古代の巨人
こんにちはだざいです
やっと書けました。
遅くなって本当にごめんなさい。
今回も温かい目で見ていただけると嬉しいです。
「第1世代型MT…」
零士は目の前の巨人の姿に1歩後ずさった。
【イクェス】も含め今まで見てきたMTは約5メートルほどの身長だったが、
この【ゴレーム】というMTはその倍はあろうかという大きさだったからだ。
右手にはメリケンサックのような武装が装備され古い見た目とは裏腹に、戦闘を視野に入れたマシーンなのを感じる姿だった。
ウェダはそんな零士の姿を横目にしつつ【ゴレーム】のコックピットへ乗り込む
「さぁ、こいつとお前のMTで決闘をする。村外れの戦闘訓練場所まで来い。
キキ!お前はそいつに案内してやれ!」
ゴゴゴという音と共に赤い目を光らせて巨人は目覚めた。
「はーい!パパ!!ほら零士あんたの【イクェス】取りに行くよ!」
地響きをあげて歩き出したのを見計らってキキに手を引かれる。
状況も把握しきれていないまま零士も【イクェス】に乗り込むのであった。
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【イクェス】はキュインと黄色い目を光らせてウェダを追うようにダートレーサーを起動させた。
「せ、狭い…」
「ちょっと零士!!変なとこ触んないでよ!!」
「いやなんで君まで乗るんだよ!手のひらに乗せて運ぶっていたじゃないか!」
「やーよ!せっかく未知のMTに乗れるんだもん、絶対コックピットがいい!!」
【イクェス】のコックピットは本来1人乗りだがそこにキキが無理やり入り込む形で乗っている。
「あ!そこの道を左!!」
「ちょ!モニター見えないだろ!!」
「へぇ…このMTってSAの換装はできないのよね?」
「ん?できないってトーシロー言ってたよ。そのギミックをあえて無くすことで、
攻守バランスの取れた戦闘と物資の補給が無い場合のコストの削減を考えた結果だって」
「なるほどね。イメージは【ベイス】を極限まで極めたみたいな発想なのね」
「まぁ…イメージはそうかも…」
キキは興味深そう【イクェス】をキョロキョロと見渡していた。
あんまり動かれると色々困るんだが…
違う星の人間とはいえ女性であるキキは容姿もよく特有の柔らかさと温かみがあり、
零士も1人の男性として意識してしまうのは仕方のないことだった。
「ちょっとお尻触んないでくれる?」
ハッと気づいた時には操縦桿を握っている二の腕がキキに触れてしまっており、
少し顔を赤つつジトォ…とこちらを見つめるキキと目があった。
これはまずい!!!
「ご、ごめん!!そういえばなんで急に決闘なんて言い出したんだろう!!」
「え??」
慌てて会話を逸らそうとし疑問に思っていたことを不意に口走ってしまった。
「これからの仲間探しを1人で行く。それを伝えたと途端ウェダの目つきが変わった気がする。俺には何か間違ったことを言ったのかわからないんだ‥」
「あんたは間違ってないと思うよ」
零士は思わずキキの顔を見る。
次は右だと道案内をしながら会話を続ける。
「あんたの考えは間違ってない。私も零士の心情を思うと同じことを考えるかもしれない。
でもパパが言いたいのは別のことだとお思うよ」
「別のことってなんだ??」
零士がそうゆうと同時に「ついたここだよ!」とキキは叫び【イクェス】を跪かせるとピョンピョンと軽やかに地面に降りて行った。
颯爽と目の前の【ゴレーム】のいる広場に向かおうとしたので零士は【イクェス】のスピーカーを使い叫ぶ。
「おい!先の話の答えを教えてくれ!!」
するとキキは来ると振り返って少し前のめりに、
「パパと決闘して直接聞くんだね!!」
それだけ言うと広場へ駆け出していくのであった。
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「きたか」
「ウェダ!なんで決闘なんてしなきゃいけないんだ!俺は何か間違ったことを言っているのか!?」
「あぁ、お前は間違ってない。間違ってないが理由が気に食わん」
「理由??」
「決闘を通じてそれをお前に気づかせてやる」
いったい何が間違っているんだ?俺は1人で行く。アリアはここにいて治療を受けた方がいい。
アリアは俺の仲間探しには関係ない。ここからは俺の問題なんだ。俺は美也子達を探さなきゃいけないんだ。
ぐるぐると頭の中で自問自答しているとウェダは宣言するように話だす。
「ルールは4つだ!
