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Eden~楽園のイクェス~  作者: だざい
6/16

生存者

こんにちは、だざいです。

6話を更新しました。

今回は少し踏み込んだ話になります。

温かい目で読んでいただけると嬉しいです。


「…い、お…ろ…」


なんだ?


「おい…おき…」


???

頭がぼやっとしていてよく聞こえない

何て??


「起きろって言ってんだよ寝坊助!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?!?」


突然目の前に人の顔があった!

俺は驚きのあまり、飛び上がるように体を跳ねさせた、

そしてすぐ横にあった壁に思い切り頭を打った。

ごつんという鈍い音とジンジンと感じる重い痛みが後頭部を襲う。


「いってぇぇぇぇぇ…」


しかしぼやける目で正面の男が目に入るや否や

心拍数が急激に早くなりバグン、バグンと心臓の音が自分で聞こえる。


「か、か、か(笑)なんだびっくりさせたか?」

「あ、あんたはだれだ!?」

「ん~警戒心がつよいな…まぁ無理もないか」


身長は低く、おそらく150センチほどだろうか

ぼろぼろのグレーのコートに丸いサングラスをかけている男が

俺をのぞき込みながら、にやにやと言葉を紡いでくる。

その見た目が妖怪のようにも見えたたため

不気味な雰囲気すぎて正直怖かった。


ここはどこなんだ?

さっきまで俺は…そうだ異星人たちに捕まって…

ってことはこいつ…異星人だ…

そうに違ない…

こんなに不気味な奴見たことがない。


「おい!」

「ん??なんだ先導零士」

「ここは…!?なんで…俺の名前を…!?」

「あーしまった!順序が違うな…さらに混乱させたかな?」

「さ、さては俺に何か…俺の体に何をし…!!」

「まて!!まーて!落ち着け!説明してやるから!」


零士が言葉を言い終える前に小男が大声をあげながら、

慌てたように手をばたばたさせた。


「まず落ち着けよ、状況は理解しているから。

 いったん茶でも飲んで落ち着こう。」


そう言うと小男はとても見覚えのある木で作られた

テーブルと布クッションのようなものを持ってきた。


「これって…」

「お前日本人だろ?俺もなんだ。

 茶を飲むならちゃぶ台に座布団があった方がいいだろぅ??」


そう、ちゃぶ台と座布団だった。

地球の…それも実家でよく見た昔ながらの…

こんな場所ではまず見ることもない。

零士がマジマジ見ていると。

小男がそんなところにいないででこっちにきて座れと、

笑いながら自分の反対側に席を作ってくれた。

一瞬罠か?…とも思ったが、どうにもそのようなそぶりには見えず、

零士は遅る遅る言われるまま座った。


ん?…日本人…?


