第29話 チャームパフューム 中編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
雲一つ無い青空の下、少女は気だるそうな様子で学校へ向けて歩いていた。
「……今日も学校、か。はあ……めんどくさ、やっぱり行くの止めようかな。でも、行かないとそれはそれでめんどくさくなりそう……」
少女はとても面倒臭そうに呟いていたが、ふとポケットの中に手を入れると、その中から桃色の液体が入ったビンを取り出した。
「でも、私にはこれがある。つければつける程に異性から好意を持たれるようになるこの香水が。今は……とりあえず二回くらいかけてみようかしら」
少女はビンのスプレー部分に指を置き、自分へ向けて二回ほど中身をかけた。すると、仄かにバラの香りが漂い、少女はその香りに口許を綻ばせた。
「あら、良い香り。この香水はその人にとって一番良い香りだと思える物になるそうだけど、私の場合はバラなのね。ふふ、誰よりも美しいけれど、安易に触れた相手を傷つけてしまう私にピッタリじゃない」
『チャームパフューム』をポケットにしまってからうっとりとした表情で独り言ちた後に再び歩きだし、少女が道中ですれ違う人々をその度にチラリと見ると、女性があまり振り返らないのに対して男性は大半が振り返ってからボーッと少女を見ており、その光景に少女はクスクスと笑い始めた。
「効果は覿面ね。振り返らないのは隣に相手がいる奴だけだったから、それ以外の男は他に好きな相手もいなくて、私に魅了された可愛い男達って事になるけど……せっかくだから、他の男達も魅了してみましょうか」
少女は再び『チャームパフューム』を取り出すと、再び二回ほど中身を自身にかけ、ポケットにしまった。すると、先程までであれば振り向かなかった男性達も振り返り、少女に対して熱っぽい視線を向けるようになると、少女はその光景に愉快そうな笑みを浮かべる。
「……最高だわ。まあ、私に本当に興味がない奴がいるのは少し腹が立つけど、こんなにも男から視線を向けられ、それが全て私への好意だと思うと、楽しくてたまらない。
相手がいない男も相手がいる男も私に熱っぽい視線を向け、同じように私に視線を向ける男に敵意を持って私のために争いあう……あぁ、その光景を想像しただけでも嬉しさでどうにかなっちゃいそう……!」
少女は息を荒くしながら独り言ちると、三度『チャームパフューム』を取り出し、どこか虚ろな目で見つめ始めた。
「これさえあれば私は色々な男から求められる。これは誰にも渡さない。渡してなるもんですか……!」
そして、『チャームパフューム』をポケットにしまうと、少女は妖しい笑みを浮かべながら学校へ向けて歩いていった。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。