1つ、頭部の破壊されたものの敗北とする
2つ、相手のコックピットは攻撃してはいけない
3つ、自身のMTを搭乗者は守らなければならない。自害、特攻は禁止とする
4つ、自ら敗北と認めた場合強制的に決闘終了としそれ以上の戦闘を禁止する。
5つ、場外ラインを超えた場合も反則とし敗北とする。
これらを厳守することだ」
「まるでスポーツのようだな…」
ウェダはフッと笑いながら、
「これは盗賊村で代々行われている決闘だからな。ルールはわかったか??」
「要は頭部を破壊するか、負けを認めない限り続くってことだろ」
ニヤッ
「その通りだ」
「パパ〜私審判でいいんだよね!!」
「そうだ!おいお前たちキキに危険がないように審判させろよ!!?」
そう言われて周りを見渡すとこの広場の周りに村の住人だろうか、
わかりました〜!親方様ファイトー!!など叫びつつギャラリーのような人だかりがあった。
「さぁ零士始めるぞ」
「よくわからないけど言っても無駄なら…やってやる!!」
「じゃあ2人ともファイトラインの前に並んでー!!」
キキの掛け声と共に向かい合いながら【ゴレーム】と【イクェス】がラインに並ぶ
「両者正々堂々の勝負を!MTファイト!レディ…Go!!!!!」
【イクェス】は先制攻撃と言わんばかりにダートレーサーを起動させ【ゴレーム】へ距離をつめる。
零士は【ゴレーム】の巨体から【イクェス】であれば相手の攻撃を仮にされても回避しつつ攻撃をできると踏んでいた。機動力に優れた機体だからこその自信が零士をそうさせた。
しかし【イクェス】が速攻を仕掛けた動き出して2秒もなかった。
「く…!!!!!」
マズイ!!
零士は声にも出せずその危機を察して【イクェス】の加速を急停止し後ろへバックジャンプをする。
強烈なGに耐えつつガォォォォォォォォン!!と言う音と共に地面が割れた。
左手を付きつつ地面に着地し状況を確認すると【ゴレーム】の右手が地面に突き刺さっていた。
「なんだあの破壊力は!?」
何より零士が驚愕していたのはその速さだった。
【ソルダート】が反応できないほど急加速する【イクェス】の速攻についてきたのだこの巨体で。
「これが【ゴレーム】のアトミックハウンドだ。デクの棒と思って突っ込んできたらバラバラにしてやるぞ。」
「これじゃあどうやって戦えばいいんだこっちには武器はないって言うのに‥」
零士の考察と余裕のウェダが再び向かい合ったままの状況に戻るしかしそれでもジリジリとウェダが近づいてきている。
まぁそうなるでしょうね…
キキは焦る零士を見て冷静に戦いを分析していた。
アトミックハウンド、【ゴレーム】の右手のガントレットが物体に触れた瞬間特殊振動を起こし衝撃を二倍にするシステム‥そこに【ゴレーム】自身の重量と勢いをプラスすることで山重砕き地面も割る一撃となる。
恐らくパワーだけであれば旧型といえ現代のMTにも決して引けを取らないまさに巨人。
さぁ零士どうするの?まだ始まったばかりよ?
「そっちから来ないならこっちから行くぞぉぉ!!!」
ヅドンと音をあげ音をあげ【ゴレーム】が距離を詰め右手を振り上げる
「ちぃ…!!!」
【イクェス】は再びダートレーサーを起動し振り下ろされた右手をスレスレの所で回避した。
「このやろう!!!!」
空中に回避をしつつ左足を【ゴレーム】の頭部へ向けて思い切り蹴り上げた。
しかしそれを左手で難なくガードされてしまう。
なんて機動性だしかも硬い!!