座ったと同時に小男を再度見た。

今度はしっかりと彼の目を見て。


「あなたは地球人なんですか…?」

「そうだぞ」


即答だった。

胡散臭い話だ。そうやって騙す気ではないだろうか。

疑心暗鬼になっている俺を横目に、

男は湯呑に一杯の茶を注いですっと目の前に置いた。


ゆらゆらと揺れる湯気ですら不気味に感じる…


もう一度小男をみると「のんでみろ、あったまるど」とニカッと笑った。

罠だ。罠に違いない。

しかし遠慮するなとニカニカ笑う目の前の男からは、

そういった悪意のようなものは不思議なことに感じなかった。

ここにきてから何も口にしていない。

喉もカラカラだったこともあり、

意を決し恐る恐るズズッと茶をすすった。


緑茶だ…地球の…日本の…


俺の目に涙がこぼれた。

懐かしい地球の味に涙が止まらなかった。

やさしい味、少し苦く、

風味が茶葉独特の深みがかった香りが鼻腔から抜けていく。


もう一度小男を見る。

すると「大丈夫だ」と彼もズズッと茶をすすっていた。

その言葉に零士の人生において、

久しく感じたことのない、やさしさと安心感にさらに泣いていた。


しばらく時間が経ち、

零士の精神が安定し始めたのを見計らって、

男は口を開きだした。


「やっぱり温かいお茶を飲むと緊張が和らぐな!」

「すいません。取り乱しました」

「いや、無理もない。誰だって最初はそうなるさ。特にこの星ではな…」

「改めて聞いてもいいですか?あなたは誰ですか」

「俺の名前は岡山藤四郎、まぁ気軽にトーシローと呼んでくれ!」


トーシローと名乗る男は俺たちが到着するまでの話をしてくれた。


「俺はメルセデスⅠの設計者兼外来宇宙研究者としてここにやってきた。

 俺たちの乗っていたメルセデスⅠは予定通りに現地の地形調査や、

 動植物の調査を行うためにこのEdenに降り立ち

 事はすべて順調に進み、これなら人類は移住できるぞと誰もが喜んでいた。」


俺は静かにトーシローの話を聞いていく。


「しかし地球と97%同じ星を見つけた。つまりほぼ地球と同星にいるからこそ。

 愚かにも失念していたことに気づけなかった」

「何に…ですか??」

「この星にも人間がいる可能性を…だ。」


俺は言っている意味がわからなかった。


「トーシローさん。お言葉ですが俺たちは何度も衛星調査をして、

 現地の人類種は観測できなかった。だから…」

「そうだ俺たちの誰もが人間のような知的生命体はいないと結論付けていた…。

 しかしそれは大きな間違いだった。」


そう俺たち国際宇宙研究所は何度も衛星探査機で調査をし、

星の周りから地表の写真を何度も確認した。

その結果一度たりとも人間のような生命体は観測されなかった。


零士がそんな馬鹿なと考え込んでいると

トーシローはポケットから小さな石を取り出した。


「これは…?」

「この星のエネルギー鉱石【テロメリア】だ

 この星地球でいう車も電車もこいつを動力源にしていて少しの電力で

 莫大なエネルギーを発生させることができる。一種の核のようなものだ

 おそらくこいつだけで…2tトラックが動く」


ぎょっとした。

こんな小さな石でそれだけのエネルギーが発生できるなんて…

地球のエネルギー問題が一瞬で解決しそうだ。


「こいつはこの星に無数にあり今もなお発掘されているらしい

 だがエネルギーを発生できる反面、強力な電波障害を起こしてしまうデメリットがこいつにはある」


デメリット、電波障害、

その二単語で俺の中に仮説が走った。


「まさか電波障害が発生していた影響で観測器が正確な情報を送ることができなかった…?」

「恐らくな…現にメルセデスのSOSも地球とは交信できなかった…」

「俺たちはメルセデスが消息不明になったことでその原因と可能であれば救助のために来ました」

「知っている、見ていたからな俺のアウディで来たんだろ?」

「そうです。アウディⅡもトーシローさんが?」

「設計だけな。建造は別の奴さ」


ひらひらと手を振るトーシロー。

話を整理するに俺たちがメルセデスのSOSを受信できたのは、

「テロメリア鉱石」の少ない原野の地域(サイド51と呼ぶらしい)で、

サイド51に俺たちが接近していたことで偶然SOSの信号を受信できたようだ。


本来は鉱石の影響で電波障害が起こるためEdenに近づきすぎると、

惑星間通信はできなくなるということだ。

