第31話 レプラコーンハウス 後編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
窓から朝日が差し込み、その光で男性は目を覚ますと、起き上がりながら寝ぼけ眼で軽く周りを見回した。
「……ああ、そうだ。昨日は帰ってこれたんだったな。会社に寝泊まりする日やうっかり公園のベンチで寝ちゃう時があったから、こうして帰ってもここがどこかたまにわからなくなるんだよな……」
苦笑いを浮かべながら男性が体を上に伸ばしていると、銀のボタンをはめた赤いジャケットに茶色の半ズボン、銀の留め金のブーツという格好のしわくちゃの顔にあごひげをはやした小人が枕元から姿を現した。
「よお、人間。朝の目覚めはどうだ?」
「レプラコーンか。隠れずにそのまま出てくるんだな」
「ふん、朝から悪戯をしてやる気はないさ。まあ、やっても良いって言うなら、その髭を一本ずつ引き抜いてやっても……」
「いや、それは痛いからやだな。さて……気は重いけど、そろそろ仕事に行く準備を始めないと。レプラコーン、悪戯をするのは良いけど、周囲に迷惑にならない程度に頼むぞ?」
「仕事、ねえ……なあ、とりあえずテレビでも観てみないか? 日々のニュースもサラリーマンには必要だろ?」
「それはそうだけど……わざわざテレビを観るように言うって事は、何か企んでるのか……?」
「さてな。ほら、ボーッとしてる暇はねぇぞ。さっさと起きた起きた」
「はいはい……」
男性はやれやれといった様子で答えながら布団から体を出し、レプラコーンを手に乗せながらリビングへ向かった。そして、ソファーの上に置いてあるリモコンを手に持ち、テレビに向けながら電源ボタンを押すと、画面にはニュース番組が映し出されていたが、その内容は男性にとって驚くべき物だった。
「……は? ウチの会社が労働基準法違反で摘発されて、社長達が逮捕された……!?」
「おお、早速やってたな」
「……レプラコーン、お前がやったのか?」
「まあな。昨夜、お前が俺みたいなちっこいのに何が出来るんだって言ってたから、会社の住所とかを調べあげて、何か悪戯でもしてやろうとしたんだが……調べてみたらこれは残してたらヤバイ会社だってわかったから、夜の内に証拠を揃えて適切な場所に置いてきたんだ。
それにしても……ここまで早く状況が動くとは思ってなかったから、俺も正直ビックリしてるぜ」
「俺もそうだよ。でも、これからどうしたら良いんだろう……確実に会社は潰れるだろうから、新しい就職先をみつけないといけないし……」
「ああ、それなら面白い物も見つけてきてるから心配すんな」
「面白い物……?」
男性の問いかけにレプラコーンは頷くと、ソファーの上を指差した。男性がその先に視線を向けると、そこには求人情報が書かれた紙が置かれていた。
「この会社……俺が良いなって思ってたところだ」
「そんな気がした。劣悪な環境で頑張ってきた分、そこでも頑張れるだろ?」
「レプラコーン……ありがたいけど、どうしてここまでしてくれるんだ?」
「お前の置き方が悪かったとはいえ、家を救ってくれたからな。その分の恩返しみたいなもんだ。だが、これで貸し借りはゼロだから、今度からは俺をしっかりと見つけてから手助けを頼めよ? これは俺の意思でもあり『レプラコーンハウス』の意思でもあるからな」
「……わかった。だけど、俺から隠れきれると思うなよ?」
「へっ、人間ごときにそう簡単に見つかるような俺じゃねぇよ」
レプラコーンの言葉に男性が微笑みながら頷き、これからの事について話し合う中、家の近くでは安心した様子の『繋ぎ手』と助手の少年が立っていた。
「……うん、どうやらこれからも仲良くやっていけそうだね」
「それならよかった。けど、道具が自分の意思で考えて特別にサポートをするなんてな……」
「まあ、今回のは特別な例だよ。でも、それだけ今回のお兄さんは『レプラコーンハウス』から好かれていたっていう事だよ。さて、安心したところで私達は私達の家に帰ろっか」
「ああ、そうだな」
助手の少年が頷いた後、二人は現れた青色の渦の中へ向かって歩いていき、そのまま静かに姿を消した。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。