第28話 デヴィネイションフラワー 中編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
「ん……」
雲一つ無い快晴の空が広がる朝、ホームレスの男性は目を覚ますと、体を起こしてからまだ少し眠そうに欠伸をした。
「ふあ……朝、か。さて、今日も一日頑張ろう」
そう言いながら軽く体を捻ったり伸ばしたりしていたその時、男性の視界に一輪の白い花が入ってきた。
「……そういえば、この造花を昨夜貰ったんだったな。たしか『デヴィネイションフラワー』っていう名前で、朝に運勢を訊ねると、朝昼晩の運勢を色で教えてくれるって言われたし、早速試してみるか」
男性は『デヴィネイションフラワー』を指で摘まみ、ゆっくり顔に近づけると、少し緊張した面持ちで静かに口を開く。
「……今日の運勢は?」
すると、『デヴィネイションフラワー』の花弁は赤く染まり、その光景に男性が驚いている内に青色、灰色へと変わった後、元の白色へと戻った。
「ほ、本当に変わった……えっと、今の順番は赤、青、灰だったから、朝は何か怒りを感じる事が、昼は悲しくなる事が、夜は怪我を負うような何かがあるって事になるのか。
それにしても……なんだか嫌な一日になりそうだな。怒って泣いて、その上怪我までするなんて……けど、これをくれた子は、この造花が教えてくれる運勢は覆しようがないって言ってたし、今日はどんな事があっても気にしないくらいの気持ちでいないといけなさそうだな。
さて、それじゃあ今日もまずは炊き出しを貰いに行こう。腹が減っていたら、元気も力も出なくて何も出来なくなるし」
そう言いながら立ち上がった後、男性は『デヴィネイションフラワー』をポケットにしまってから寝床にしている段ボールを畳んで小脇に挟むと、炊き出しが行われている公園へ向かって歩き始めた。
その日の夜、男性はいつものように配られた炊き出しを段ボールの上に座りながら食べていたが、その表情は暗く、顔や腕には小さな傷があった。
「はあ……まさか本当に『デヴィネイションフラワー』の占った運勢が当たるなんてな。昼近くに財布の落とし物を見つけたから交番に届けたら、偶然そこにいた落とし主から俺が盗んだんじゃないかって疑われるし、近所の悪ガキからからかいや暴言を吐かれた上に石を投げられるなんて……今日は本当に嫌な事ばかりだ。
けど……これで『デヴィネイションフラワー』の効果は実証されたし、あとは俺の気の持ちようだな。明日は良い事があるように祈りながら眠って、黄色やオレンジ色が出たらそれを楽しみにしながら過ごせば良い。だから、これからもよろしくな、『デヴィネイションフラワー』」
お椀を置いてから男性は『デヴィネイションフラワー』の花弁を撫でると、その綺麗な白さに微笑んでから再びお椀を持ち、生の幸せを感じながら大切そうに食べ続けた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。