どおりでいきなり地球との通信遮断が起こるわけだ。


「話を戻そう、結論から言うとこの星に人類種は存在していた」


一瞬の沈黙の後震える声で零士はしゃべった。


「俺がさっき見た…」

「そうだ、お前がさっきいた部屋で壁の外から除きこんでいた奴らが、

この星の人間【テルス人】だ。

「テルス人…というか…さっきの部屋のこと知っているんですか?!」

「あぁ、俺もいたからな!あそこに」


けらけらと笑いながら説明を続ける。

その話はあとで順番になと付け加えて。


「さらに言うとお前の乗っていたアウディと、

 俺たちの乗っていたメルセデスは現地のテレスの防衛組織に撃墜させられたんだ」


唐突にその顔から笑顔が消える。

怖いほど真顔に一瞬背中に寒気が通った。


「俺たちは必死に抵抗したが、

 奴らのロボット兵…MTマニュアル・トランサーに成す術もなかった」

「マニュアル…トランサー…?」

「あぁ…この星には地球のように用途に合わせた乗り物がほぼなく、

 その代わりに運用されているのが【作業用有人型ロボット】通称【MTマニュアル・トランサー】だ」


まるでどこかのSFアニメに出てくるような話だなと思ってしまう。

だが実際にその姿を目を見ているから笑えない。

目を閉じれば恐ろしいあの戦闘がフラッシュバックしてしまう。


「地球の乗り物は用途によって車や飛行機、戦車など様々な種類に形が分かれているが、

 EdenではMTマニュアル・トランサーにパーツを付け替えて、

 各環境に合わせて対応させるのが主流になっているようなんだ」

「なるほど…地球のように環境に特化させるのではなく、

 基本のコアになる部分はそのままで効率よく環境に対応させるように文明が進化した…というわけですね」

「おぉ!話が早くて助かる」

「じゃあ…」

「察していると思うが俺たちを襲った白いのは【戦闘用飛行MT:ラジウム】と言うらしい」


ラジウム…あのロボット名前…


「恐らくこの星の航空隊といったところだろう」

「でもいきなり攻撃するなんて…」


俺はなぜ攻撃されたのか分からず、

また彼らが攻撃してきたのか意図が全く分からない。

抱え込むようになぜ…と考え込んでいると、

トーシローが諭すように話しかけてくる。


「零士、それはちがうど」

「?」

「彼らにとっての俺たちはエイリアンであり、ある意味モンスターといっても過言ではないんだ」

「そんな!見た目ほとんど変わらないじゃないですか!!」

「落ち着け零士!考えてもみろお前は初めてテルス人を見た時どう思った?」

「…!」


その言葉を聞いて俺は口を閉じた。

怖かった…恐ろしかった…


「怖かっただろう?」

「…はい」

「怖いから逃げる、恐ろしいから戦う、知りたいから捕獲する。

 テルス人も俺たちと変わらない。怖いから排除したんだ。

 零士の【恐怖】が薄れたのは今テルス人の知識を【知っている】からだよ」


俺は言い返せなかった。

テリトリーに入った俺たちが悪い。

トーシローの見解によるところが大きいだろうが、

確かに筋は通った意見だった。


「でも…」

「あぁ…とはいえ殺されかけたし、実際に死んだ仲間もいる…

 それだけでこっちが悪いで済ませられる話じゃない」

「…じゃあトーシローさん以外の乗組員は…」

「別々に脱出ポッドで逃げたが…

 少なくとも俺の乗ってたポッドで生き残ったのは俺だけだ」

「そんな…」


悲惨な現状を聞きそこでハッと気づく。

なぜ今まで気がつかなかったんだ。


「俺は…!アウディが沈んでから何日たったんですか!?」


急に立ち上がって叫んだのでトーシローはびっくりして後ろに倒れこんだ。


「む、6日だ!」


6日そんなに…


「お、俺の仲間が脱出したんです!彼らは、美也子たちは…」

「すまん、墜落地点はわかったから捜索に向かったんだが…

 すでにもぬけの殻だった」

「そんな…」


俺はその事実に強烈な脱力感で膝から倒れこむ。

しかしトーシローは言葉を続ける。


「現地にいるのは危険と判断して逃げたか、

 それとも捕まったか…いづれも考えられる。

 しかし…」


トーシローが零士を見て言葉を止める。

言うか言わないか悩むように。

少し間をおいて再度話始める。


「着陸時点では全員生きいるのは間違いない」

「え…?」


いまなんて…生きてる?


