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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第23話 アンサーミラー 前編

どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。

「……はあ、家に帰りたくないなぁ……」


 夕焼け空の下、一人の少女が重い足取りで道を歩いていた。少女の表情は暗く、その表情や独り言ちた言葉から、少女にとって家は安息の地では無いのは明らかだった。


「……お父さんはなんだか私を見る目が変で、時々舐めまわすような感じで見てくるし、それをお母さんに言ってみても気のせいだって言われるし……もう家になんて帰りたくないよ。

 でも、泊めてくれる友達もいないし、私の歳じゃどこかに泊まる事も出来ない……はあ、どこかにこの状況をどうにかする方法を教えてくれる人がいないかなぁ……」


 少女が深くため息をついていたその時だった。


「ねえ、そこのお嬢さん?」

「え?」


 少女が突然聞こえてきた声に驚きながら振り向くと、そこにはセーラー服姿の少女と学生服姿の少年が立っていた。


「お姉さん達は……誰?」

「私達は……まあ、道具と人間を出会わせる使命を持った人とその助手だと思ってくれたら大丈夫だよ。ところで、なんだか落ち込んでるようだったけど何かあったの?」

「もしかして、友達と喧嘩したとかか?」

「……友達なんていないよ。お母さんが友達なんて必要ないって言って、作ろうとしても邪魔されちゃうの。それに、悩んでた理由はそれじゃなくて、家に帰りたくないからどうしたら良いかって事だったし……」

「家に帰りたくない……」


 少女の言葉に助手の少年は俯きながら表情を暗くし、その様子に『繋ぎ手』は心配そうな視線を向けた後、軽くしゃがみこんでから肩に掛けた鞄に手を入れた。


「それなら……うん、そうだね。君が力になってくれそうだね」

「これって……手鏡?」

「そう。これは『アンサーミラー』っていう名前で、この手鏡に向かって『鏡さん、教えてください』って言ってから、訊きたい事を話すと、鏡面に映る君が適切な答えを教えてくれるんだよ」

「それじゃあ……私が家に帰らなくて済む方法を訊いたら、それを答えてくれるって事?」

「そういう事。そして、これは君にプレゼント。大切にしてあげてね」

「え……い、良いの?」


 少女が不安そうに問いかけると、助手の少年はにこりと笑う。


「ああ、大丈夫らしい。こうやって渡してるのは、店に並べられなかったり試作品で渡しても良いって言われたりしてる物だからな。それに……俺は個人的に君を応援したいからさ」

「応援したいって……助手君、まさかこの子が好きに……!? そっか、助手君はこれくらい小さい子が……」

「違うって! 家に帰りたくないっていう気持ちがわかるからだし、そういう対象として見てるのは同じくらいの歳の奴だって!」

「あははっ、冗談冗談、上中下段。なんとなくからかいたくなっただけだよ」

「……ったく、とにかくこれは君が持ってて良いよ。さっきの『繋ぎ手』の反応的にこの手鏡が君を助けたいと思って声をかけたようだからな」

「声を……?」

「そう。私は道具の声を聞く事が出来て、彼が言ったようにこの子が君を助けたいと言ってくれたから、この子を君に紹介したの。だから、この子をどうか大切にしてあげてね」

「……うん、わかった」


 少女が『繋ぎ手』から『アンサーミラー』を受け取り、どこか嬉しそうに眺める姿を『繋ぎ手』が微笑ましそうに見ていると、助手の少年は同じように微笑ましそうに見てから『繋ぎ手』に話しかける。


「ところで、この『アンサーミラー』の注意点ってあるのか?」

「注意点……割っちゃいけないとか?」

「ううん、この子に注意点は特に無いよ。まあ、強いて言うなら、鏡面を毎日綺麗に磨いてあげないと機嫌が悪くなるとか割っちゃったら直してから一週間は何も答えてくれなくなるくらいかな。

 因みに、割っちゃったらこの子から私にメッセージが来るから、その時は受け取りに来るよ。私も早くこの子を直してあげたいからね」

「うん、わかった。お姉さん、お兄さん、本当にありがとう」

「どういたしまして。それじゃあ私達はそろそろ帰るよ。またね」

「またな」

「うん、またね」


 手を振りながら『繋ぎ手』と助手の少年が歩き去った後、少女は手の中の『アンサーミラー』に視線を落とす。


「……よし、まずは家に帰ろう。この鏡さんがどんな答え方をしても良いように荷物を準備しないといけないからね。鏡さん、これからよろしくね」


 少女の言葉に答えるように『アンサーミラー』が夕陽を反射してキラリと光った後、少女は決意を固めたような表情で自宅へ向けて歩き始めた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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