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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第17話 リスタートダイアリー 前編

どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。

「はあ……本当にどうしたら良いんだろう……」


 青白い月が昇り、小さな星達が瞬く綺麗な夜空が広がる中、肩から鞄を掛けた一人の少年がとぼとぼと夜道を歩いていた。少年は暗い表情を浮かべながら重そうな足取りで歩いていたが、やがて再び大きなため息をつく。


「……はあ、今日も失敗続きでやんなっちゃうよ。僕だってしたくてしてるわけじゃないのに、失敗の度に責められたり笑われたりするし……なにか失敗をしなくなる方法って無いのかな……」


 少年が俯きながら夜道を歩き続けていたその時だった。


「そこの君、ちょっと良いかな?」

「え──って、うわ!」


 突然前方から聞こえてきた声に少年は顔を上げたが、目の前にいつのまにか現れていた少女の姿に驚き思わず尻餅をつくと、少年は痛そうに臀部を擦った。


「痛てて……」

「だ、大丈夫……? ごめんね、まさか尻餅をつくとは思ってなかったから……」

「う、ううん……大丈夫だから気にしないで。こういう失敗はいつもの事だし、勝手に驚いて尻餅をついたのは僕だから……」

「いつもの事って……そんなに痛い思いばかりしてるの?」

「うん……僕、昔から失敗ばかりしてて、失敗の内容によっては責められたり笑われたりするんだ。そして、なんで失敗するんだって訊かれるんだけど、僕にもそれがわからないから答えられなくて……」

「なるほど……それじゃあこの子が力になれるかもね」


 そう言いながら少女が肩から掛けていた鞄から取り出したのは、『SAVE&LORD』と表紙に書かれた一冊の日記帳だった。


「これは……?」

「これは『リスタートダイアリー』っていう名前で、この日記帳のページにその日にあった事を書き留めて、その後に書いた文章に戻りたいという気持ちを込めながら触ると、意識だけその時に戻る事が出来るんだ」

「つまり……お昼に何か失敗をした時、それをこの日記帳に書いておくと、後でその時間に意識だけ戻れるって事?」

「そういう事。ただ、その出来事があった日に書いておかないと効果は発揮しないから、戻れるとすれば今日の朝からになるね」

「そっか……」

「そして、その時間に戻ってやりたい事をやった後は自動で今の時間に戻るんだけど、やった事は事実として残るから、本当なら失敗だった出来事を成功した出来事に変えた状態に出来るわけだね」

「失敗を成功に……」


『リスタートダイアリー』を見る少年の目が輝き出すと、少女はクスリと笑ってから『リスタートダイアリー』を少年へと差し出した。


「はい、という事でこれは君にあげるよ。大切にしてあげてね」

「え、でも……そんなにすごい物をただで貰うのは気が引けるというか……」

「あはは、気にしないで。この子は店頭に並べられなかったり試作品だから渡しても良いって言われたりしてる物の一つだし、この子が君に興味があるようだから、遠慮せずにもらってよ」

「あ、うん……」


 そして、少年が『リスタートダイアリー』を受けとり、どこか嬉しそうに眺める様子を見ながら少女はにこにこと笑う。


「さてと、それじゃあその子についての注意点を話そうかな」

「注意点……え、それってさっきのじゃないの?」

「それもなんだけど、実はまだあるんだ。その子を使えば、戻りたい時に戻れるけど、その子に触れないと過去には戻れないし、戻っても現在に影響が出ない事もあるから、それはわかっておいてね」

「うん、わかった。でも、過去を変えても現在が変わらないなんて事があるのかな……」

「まあ、イメージはしづらいと思うけど、そういう事もあるって思っていてくれたら大丈夫だから。それじゃあ私はそろそろ行くよ。その子、大事にしてあげてね」

「う、うん」


 少年が返事をし、それに対して満足げに頷いて少女が立ち去った後、少年は手の中にある『リスタートダイアリー』に視線を向けた。


「過去に戻れる日記帳……これさえあれば、失敗とは無縁の生活が出来るんだ……! 早く家に帰って今日の出来事を書いてみないと!」


 少年は目を輝かせながら『リスタートダイアリー』を強く握ると、待ちきれないといった様子で自宅に向けて走り始めた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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