第3話 さとりイヤホン 前編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
辺りからカラスの鳴き声が聞こえてくる中、綺麗なオレンジ色に染まった夕焼け空の下を一人の学生服姿の少年が歩いていた。
「はあ……今日も声をかけられなかったなぁ。まあ、相手は俺みたいな地味な奴からしたら高嶺の花的な存在だから仕方ないけどな……」
少年は小さくため息をついた後、恋い焦がれる相手が自分に向かって微笑みかける姿を思い浮かべ、恍惚とした表情を浮かべたが、すぐにまた落ち込んだ様子で小さくため息をつく。
「……それに、話しかけようとしたって、そもそも話題がないんだから、どうしようもないよな。あーあ……せめて、最近何が好きでどんな事に興味があるかさえわかればなぁ……」
少年が夕焼け空を見上げながら呟いていたその時だった。
「ねえねえ、そこの君」
「え?」
背後から聞こえた声に驚きながら振り向くと、そこにはセーラー服姿の少女が立っており、少年は少女の容姿に一瞬見惚れたものの、すぐに首を横に振った。
「いけないいけない……えっと、君は誰だ? ウチの学校では見ない顔だけど……」
「うん、違う学校だね。私は学生をしながら人間と道具の橋渡し役をしてるんだ」
「橋渡し役……?」
「そう。それで、君に興味を持った子がいるんだけど……どうかな?」
「興味を持った子って……道具なんだよな?」
「そうだよ。そしてその子がこちらです」
そう言いながら橋渡し役の少女がポケットから取り出した物を見た少年は不思議そうに首を傾げた。
「これは……ワイヤレスイヤホンか? それぞれ白と黒で色が違うけど……」
「そうだよ。この子は『さとりイヤホン』っていう名前なんだけど……君は妖怪のさとりは知ってるかな?」
「ああ、たしか心の声が聞こえる妖怪だっけ?」
「そう。この子は同じような力を持っていて、白い方は好意なんかのプラスな心の声が、黒い方は嫌悪みたいなマイナスの心の声が聞こえるんだ。
因みに心の声を聞きたい時は、聞きたい方を耳につけて、心の声を聞きたい人の目の前に立つかその人を頭に思い浮かべると聞けるよ」
「へー……でも、そんなすごい物がどうして俺に興味を持ったんだ?」
「さあね。でも、この子が君と一緒にいたいようだから、これは君にプレゼントするよ。お代は良いから安心してね」
「え、それはありがたいけど……本当に良いのか?」
少年が申し訳なさそうにする中、橋渡し役の少女はにこにこしながらこくりと頷く。
「うん。私はあくまでも橋渡し役だし、この子もウチの店の試作品だからね」
「店……」
「そう。まあ、この子みたいに縁がある子がいたらたぶん来れるよ。さて……私もそろそろ帰らないといけないからこれで失礼するね。その子に関しては使い方で特に注意する点は無いけど、やり方次第では犯罪にも使えるからそこは理解しててね」
「あ……わ、わかった」
「うん。それじゃあね~」
そう言って橋渡し役の少女が去っていくと、少年は手の中にある『さとりイヤホン』をじっと見つめる。
「……心の声か。せっかくもらったし、色々試してみよう。もしかしたらこれのおかげであの子に話しかける話題も見つかるかもしれないしな」
そして、『さとりイヤホン』をポケットにしまうと、少年は少しだけ表情を明るくしながら自宅に向けて再び歩き始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。