第14話 守護臣 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「……ふぅ、今日も学校に行かないといけないな……」
よく晴れた日の朝、自宅の洗面所で少年は憂鬱そうな表情を浮かべていた。その表情から少年が学校へ行きたくないと感じている事は明らかであり、少年は鏡に映る自身の顔を見てため息をついた。
「はあ……酷い顔。まあ、行きたくないっていう気持ちが全面に出てるわけだから仕方ないけどさ」
少年は自嘲するように呟いていたが、ふと何かを思い出したような表情を浮かべると、ポケットの中に手を入れた。そして中から小さな鎧武者の人形を取り出した。
「……これ、たしか『守護臣』っていうんだっけ。持って歩くだけで危険から守ってくれるって言われたけど、どんな風に守ってくれるんだろう?
そこはよくわからないけど、この人形はカッコいいなぁ……僕なんて全然男らしくないし、背もそんなに高くないから、こんな風にカッコいい顔で重そうな鎧を軽々と着られているのはなんだか憧れるよ」
『守護臣』を見ながら少年が羨ましそうに呟き、洗面所から出るために扉に手を掛けようとしたその時だった。
「……え? 開けずにその場で待て? どうして……というかこの声って一体誰の声なの……?」
突然頭の中に響いてきた落ち着いた男性の声に少年が戸惑っていると、洗面所のドアが勢いよく開き、少年の姿に父親は驚いた様子を見せた。
「おっ、すまんすまん。手を挟んだりしてないか?」
「う、ううん……大丈夫」
「そっか……いつもだったらお前に気づかずに手を挟んだりぶつかって尻餅をつかせたりしてたけど、今日は大丈夫そうでホッとしたよ」
「……うん、僕もホッとしてるよ。洗面所使うよね? 今退くからちょっと待ってね」
「ああ」
父親が微笑みながら返事をした後、少年は父親と入れ替わるようにして洗面所から出た。そして、リビングへ向けて歩いていた時、再び少年の頭の中に声が響き始めた。
「足元に気を付けろ? 足元って特に何も無さそうに見えるけど……」
不思議そうにしながらも少年が足元に注意しながら歩いていた時、少年の視界に小さな木箱が見え、少年は納得顔で頷いた後に木箱を持ち上げて廊下の端に寄せた。
「これでよし。それにしても……さっきから聞こえてくるのはもしかして『守護臣』の声なのかな? 聞いてもたぶん答えてはくれないと思うけど、他に声が聞こえてくる理由もないし、きっとそうなんだろうなぁ……」
少年は手の中にある『守護臣』に視線を向けると、嬉しそうに微笑む。
「頼りない持ち主かもしれないけど、これからよろしくね」
少年の声に『守護臣』は答えなかったが、それでも少年は満足したように頷き、ポケットに『守護臣』をしまってからゆっくりと歩き始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。