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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第22話 メンタルペン 前編

どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。

「ふぅ……今日も疲れたなぁ」


ある日の夕暮れ時、学生服姿の少年がとても疲れた様子で帰路についていた。


「他の奴がやりたくなさそうにしてたから、担任からの指名でクラスの委員長になっちゃったけど、クラスをまとめるのって本当に大変だよな……それに加えて勉強に部活まであるわけだし、何か楽しい事でもないと、やってられないっての……」


少年がため息まじりに言いながら家へ向けて歩いていたその時だった。


「ねえ君、ちょっと良いかな?」

「え?」


突然背後から声をかけられ、少年が不思議そうにしながら振り返ると、そこにはセーラー服姿の少女と桜色のパーカーに藍色のスカートといった姿の少女が立っていた。


「君達は……?」

「私達は……まあ、道具と人間の繋ぎ手とその助手だと考えてくれれば大丈夫だよ。それで、さっきからなんだか元気がなさそうに見えたけど、何かあったの?」

「え……まあ、ちょっと学校が最近楽しくなくてさ。クラスの委員長を任されてるんだけど、クラスの連中をまとめるのが大変な上に日々の勉強や部活もあるから、疲れてばかりで楽しいと思える事がまったく無いんだよ」

「なるほど……お兄さん、大変そうですね」

「まあな……だから、何か面白い事でもあれば良いんだけどな」

「面白い事……それじゃあこの子に頼ってみる?」


そう言いながら『繋ぎ手』が取り出したのは、虹の装飾がなされた一本のペンだった。


「ペン……?」

「これは『メンタルペン』という名前で、普段書く時は黒い字になるんだけど、君が事前にこの色が良いってこの子に言うと、この子はその色の字を書けるようにしてくれて、使ってる時の君のメンタルの状態によって色の彩度も変わるんだ」

「つまり……プラスな状態だと鮮やかな感じに、マイナスな状態だとくすんだ感じになるわけか」

「そういう事。そして、この子は君にプレゼントするよ。大切にしてあげてね」

「え、良いのか?」


少年からの問いかけに『繋ぎ手』はにこりと笑いながら頷く。


「この子は店頭に並べられなかったり試作品だから渡しても良いって言われたりしてる子だからね。遠慮なくもらっちゃってよ」

「まあ、そういう事なら……えっと、ありがとな」

「どういたしまして。ただ、この子を使う上で注意してほしい事があるから、それだけは守ってほしいな」

「注意点があるのか」

「うん。この子は高温多湿なところが苦手だから、サウナやお風呂場みたいなところでは使わない方が良いのとこの子に強い力や衝撃をわざと与えないようにしてほしいの。高温多湿なところで使おうとすると、ヘソを曲げちゃってその翌日は使えなくなるだけなんだけど、もう一個の方は守らないと大変な事になるから、本当に注意してね」

「大変な事か……わかった、気を付けるよ。因みに、夏場は使えないとかは無いよな?」

「うん、それは大丈夫だよ」


『繋ぎ手』の返答に少年は安心したように微笑む。


「そっか。まあ、夏だけ使えないなんて言われても困るから、それならよかったよ」

「ふふっ、たしかに。それじゃあ私達はそろそろ失礼するね。その子、大切にしてあげてね」

「ああ、もちろんだ。良い物をくれてありがとうな」

「どういたしまして。それじゃあまたね」

「お兄さん、また会いましょう」

「おう」


そして、少女達が手を繋ぎながら去っていくと、少年は手の中にある『メンタルペン』に視線を向ける。


「……不思議なペンをもらったもんだな。俺じゃなく、《《アイツ》》が貰ってたら、どんな反応をしてただろうな。まあ、アイツはペンよりも絵筆の方が喜びそうだけど。さて、俺も帰るか」


そう独り言ちると、少年は『メンタルペン』をポケットにしまい、頭の中に思い浮かべた相手の事を考えながらゆっくりと歩き始めた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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