「恐らく見た限り3人乗っていたな。どうだ?」

「はい!確かに乗っていました!」


俺はトーシローに詰め寄り両肩をつかんだ。


「本当に生きているんですか!?」

「あ、あくまで着陸時の憶測だ!ただポッドの前で嘔吐した痕跡もあったし、

 死体もなかった。あらゆる観点と証拠から多少の軽傷はあるはずだが、

 生きてるのは間違いないと思う」


よかった…よかった…生きている可能性がある…

ゆっくりとトーシローの肩から手を放す。

「探しに行かなくちゃいけない」と言おうとした時。


「探しに行くのはやめろ」

「は…?」


俺は素で間の抜けた声を出してしまった。


「なぜですか!?仲間が生きてるかもしれない。危険な目にあっているかもしれない

 なのに見捨てろというんですか!?」

「…そうだ」


俺の怒声に近いような問いに、苦しそうに下を向きながら、

トーシローは言った。


「零士…気持ちはわかる。だが今はこの星を脱出することを考えるんだ。

 外に出た瞬間…君がテルス人に襲われてしまう」

「…く」

「わかってくれ零士…、俺はもう仲間が死んでほしくない…」


頼む。とトーシローは手と額を地面につけてすがるように言う。

震える拳を握りながら、

俺はすぐに言い返そうとしたが、

トーシローの震える肩に思いとどまった。

彼は零士の知らないここでの生活の中で言い表せないほどの、

悲惨な現状を目の当たりにしてきたのだろう。

だからこそ「死んでほしくない」と言ったのだ。


この時さっきまでのトーシローに打って変わり、

その小さくなった姿を見て零士は切なさ感じた。


彼は本当にやさしい科学者なんだと思った。

本心から零士を死なせないために、土下座までして止めようとしている。

考えてみれば終始この男は零士に気を使い、

混乱している零士落ち着かせ、生き残れるように自身の知識を与えた。

この人は信頼できる人だ。

それは間違いない。確信した瞬間だった。


脱出を優先に考える。

きっとそれが一番正しい判断なのだろう…

生きるために、生き残るために…


でも…


「トーシローさん頭を上げてください」


そっとトーシローの肩に手を置く


「トーシローさんの気持ちはよくわかりました

 俺のためにありがとうございます」


「零士…」


頭を上げるトーシローの目は潤んでいた

彼は本当に俺を救おうとしてくれている。

一緒に生き延びようといってくれている。


しかし…


「でもごめんなさい。俺は探しに行きます。

 トーシローさんが俺のために言ってくれてるの理解しています。

 それでも俺は仲間を見殺しにできない」

「…ぁぁ…ぅ…」


それでも、俺は美也子たちを見捨てられない…

静かにしっかりトーシローに伝える。

トーシローは声にならない声を出しながら、

零士の覚悟を確かめるように目を見ていた。

そしてしばらくして下を向き…


「…わかった」


諦めたように、

そして何かを決意したようにそう呟くのだった。


そして…


「零士、どうしても行くなら…俺についてこい…」


すっ…と立ち上がり膝をつく零士をまっすぐ見つめて、


「せめてお前に生き残る武器をやる…」


その顔は戦地に赴く友を送り出す漢の顔をしていた。


~~~~~~~


ガウン…ガウン…


暗く、暗い倉庫でいくつかのスポットライトに照らされる中、

作業用基礎MTマニュアル・トランサー【ベイス】が、

数人のテルス人の指示で資材を運んでいる。


忙しなく動く【ベイス】やテルス人の中に、

一際美しく場違いのようなテルス人の女性が立っていた。

彼女の目線の先には1機のMTマニュアル・トランサーが、

その目覚めの時を待つかのように立っていた。


その体は例えるなら流星のように蒼く、

目の前に立つテルス人女性の瞳と同じ色をしていた。



ここまで読んでいただいてありがとうございます。

今回の生存者「岡山藤四郎」は少し謎の敵の正体に触れることと、

僕がこの小説を書こうと思ったきっかけ、

「宇宙人が地球に来たとしたら、宇宙人は地球人の行動をどう思うか」を、

語ってほしいと思い登場させました。

僕の見解は…きっと怖いだろうでした。

言葉もわからないのに捕まえて来たり、攻撃して来たり、

それを僕なりのストーリーにしたくて始めました。

皆さんはどう思いますか??


次回は7話です。

あと楽園だけだとタイトルとしてどうかな…?

と思ったので少し変えました(汗)


近々更新予定ですのでまた良かったら読んでください。

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