表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
36/317

第12話 ガイアシャワー 前編

「ふんふんふーん……♪」


 雲一つ無い快晴の空の下、セーラー服姿の栗色の短髪の女子生徒が鼻歌を歌いながら花壇の花に水やりをしていた。女子生徒が持つ如雨露(じょうろ)から出る水は花壇の花達に降り注ぎ、葉に載った雫は陽の光を反射してキラキラと輝いていた。

 そしてそれから数分後、如雨露が空になると、女子生徒は満足そうに頷きながら一人微笑んだ。


「うん、これで今日も水やり終わり。でも……最近、花達の元気が無い気がするんだよね。水は欠かさずやってるし、肥料も試してみたのに、なんだか効果が無い気がするし……はあ、どうしたら良いのかな……?」


 花を前に女子生徒がため息をついていたその時だった。


「ねえ、そこの貴女」

「え……?」


 突然聞こえてきた声に女子生徒が振り返ると、そこには空色の如雨露を手に持った短い橙色の髪の女子生徒が立っていた。


「貴女は……もしかして、花に水をやりにきたの?」

「ううん、残念だけど違うよ。まあ、手に如雨露を持っていたら、そう思われても仕方ないけどね」

「それじゃあ、一体……?」

「この如雨露が貴女に興味を持ったみたいだったから、道具と人間の橋渡し役として出会わせに来たんだよ。貴女、さっきため息をついていたみたいだけど、それってその花達が関係してるんでしょ?」

「あ、うん……」

「それじゃあ、この子がお役に立てるはずだよ」

「この子って……その如雨露の事?」


 如雨露を指差しながら女子生徒が問いかけると、橋渡し役の少女はにこにこと笑いながら頷く。


「そうだよ。この子は『ガイアシャワー』っていう名前で、この子を使って水やりをすると、枯れた植物も元気を取り戻し、しばらくの間、病気にも罹らなくなるの」

「枯れた植物も……それじゃあ、元気の無い花も水をあげるだけで元気になるって事?」

「その通り。そして、この子は貴女にプレゼントするよ」

「え……そんなすごい物をもらっても良いの?」

「うん。この子はウチの御師匠様から渡しても良いって許可をもらってる物だからね。それに、この子自身が貴女に興味を持ったみたいだから、遠慮無くもらってくれていいよ」

「そうなんだ……うん、わかった。それじゃあありがたくもらうね」


 女子生徒が『ガイアシャワー』を受け取ると、橋渡し役の少女は女子生徒の隣に立ち、花壇の花を見ながら優しい笑みを浮かべた。


「花、綺麗だね。たしかに元気が無さそうだけど、この子の力があればきっと大丈夫だよ」

「うん、そうだと良いな。ところで、この如雨露の名前のガイアってもしかして……」

「そう。ギリシャ神話の女神様の名前。だから、女神様のパワーでこの花達もすぐに元気になってくれるはずだよ。まあ、流石に水のやりすぎには注意した方がいいけど、それ以外にこの子の注意点は無いから、安心して使ってもらって大丈夫」

「水をやりすぎるとどうなるの? もしかして、元気になりすぎて逆に枯れちゃうとか?」

「ううん、そうじゃないけど……まあ、少し大変な事になるのは間違いないかな。だから、うっかりでも水をやりすぎないようにね」

「うん、わかった。この如雨露をくれて本当にありがとう。大事にするね」

「うん。それじゃあ、またね」


 そう言って橋渡し役の少女が去っていくと、女子生徒はそれを見送ってから『ガイアシャワー』に視線を向けた。


「……女神様のパワー、か。その話が本当かはわからないけど、とりあえず後で試してみよう。さて、水やりも終わったし、私もそろそろ帰ろうかな」


 そして、女子生徒は軽く花壇の花達を見回した後、『ガイアシャワー』を手に持ちながらカバンなどを置いてある自分の教室へ向かって歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