第12話 ガイアシャワー 後編
どうも、伊達幸綱です。それでは、早速どうぞ。
ある日の放課後、一人の女子生徒が花壇に咲く花に楽しそうに水をやっていた。その手には『ガイアシャワー』が握られており、そこから花へ水が降り注がれる様子を見ながら女子生徒はクスリと笑った。
「うん、前に比べてだいぶ元気になったね。他の花壇の子達も元気になったし、この『ガイアシャワー』の力は本当にすごいなぁ。これをくれたあの子には本当に感謝しないと」
そう言いながら女子生徒が『ガイアシャワー』に視線を向けていると、後ろから一人の男子生徒が近づき、女子生徒の隣に立ってから声をかけた。
「やあ、今日も水やりお疲れ様」
「ぶ、部長……! あ、いえ……園芸部として当然の事ですから……」
「そんな事ないよ。君が担当しているこの花壇だけじゃなく、他の子が担当している花壇の花も君が世話をしたら元気になったと聞いたよ。どういう方法を使ったかはわからないけど、これは本当にすごい事だ。頑張ったね」
「い、いえ……そんな大層な事はしてないんです。ただ、ある子から貰ったこの如雨露を使い始めたら、どんどん元気になったので、私の力でどうにかなったんじゃないんです」
「その如雨露の力……僕も不思議な道具を持ってる生徒の噂は聞いた事があるし、たしかにその如雨露の力もあるんだと思う。でも、この結果は君がこの学校の花達に対してしっかりと愛情を注いでいるからでもあるんだよ」
「え……?」
女子生徒が水やりを中断しながら不思議そうに男子生徒の方へ顔を向けると、男子生徒はにこにこと笑いながら女子生徒の方を向いた。
「すごい力を持つ道具を持っていてもそれをしっかりと使えないと意味はない。今回の場合だと、花達を元気にする如雨露があっても、水をしっかりとあげないと結局花達は元気にする事は出来ないという事だね。
花達の元気の無さに他の部員達が諦め気味になっても、君だけは諦めずに色々な方法を試した。それは君が他の部員よりも花達に対して真摯に向き合おうとしていたからだ。
だから、噂の生徒も君の前に現れ、その如雨露とも出会えて、こうして花達を元気にしてあげられた。それは君だったから出来た事なんだよ」
「部長……」
「誰かに愛情をしっかりと注ぐ事が出来る君の良さは自信を持って良いと思う。花達に限らず、それで助かる人はきっといるはずだからさ」
「……はい、わかりました。部長、ありがとうございます」
「どういたしまして。さて、水やりが終わったら一緒に部室に戻ろうか。他の部員達ももう部室にいるからね」
「はい!」
男子生徒の言葉に女子生徒が嬉しそうに答える中、その様子を少し離れたところから橋渡し役の少女が見守っていた。
「……うん、あの子も大丈夫そうだね。うっかり水を上げすぎて、元気になりすぎた花達に襲われる可能性も考えて様子を見にきたけど、どうやら杞憂だったみたい。
それにしても……恋の花まで咲きそうになるとは思わなかったなぁ。私はそういうのを見られないけど、《《あの子》》ならしっかりとあの二人の間に恋の花を咲かせた上でそれを見られるんだろうし、やっぱり羨ましいなぁ……なんて、羨ましがってもしょうがないし、あの子の恋の成就を願いながら帰ろっと」
そう言って橋渡し役の少女は校門の方へ体を向けると、そのままゆっくりと歩き始めた。
いかがでしたでしょうか。
今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。