「そんな軽い蹴りなどぉぉぉ!!」
掴まれた左足を軸に360度振り回し勢いよく放り場外へ向けて投げられる。
「うあああああああ!!!!」
しかし場外手前でガッシャ!!と音を立てて【イクェス】が地面に叩きつけれれて着地した。
コックピットは大きく揺れ零士は顎を打った。
「ぐぅ‥ちくしょう…」
ギギギと音を立て【ゴレーム】へ向き直る。
「なぁ零士、お前さんまだ1人で行こうって言うんか?」
跪く【イクェス】を見上げる形でウェダは語りかけてきた。
「何が気に食わないんだ!!」
零士は再び特攻をかけ果敢に【ゴレーム】に戦いを挑む。
しかし武装のない【イクェス】の近接格闘に対しその圧倒的な防御力と破壊力を持って
その尽くを打ち砕いていく【ゴレーム】
その度に投げ飛ばされるか左手のアームパンチを受け後方にふっ飛ばされるかを繰り返していた。
「なぜアリアをここに置いていくんだ?」
雄叫びを上げながら突っ込んでくる零士にウェダは至って冷静に言葉を紡いでいった。
「お前は今自分のことしか見えちゃいない」
「その何が悪い!!」
もう何度目かという攻防を繰り返しいつしか装甲にも傷やヒビが入り始めていた。
「俺は仲間を探しに行かなくちゃいけないんだ!だがこれ以上関係のない人がそのせいで犠牲になるのは見たくない!!それの何が悪い!!」
グウィゥゥゥン…
零士が叫んだ瞬間【イクェス】がシステムダウンをし膝立ちの状態で倒れ込む。
「何!?動け!!動いてくれ【イクェス】!!」
しかし反応をしない。その瞳からは光が失われている。
これは勝負あったかなぁ…
キキは審判として勝敗の見極めを行おうとしていた。
無理もない。
ウェダの問いに対して一方的に攻撃を行う【イクェス】はアトミックハウンドこそ避けるものの、
それ以外の攻撃はモロにダメージとして受けてしまっている。
並のMTであれば最初の1、2回地面に叩きつけられた時点でこうなっていただろう。
あの蒼いMTの耐久性と零士の着地前に行う受け身がそれを可能にしていたのだから大したものだ。
ウェダもそれを察したのか見下ろす形で静止した。
「勝負あったな。今のお前では所詮この程度、ここを出たとしても明日には死んでいる。」
「くそ!くそ!!」
「まぁお前の選ぶ選択だ。それでもいいのかもしれない。だがな…」
一間をおいてウェダは続ける。
「残された者の気落ちは考えたことあるか?」
「残された者…?」
「お前は何も言わずにここを出て行って、その先で死ぬのなら本望だろう。だが残されたアリアはどうだ?」
零士は狂ったように操縦桿を動かす手を止めウェダの言葉に耳を傾けた。
「アリアとお前の間がどうゆう関係かはしらん。だがお前の反応を見るに親しい仲ではないのか?
反乱基地の襲撃により仲間を失い、友を失い、そして慕うべきリーダーまでもを失った。
その末あれだけの負傷をし目を覚ました時にそれらを全て知ることになる。」
「…」
「お前まで何も言わずに離れた時彼女はどうなる」
考えもしなかった。
彼女はみんなを守るために闘いそして全てを失った。
これから目を覚ました時この現実を知ることになる。
その時の絶望や悲しみは計り知れないだろう。
たとえそれが鍛えられた戦士だとしても…だ。
そしてその時俺までいなかったら…誰もアリアの味方は側にいなくなる。
「お前の焦りと気持ちは察している。だが独りよがりにここを出ていこうとしている様が気に食わん。
お前が休息をとり残ることで目覚めた時アリアの救いになるはずだ。」
【ゴレーム】は再び【イクェス】に向かって歩き出す。
「決して俺たちは危害を加えない。だが本人にとっては別の話だ。
そして俺も1人の戦士としてアリアの絶望を増やしてやることはしたくない。」
ゆっくり近づいてくる【ゴレーム】を見つつウェダの真意を知った。
彼はとても熱い心を持つ漢だった。
きっとウェダも過去に同じ絶望を味わったのだろう。
だからこそ同じ絶望を与えることをしたくはないのだ。
…俺はウェダを誤解していたのかもしれない…
「アリアのためにもお前のためにもこの勝負を持って【イクェス】を破壊しここにいてもらう。」
【イクェス】との距離はもう目と鼻の先と言わんばかりまで近づき右手を天高く振り上げた。
「すまんが、お前の負けだ」
ウェダがその右腕を【イクェス】に向けて振り下げようとした時、
「ウェダ…俺はあなたを誤解していたよ‥」
ウェダはその言葉に一瞬動きを止めたが容赦無くアトミックハウンドを繰り出していた。
その一瞬が最後の反撃のチャンスを与えてしまった。
「頼む!!俺の心に応えてくれイクェェェェェェス!!!!!!」
キュイン!!
