第19話 フューチャーブレス 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
気持ちの良さを感じる程に綺麗に晴れた朝、男性はテレビを観ながらのんびりと朝食を食べていた。
「……今日は休みだけど何をしようかな。これといってやる事もなくて、誰とも約束はないから、すごく暇なんだよな……」
朝食を食べ終え、男性はテーブルに頬杖をついていたが、ふと右腕に填められた青い宝石がついたブレスレットに目をやると、男性はブレスレットを左手で軽く掴んだ。
「そうだ……せっかくだし、今日はこれの実験をしよう。この『フューチャーブレス』はこれをつけた状態で青い宝石に触れながら時間を指定すると、その時間までに起こり得る出来事を映像みたいにして教えてくれるらしいしな。
ただ……その出来事も確実に起きるわけじゃなく、あくまでも可能性の一つだから、それを信じきるわけにはいかないけど、対策を立てられるならそれでも良いよな。よし……それじゃあ正午までに何が起きるか見てみよう」
男性はワクワクした様子で『フューチャーブレス』の青い宝石に触れ、静かな声で時間を指定した。すると、男性の頭の中に男性にまつわる様々な出来事が流れ、それが終わると同時に男性は驚いた様子で『フューチャーブレス』に視線を向ける。
「……今のが正午までに俺に起きる出来事か。さっき見えたのは先輩から携帯に連絡が来てる光景と携帯が足に落ちる光景、後は会社の近くの定食屋で昼飯を食べてる光景だったけど、これはあくまでも可能性の一つなんだよな。
先輩からの連絡か……本当に来るなら嬉しいし、もしかしたらそれが昼飯への誘いかもしれないから、連絡が本当に来たら良いなぁ……」
『フューチャーブレス』で視た光景を思い浮かべて男性が嬉しそうな笑みを浮かべていたその時、テーブルの上に置かれていた携帯電話がぶるぶると震え、男性は一瞬驚いた後に少し慌てながら携帯電話を手に取った。
しかし、慌てて取った事や携帯電話の振動によって手から携帯電話は滑り落ち、そのまま男性の足に落下した。
「痛って……! ほ、本当に足に携帯が落ちた……って、そんな事より早く携帯に出ないと!」
男性は足元に落ちた携帯電話を拾い上げると、画面に表示された通話ボタンをタッチし、そのまま耳に当てた。
「も、もしもし……」
『あ、もしもし……って、声がなんだか痛そうだけど、もしかして何かあった?』
「あ、はい……携帯を取ろうとしたら、取り落として足にぶつかってしまって……」
『取り落としたって……ふふっ、それは痛かったでしょ?』
「は、はい……ところで、自分に何か用事でしたか?」
男性が痛みに耐えながら訊くと、電話の主はクスクス笑いながら答える。
『うん、ちょっとね。ねえ、今日って何か予定はある?』
「今日……いえ、特には無いです」
『よかった。それなら今日の君の時間を私にくれないかな?』
「え……?」
『この前、お詫びとして君とご飯を食べに行ったでしょ? あの時、すごく楽しかったから、君さえよかったら今日一日君と出掛けたいなと思ってね』
「先輩と外出……」
『そう。それで……どうかな?』
「は、はい……! 喜んで先輩にお付き合いします!」
『うん、ありがとう。それじゃあ一時間後くらいに会社のところで待ち合わせようか』
「わかりました。それじゃあまた後で」
『また後でね』
電話が切れると同時に男性は机に携帯を置く。そしてその表情は嬉しさに満ちた物だった。
「先輩との外出……! それは本当に嬉しいけど、先輩からの連絡と携帯の落下が本当に起きたなら、昼飯を一緒に食べるのだって本当に起きるはず。
それなら出掛ける前に午後の分も『フューチャーブレス』で起きそうな出来事を予め視ておこう。俺だけなら良いけど、先輩にも危険が及ぶ可能性だってあるからな」
男性はやる気に満ちた表情で頷きながら独り言ちると、『フューチャーブレス』に填められた宝石に指を触れ、この後の出来事にワクワクしながら指定したい時間を口にした。
いかがでしたでしょうか。
今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。