第14話 守護臣 前編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
「うぅ……もうやだよぉ……」
辺りから烏の鳴き声が聞こえだし、空がオレンジ色に染まり出した頃、公園の滑り台の下でランドセルを背負った一人の少年が涙を流しながら肩を震わせていた。
「……そもそも、どうして僕だけいつも不幸な目に遭うんだろう。道を歩いていたら、鳥に糞を落とされるし、怖そうな人達にはぶつかるし……はあ、このままじゃいつか死んじゃうよ……」
少年が表情を暗くしながら更に悲しんでいたその時、少年の背後から声をかける人物がいた。
「ねえ、そこの君」
「え──って、いったぁ……」
突然聞こえた声に驚き、少年が滑り台の底に頭をぶつけていると、声をかけた少女は申し訳なさそうな表情で少年へと近づく。
「ごめんね。そんなに驚くとは思わなくて……」
「い、良いんです……僕、いつもこんな風に痛い目に遭ってるので慣れてますから……」
「いつも……」
「はい。こうやってどこかに頭をぶつけるのはよくある事で、不幸な目に遭わない日は無いくらいなんです。だから、そうならないようになって欲しいんですけど、いくら気を付けてもダメみたいで……」
「なるほど……だから、この子がこの公園に来たいって言ってたんだ」
そう言いながら少女がポケットから小さな鎧武者の人形を取り出すと、少年は不思議そうに人形に視線を向け始めた。
「この人形は……?」
「この子は『守護臣』っていう名前で、連れて歩いているだけで所有者をあらゆる災難から遠ざけてくれるんだ。危険な物が先にある時は、そっちへ行かない方が良いって教えてくれるし、誰かと争いになっても勝てるように力を貸してくれる頼もしい人形なんだよ」
「へー……それはたしかにすごいですね」
「でしょ? という事で、これは君にプレゼントします。大事にしてあげてね」
「え、そんな悪いですよ……」
「ううん、良いの。この子は縁がある人に渡す事になってる道具の一つで、私は道具と人間の橋渡し役だからね。遠慮無くもらってよ」
「あ……そ、それじゃあ頂きますね……」
申し訳なさそうに少年が『守護臣』を受け取ると、少女は満足そうにうんうんと頷いた。
「これで、君は痛い思いをせずに暮らせるはずだよ。ただ、この子と一緒にいる上で一つ注意点があるんだ」
「注意点……ですか?」
「そう。この子は曲がった事が嫌いだから、この子の前で理由もなく誰かを傷つけたり嘘をついたりしないで欲しいの。まあ、理由があっても誰かを傷つけたり嘘をついたりするのはよくないけど、理由も無しにそういった事をすると、大変な事になるからね」
「大変な事……わ、わかりました……」
「うん。それじゃあ私はそろそろ帰るよ。その子の事、大切にしてあげてね」
「は、はい……」
そして、橋渡し役の少女が去ると、少年は手の中にある『守護臣』に視線を向けた。
「危険から守ってくれる人形……お守りみたいな感じに考えれば良いのかな……? とりあえず、僕も家に帰ろう。このままここにいるわけにもいかないし」
少年は頷いてから滑り台の下から出ると、少しだけ安心したような表情で自宅に向かってゆっくり歩き始めた。
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それでは、また次回。