突然【イクェス】の瞳に黄色い光が灯る。
その言葉を待っていたと体現するかのように振り降ろされるアトミックハウンドめがけて自身も右手を振り上げ立ち向かっていく。
「何!?だが無駄だこの距離では確実に!!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
零士の雄叫びに【イクェス】が呼応する。
振り上げられる右手は【ソルダート】を吹き飛ばした時のように右手が蒼く光り輝いた。
超近距離武装「バレル・インパクト」
2つの巨大な力は互いにぶつかり合い大きな衝撃波となって周囲を巻き込みギャラリーごと後ろへ吹き飛ばした。
キキは衝撃波に耐えて何が起きたのか再度訓練場を見る。
それは先ほどまで沈黙をしていた蒼い騎士が自身の倍はある巨人の鉄槌をその拳一つで押し返そうとしている異様な光景だった。
「ぐぉぉぉぉぉ!!!」
「うぁぁぁぁぁぁ!!トーシローの魂の籠った【イクェス】の…【イクェス】の力は伊達じゃない!!!!」
【イクェス】はさらに強い光をその眼に宿らせてアトミックハウンドを押し返していく。
ウェダは驚愕のあまり冷静さを失ったがすぐに状況を理解し力の限り巨人の鉄槌を叩き込んでいった。
零士も満身創痍な身体でその鉄槌に立ち向かっていく。
漢と漢の意地にぶつかり合いだった。
そしてビシビシと音を立てて【ゴレーム】の右腕が吹き飛んでいった。
その爆散した衝撃で【ゴレーム】頭部も半壊させる形で。
その巨体は初めて尻餅をつく形で倒れ込み、先ほどとは真逆の構図となった。
「ぐぁぁ‥まさかアトミックハウンドを真正面から受けて弾き返すとはな…」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
その場がシンと静まり返っており2人の声だけが聞こえる。
「ウェダあなたの考えはよくわかった。俺は焦りすぎていたのかもしれない。」
零士は息を整えながら続ける。
「でも俺は美也子達を追いかけなければ行けない。なぜ彼女はここを離れたのか…それを知りたい!」
「アリアを…置いて行ってもか」
「…」
「俺たちが力になってやる」
「え‥?」
「お前の心は今の一撃でよくわかったつもりだ。ミヤコ達の捜索は俺たちが協力をしよう」
「本当ですか!?でも…どうしてそこまで…」
「ここにいる連中は何かしらの理由があってここにいるんでな、仲間思いのやつと戦士は皆俺たちの仲間だ」
その瞬間ギャラリー達が一気に沸いた。
「そうだぜ!熱い闘いだったな!!」
「エメルダ様の友人なら力を貸すぜ!!」
「あたし達に任せな!」
などの声があふれていた。
「ちょっとー盛り上がってるところゴメンなんだけど〜、一応審判として結果宣言していい??」
「あ…えっと…」
「はッ全く、キキ!高らかとな!」
「はぁ〜い!【ゴレーム】の頭部破損により勝者…【イクェス】!!!!」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!
歓声のもと闘いは終わった。
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【イクェス】と【ゴレーム】はそれぞれ補修の為整備係が運んでいった。
「ねぇねぇ零士!」
「キキ」
「さっきのパパとの戦いちょっとかっこよかったよ?」
「俺は何もできなかったよ、逃げ回るのに精一杯だった‥それに…」
「それに…??」
「ウェダは本気じゃなかったよ」
零士は自身の見解を述べた。
「そんなことないんじゃない?」
「いや、基本ウェダは左手でしか攻撃してこなかった。アトミックハウンドは最初の1回と今の1回だけだった」
「へぇ〜…」
ニヤニヤとキキはしながら真剣な面持ちで話す零士を眺めている。
ふむふむとまるで答えを知っているかのように。
「だからこの戦い…試合?はウェダに勝たせてもらったんだよ。俺はそう思‥」
言葉を続けている時に突然優しい香りと共に唇に温かく柔らかい感触が触れた。
一瞬のことで何が起きたのか理解できずその場に立ち尽くす零士。
「え…」
零士に背を向け少し歩いたキキ。
「謙遜ではなく、そこまでわかっているなんてびっくりだわ。正解ね!」
「え…、今」
キキはくるっとこちらに向き直り。
「勝者には女神からの報酬がないとね!これは頑張ったご褒美!じゃあまたあとでね!」
その顔は夕日のせいだろうか茜色に染まっていた。
零士はその場に棒立ちしたままその姿が見えなくなるまで目で追うことしかできなかった。
俺…今…キスされた!?
時折こちらを振り向いては妖艶に笑う姿はまるで妖精のようだった。
「ほぅ…なぁ零士教えてくれないか?」
嫌な予感がした。
「今後の話をしに来てみれば‥キキとどんな関係だ…?」
第二ラウンドが始まる…
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コツコツコツコツ
ハイヒールの音が長く続く廊下に響き赤いマントを翻して足早にどこかへ急ぐ女性を1人の兵士が追いかけていた。
「急いでどこに向かわれるのです!」
「早く彼に会わなくては行けません。」
彼女は長い廊下を渡り階段を下った医務室の前で止まった。
お付きの兵士の忠告も顧みずドアを開け中に入るとテルス人の医者が青年の診察を行なっている所だった。
「失礼急ぎ確認したいことがあり参りました。」
「これは司教様一体…」
「アルス・リットナーはいますか?」
その名前に反応し診察をしていた青年が司教と呼ばれる女性に向き直る
「あなたがアルス・リットナーですね。私はサキ・ミヤコ。あなたの出会った蒼いMT(騎士)の話を聞かせて」
今回地味に結末に悩みましたが、
一度救いをあげたかったので若干短編っぽい形で描きました。
次回はまた新たな戦いに赴く姿を描いていきたいなとお思います。
次回は更新早くします汗