第23話 アンサーミラー 中編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
「……よし、お母さん達は寝たし、後は大きな声を出さなければ大丈夫なはず」
深夜、月明かり以外に光のない室内で少女はベッドに寝転がりながら覚悟を決めたような表情を浮かべていた。その手には『アンサーミラー』が握られており、『アンサーミラー』は月明かりを反射してキラリと光った。
「こっそり持ち帰ってきたんだもん。お母さん達が起きてる時にやって、没収なんてされたくない。私はこんな家から出て、もっと幸せな毎日を送るんだ」
そう独り言ちる少女の目に迷いはなく、たとえ誰かが説得をしてもそれを受け入れる様子は決してなかった。そして、少女は一度深呼吸をした後、『アンサーミラー』を見ながら静かに口を開いた。
「……鏡さん、教えてください。私が幸せな毎日を送るにはどうしたら良いですか?」
すると、鏡面に映る少女はにこりと笑い、その光景に少女が驚く中、鏡の中の少女は笑みを浮かべながら口を開く。
『貴女が幸せになるには、本当のお父さんのところへ行けば良いよ』
「しゃ、喋った……って、本当のお父さん?」
『そう。貴女が生まれる前の話だから知らないのも当然だけど、今のお父さんは貴女のお母さんが再婚して出来たお父さんで、本当のお父さんは貴女が生まれる前に貴女のお母さんにここから出ていかされたの』
「お母さんに……でも、どうして?」
『貴女のお母さんの浮気が原因なんだけど、貴女のお母さんは自分が悪いのにも関わらず、本当のお父さんが悪いかのように色々手を回して、ここを追い出した後に浮気相手だった今のお父さんと再婚した。
貴女はお父さんの自分に対する見方が気になっていたようだけど、それは血の繋がりがないからで、まだ幼い貴女の事を自分の欲求の捌け口にしたくてたまらないのよ。そして、それを貴女のお母さんは容認している。正直、ここにいても幸せな毎日には程遠いよ』
鏡の中の少女の言葉に少女は表情を暗くする。
「……やっぱり、そうだよね。それじゃあどうやって本当のお父さんに会いに行けば良いの? 小学校にもまだ行ってない私じゃ出来る事も少ないよ……」
『そのために私がいるの。他ならぬ貴女のためだからね。全力で助けてあげるよ』
「……ありがとう、『アンサーミラー』。でも、どうして私を助けてくれるの?」
『貴女の話を聞いて、本気で力になりたいと思ったからね。それに、何となく貴女なら私を大事にしてくれると思ったし、貴女が幸せな毎日を送れるように全力でサポートするよ』
「……うん、わかった。それで、どうしたら良いの?」
真剣な表情を浮かべる少女に対して鏡の中の少女は笑みを浮かべながら答える。
『とりあえず、今はしっかり睡眠を取って。明日の内にどうにかしたいから、睡眠不足だと出来る事も出来なくなるからね。そして、朝ごはんを食べたら、おこづかいと私を持って出発しよう。
そして、お母さん達はどこに行くのかって訊いてくると思うけど、その時は少し恥ずかしそうにお母さん達のプレゼントを買いに行くって答えれば、おこづかいを持ってる理由を訊かれても大丈夫だし、自分も一緒に行くって言われづらいはずだから』
「なるほど……わかった。それじゃあまずはしっかり眠るよ。教えてくれてありがとう、『アンサーミラー』。明日もよろしくね」
『うん、こちらこそ。それじゃあおやすみなさい』
「おやすみなさい」
その言葉を最後に『アンサーミラー』が普通の鏡と同じようになると、少女は『アンサーミラー』を机の引き出しに入れてから再びベッドに入り、静かに目を閉じた。そして、そのまま意識を手放し、静かに眠り始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。