第19話 フューチャーブレス 前編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
「ふぅ……今日も疲れたなぁ」
夜空に星が瞬くある日の事、スーツ姿の男性が夜空を見上げながら自宅へ向かって歩いていた。
「あの人がいなくなってからというもの、仕事も前よりは辛くなくなったし、疲れも少なくなった。でも、先輩には相変わらず迷惑をかけてばかりだし、それはどうにかしないとなぁ……先輩、最近すごく元気になって、色々な人から頼られるようになってるし、せめて誰から頼られるかさえわかればそのサポートが出来るのに……」
男性がため息混じりに呟いていたその時だった。
「そこのお兄さん、ちょっと良いですか?」
「……え?」
背後から聞こえてきた声に驚きながら男性が振り向くと、そこには微笑みながら男性を見る少女の姿があった。
「君は……?」
「私は……まあ、道具と人間の橋渡し役とでも考えてください。ところで、お兄さん。さっきため息をついてましたけど、何かあったんですか?」
「え……ああ、うん。実は会社の先輩が最近になって忙しくなり始めてさ、いつもお世話になってる分、何かサポートが出来たら良いなって思ってたんだ」
「なるほど……それなら、この子が助けになるかもしれませんね」
そう言いながら橋渡し役の少女が取り出したのは、青い宝石が嵌まった銀色のブレスレットだった。
「これは……ブレスレット?」
「この子は『フューチャーブレス』という名前で、これをつけた状態で宝石に触れて、時間を指定すると、その時間までに起こる出来事を映像みたいにして教えてくれるんです」
「つまり……このブレスレットは未来を教えてくれるって事かな?」
「そういう事です。因みに、教えてくれるのは宝石の部分に触れた人の未来で、それはつけてる人にしかわからないので、もしその未来が良くない物だったら誤魔化したり教えないというのもありですね」
「たしかに……」
「そして、これはお兄さんにプレゼントします。大事にしてあげてくださいね」
にこりと笑いながら橋渡し役の少女が『フューチャーブレス』を男性に差し出すと、男性は驚いた様子を見せた。
「え、でも……そんなにすごい物を貰っても良いのかな?」
「大丈夫ですよ。この子は店頭に並べられなかったり試作品だから渡しても良いって言われたりしてる子なので、遠慮なく貰ってください」
「そっか……まあ、そういう事ならありがたく貰おうかな。どうもありがとう」
「いえいえ。さて、それじゃあこの子についての注意点を話しますね」
「注意点……もしかして、未来を変えようとすると何かあるとか?」
「いえ、それは大丈夫です。ただ、この子が教えてくれる未来はあくまでも起きるかもしれない可能性の一つなので、教えてくれた未来とは違う出来事が起きる時もあります。なので、それだけは注意してくださいね」
「そういう事か……うん、わかった。それは気をつけるよ」
『フューチャーブレス』を手にしながら男性が答えると、橋渡し役の少女はにこりと笑いながら頷く。
「はい。それじゃあ私はそろそろ失礼しますね」
「うん、気をつけて帰ってね」
「ありがとうございます、優しいお兄さん。お兄さんならあのお姉さんも好きになっちゃうかもしれませんね」
「ははっ、それなら良いんだけど──って、え? あのお姉さんって……もしかして、君は先輩の事を知ってるの?」
「ふふ、それは内緒です。それじゃあさようなら、お兄さん」
「あ、うん……」
男性が答えた後、橋渡し役の少女が歩き去っていくと、男性は手の中にある『フューチャーブレス』に視線を落とす。
「未来を教えてくれる……もし、仕事の前に先輩にこの宝石のところに触れてもらったら、その日に起きるかもしれない出来事を知る事が出来るんだよな。よし……自分で少し実験してみたら、先輩にも触れてみてもらおう。そうすれば、先輩の助けになるかもしれないし」
『フューチャーブレス』を見ながら覚悟を決めたような表情を浮かべた後、男性は『フューチャーブレス』を右腕につけ、自宅へ向けて再び歩き始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。