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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第24話 サポートプラッシー 後編

どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。

「……ふぅ、今日も良い天気だな」


 ある日の朝、ソファーに座る男性は窓の向こうの青空を見ながら独り言ちた。その近くでは熊のぬいぐるみが自分よりも大きな掃除機を使って掃除をしており、男性はそちらをチラリと見てから満足げに頷いた。


「前までは休日に家の掃除をしてそれだけで終わる事もあったが、今は『サポートプラッシー』がいるから、こうして休日にのんびりする事が出来る。本当にこれは良い休日の使い方だな。お前もそう思わないか?」

『……休みという物を知らないのでよくわかりません。ですが、貴方が満足しているのならば私も満足です』

「そうか……休みが欲しいとは思わないのか?」

『思いません。私はあくまでも生活などのサポートのために作られた道具なので、休みをもらっても逆に困るかと思います』

「休みが困る、か……」


『サポートプラッシー』の言葉を聞いた男性が考え込むようにしながら顎に手を当てていると、それを見ながら『サポートプラッシー』は不思議そうに首を傾げる。


『何か悩み事ですか? それならば私が話を聞きます』

「……たしかに悩みがあるな。お前をどうやって休ませたら良いかっていう悩みがさ」

『……理解出来ません。私には休みは必要無いので、それについて悩む理由がわかりません』

「そうかもな。けど、俺にとってお前はもう大切な家族なんだ。お前には理解出来ないかもしれないけど、少しはお前にも自分の時間っていう物を作って欲しい。そのためなら、俺はお前にそれを命令するよ」

『……本当に理解出来ません。ですが……胸の奥が熱を持っているような気がします。これは故障でしょうか? 今すぐ『創り手』に連絡をしないといけませんか?』

「……いや、それは故障じゃない。それはたぶん『嬉しい』っていう感情だ」

『うれ、しい……?』


『サポートプラッシー』は男性の言葉を不思議そうに繰り返すと、掃除機のスイッチを切ってからそっと置き、腕を組みながら考え事を始めた。

 そして、その様子を男性が真剣な表情で見ていたその時、玄関のチャイムが突然鳴り、男性はソファーから立ち上がると、玄関へと向かい、ドアをゆっくり開けた。

 すると、そこにはどこか嬉しそうに微笑む『繋ぎ手』と少し緊張した様子で『繋ぎ手』の服の袖を掴む助手の少女の姿があった。


「君達はこの前の……どうしてここに?」

「『サポートプラッシー』からメッセージが来たんです。嬉しいという物がわからない、胸の奥が熱を持っているのはやはり故障なのかって」

「そうだったのか……あのさ、『サポートプラッシー』に休みをあげたいと思って、色々話してたらそういう風になったんだけど、やっぱりアイツに休みをあげるのは良くないのかな……?」

「そうですね……あの子は持ち主のサポートを目的としているので、それをしないというのは目的に反した行動という事になってしまうんです。でも、お兄さんの言葉であの子は今まで持ってなかった『感情』を持って、それを悩む事が出来ている。

 私はそれをダメだとは思いませんよ。前に御師匠様が仰ってたんです。

 道具達はそれぞれの目的のために働くのが一番ではあるけど、中には縁がある人間との交流の中で成長し、自分の意思や願いのために動くようにもなる。けれど、それは悪い事じゃない。それもまた道具と人間が協力して生きていくために必要な事だから、と」

「必要な事……」


『繋ぎ手』の言葉に男性が軽く握った拳を見ながら呟いていると、『繋ぎ手』は笑みを浮かべながらその拳にそっと手を載せた。


「なので、あの子にはそれは故障じゃない事と嬉しいというのがどういう感情かを教えてあげて欲しいんです。あの子に誰かを傷つけさせようとせず、家族として認めてくれたお兄さんなら絶対に出来るはずですから」

「……わかった。因みに、誰かを傷つけさせていたらどうなってたんだい?」

「命令通りにそれを実行してくれますけど、その後も他のお願いよりも誰かを傷つけるようなお願いばかりを求めるようになって、最後には傷つけたいという衝動に駆られて持ち主すら襲うようになっていました」

「……本当にそうならなくて良かった。とりあえずアイツにはもう少し色々と話してみるよ。まあ、それでもアイツは悩んだり理解出来ない事もあったりするだろうけど、その時はまた相談に乗ってくれるかな?」

「はい、もちろんです。その時は私がまたお邪魔しますし、お兄さんが他の子を見に来るついでにお店に来てもらっても大丈夫ですよ。あの子が一緒にいる時なら、お店に来る事が出来る道がわかるはずなので」

「うん、わかった。それじゃあわざわざ来てくれてありがとう。君達や『サポートプラッシー』に出会えて本当に良かったよ」

「そう言ってもらえて嬉しいです。それでは失礼します」

「お兄さん、また会いましょうね」


 そう言って『繋ぎ手』達が去っていった後、それを見送ってから男性は玄関のドアを閉め、ふぅと息をついた。


「俺との交流で成長する、か……でも、俺も少しずつ成長していかないとな。アイツに色々任せるだけじゃなく、俺も色々出来るようになって、一緒に何か出来るようになったら、きっと生活がもっと楽しくなるはずだからな。よし……頑張ろう」


 やる気に満ちた様子で独り言ちた後、男性は家の中へ体を向け、同居人との話をするためにリビングへ向けて歩き始めた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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