そんなに無防備に女の子が男の部屋に入ってきちゃだめだ!」

「よくわからないけど…私ならオオカミ(棒読み)?も瞬殺してみせるわ」

「んーそうゆう意味じゃないんだけどなぁ…」


エメルダはこのテレス反乱軍のリーダーだからか、

ちょっと自信過剰なところがある。

良く言えばカリスマ性のあるとも言えなくもないが…

もう少し自分が女の子だという自覚は持ってほしい。


「それで?どうしたんだよ、

 すまん俺は徹夜でアウディの解析をしていて寝てしまっていたようだ…」

「もう一人の地球人の生き残りレイジ?が目覚めたわ」

「ほ、本当か!?」

「えぇ、だから呼びにきたの」

「すぐに準備していく!!先に行っていてくれ!」


そう告げるとエメルダは静かに頷き部屋を後にした。


PS.

次回までに部屋を片付けようと思った。


~~~~~


俺が医務室に到着すると異様な空気が部屋を包んでいた。

どよめくテレス医療班、俺が来て安堵するエメルダ。

ひびの入ったアクトスチールの壁と倒れこんでいる生き残り。


えぇ…何があったのよぉ~…

こいついきなりアメリカのヒーロー映画に出てくる、

緑の狂戦士とかになったりしてないよな…

なんだっけ…ハ○ク?


「こいつすげぇな…

 よくもまあ、催眠ガスの1.5倍の濃度の部屋で、

 硬化ガラス並みに固いアクトスチールを素手で割ったもんだ。

 差し詰め死ぬ前の最後の一撃ってところだな…」

「トーシロー」


不安そうなエメルダがかわいそうだったので、

大丈夫だと俺は笑って見せた。


「エメ!こいつ俺と同じ部屋にし、一緒に観察すればいい」

「そうね…そうするつもりだわ」


エメルダと同じことを考えたことが嬉しいのと、

もう1人地球人が生きていたことが嬉しくてニヤと頬が緩んでしまう。

改めて生き残りの顔を見たくなりペットショップで動物を見るように、

俺は彼を眺めていた。


いい顔で寝てやがる。

やりきったぜみたいな…

起きたら説明大変そうだと考える。


だがこの星に来て新しいことが始まりそう、

そんな予感が俺の中にあった。



ここまで読んでいただけてありがとうございます。

やっと7話で零士のMTマニュアル・トランサーを出すことができました。

【イクェス】は零士と共に仲間や大切な人を守る騎士のような存在であってほしい、

そういった願いから生まれたロボットになります。


次週はついに【イクェス】初戦闘までかけたらなぁと思います。

また読んでいただけると嬉しいです。


Ps.絵が下手すぎてメカデザインができないので、

  どなたか絵師さんに【イクェス】達を書いてほしいです(´;ω;`)

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