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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第30話 フェイトリング 中編

どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。

「……よし、こんな感じかな」


 ある朝、少女は洗面所の鏡に映る自身の姿を見ながら満足そうに頷いたが、すぐに少し哀しそうな表情を浮かべた。


「……まあ、どんなに身だしなみを整えてもそれを褒めてくれる男子はいないんだけどね。先輩達ならたぶん褒めてくれると思うけど、あまり二人の時間の邪魔はしたくないし、今日も挨拶をするくらいにとどめよう。さて……後はこの指環だけど……」


 そう言いながら少女は手の中にある指環を見ると、指で掴みながら真剣な表情を浮かべる。


「……お店の人が言ってたように、指環ははめる指によって意味が違うみたいだった。婚約指輪を左手の薬指にはめるのも永遠の愛っていう意味があるからみたいだけど……今の私が欲しい運命の出会いは何だろう?」


 少女は『フェイトリング』を握り込みながらどの指にはめるかを考えていたが、やがて拳を静かに開くと、左手の小指にゆっくりはめた。


「……左手の小指、恋を引き寄せたりチャンスを呼び込んだりするみたいだし、やっぱり私も好きな人が欲しいからこの指にしよう。もっとも、本当にこの指環の効果があるかはわからないけど、あるなら私は賭けてみたい」


『フェイトリング』をはめた指をもう片方の手で軽く握り込み、少女は目を瞑りながら祈りを込めた。そして、目を開くと同時に左手の小指から手を離すと、洗面所を出てリビングに置いていたカバンを持ち、そのまま玄関のドアを開けて外へと出た。


「……さて、学校に行こう」


 少女が独り言ち、ゆっくりと歩き始めようとしたその時、その横を焦った様子で学生服姿の少年が走っていき、その振動で制服のポケットから一枚のハンカチがヒラリと落ちた。


「あ……ハンカチ落としてる。あの、すみませーん、落とし物してますよー!」


 少女は急いで声をかけたが、焦っている少年には聞こえておらず、返事をせずにそのまま走っていってしまうと、少女は困った様子でハンカチを拾い、少年が走っていった方を見つめた。


「どうしよう……制服的にウチの学校の人っぽいけど、学校で渡せるかちょっとわからないな……。でも、ハンカチがないとあの人も困るだろうし、とりあえず学校に行ってみて、あの人を見かけたら返す事にしよう。

見つからなかったら……まあ、落とし物用のコーナーに置いておけば、たぶん大丈夫だよね。校内の落とし物っていうわけじゃないけど、もしかしたらそこを見に来るかもしれないし」


 そう言いながら少女はハンカチを丁寧に畳んでからスカートのポケットにしまい、少しワクワクした様子で学校へ向けて歩き始めた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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