第30話 フェイトリング 後編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
白い雲が幾つか浮かぶ晴れの日、街中を様々な人々が行き交う中、『繋ぎ手』は桜色のパーカーに緑色のスカート姿の少女と共に歩きながら楽しそうな様子を見せていた。
「んふふ~、妹ちゃんとおっでかけだ~♪」
「お姉ちゃん、すごく楽しそうだね」
「それはそうだよ。こんなに可愛い妹ちゃんとのおでかけだもん。楽しくないわけがないよ」
「えへへ……そっか。私もお姉ちゃんとのおでかけは楽しいし嬉しいよ。血の繋がりがあるのはお兄ちゃんだけだけど、お姉ちゃんもお姉さんも今の私にとっては本当の家族みたいに大切だからね」
「妹ちゃん……あぁ、妹ちゃんは本当に可愛いなぁ……! でも、いつかは可愛くて綺麗な子になるわけだし、その時にはもっともーっと色々な言葉で褒めてあげるからね」
「うん、その時を楽しみにしてるね」
助手の少女がにこりと笑いながら答え、『繋ぎ手』が微笑みながら前方を向いたその時、向かい側から四人の男女が楽しそうに話をしながら歩いてくるのが見えると、『繋ぎ手』はその内の一人を見て嬉しそうな笑みを浮かべた。
「あっ、あの子だ」
「お姉ちゃん、知り合い……って、あの人はこの前『フェイトリング』を買っていってくれた人だ」
「ああ、私とお兄さんが買い出しに出た時に来たっていう子だね。そうだ……せっかくだし、ちょっとお話をしに行こうか」
「うん、『フェイトリング』はどうだった聞きたいし私は賛成だよ、お姉ちゃん」
「よし、決まり。それじゃあ行こっか」
助手の少女が頷き、二人が四人の元へ向けて歩いていくと、その内の二人の少女はそれぞれ『繋ぎ手』と助手の少女の姿に驚いた様子を見せた。
「あ、貴女は……」
「あ、あのお店の……って、もしかして先輩も知ってる人でしたか?」
「あ、うん……こっちの女の子は初めましてだけど、もう一人の子は私に『撫子櫛』っていう不思議な櫛をくれた子で、私が変わるきっかけをくれた子でもあるんだ」
「変わるきっかけ……なるほど、先輩達が急に近い関係になったのは、私達と同じように不思議な道具のおかげだったんですね」
「そうだよ。あの……久しぶりだね、こっちの子はもしかして妹さん?」
「久しぶり。この子は少し前からお兄さんと一緒にウチのお店で住む事になった子だけど、私にとっては本当の妹みたいな子だよ。ねっ、妹ちゃん」
「うん!」
二人がお互いを見ながら笑い合っていると、二人の少年は『繋ぎ手』の姿を見ながら納得顔で頷く。
「なるほど……話には聞いてたけど、学校の噂になってる不思議な道具を扱う女子っていうのはこの子だったのか」
「俺も噂は聞いた事ありましたけど、実際に見るのは初めてですし、まさかこんなところで出会う事になるとは思いませんでしたよ」
「まあ、クラスメート以外だと道具に縁がある人以外には言ってないし、クラスのみんなも基本的には黙っててくれてるしね。ところで……男女二組ずつって事は、もしかしてダブルデート中だった?」
「うん……」
「この前出会った『フェイトリング』がきっかけで私にも彼が出来たので、せっかくだから先輩達にこの四人でダブルデートしませんかって提案したんです。先輩達だけじゃなく、私達だってラブラブなのを見せたかったですし」
「そうなんだ。今も『フェイトリング』にはお世話になってるの?」
「いつもじゃないけど、少しおしゃれしたい時や新しい出会いを求めてる時には頼りにさせてもらってるよ。あの時、『フェイトリング』と出会わせてくれて本当にありがとう」
「……うん、どういたしまして!」
助手の少女が嬉しそうに返事をしていると、その様子をにこにこ笑いながら見ていた『繋ぎ手』は五人を見回しながら静かに口を開いた。
「さて……それじゃああなた達のデートの邪魔になっちゃうし、私達はそろそろ行くよ。みんな、末長くお幸せにね」
「うん、ありがとう」
「ありがとうございます」
「それと、二人が持ってる道具達の力があれば、ウチのお店に繋がる道も教えてもらえるはずだから、他の子にも興味あったら遠慮無く来てみてね。行こう、妹ちゃん」
「うん。お兄ちゃん達、お姉ちゃん達、またね~」
そして、『繋ぎ手』が助手の少女と手を繋ぎながら歩いていくと、助手の少女は少し羨ましそうな表情を浮かべた。
「好きな人か……私にもいつか出来るのかな?」
「ふふ、出来るよ。でも、その時はお兄さんがどんな顔をするかな。妹ちゃんの幸せのためなら全力みたいだし、一度面接みたいな事をしたりして」
「お兄ちゃん面接かぁ……ふふっ、たしかにしそうかも。でも、お兄ちゃんだって幸せになって欲しいな。『アルケミーボトル』の時もそうだけど、私はお兄ちゃんから貰ってばかりだから、今度は私がお兄ちゃんに幸せをあげられるようにしたい」
「うんうん、素敵な事だと思うよ。それじゃあ、二人でお兄さんに何かプレゼントを買って帰ろうか。もちろん、御師匠様の分もね」
「うんっ!」
二人は笑い合うと、まるで本当と姉妹のように仲睦まじい様子で話をしながらゆっくりと街中を歩いていった。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。