第11話 友達ノート 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「……はあ、今日も疲れたな」
空に幾つもの星が瞬き、辺りが薄暗くなった夜、男性教師は疲れた様子で帰宅すると、持っていたカバンをソファーの足元に置き、ネクタイを緩めながらため息をついた。
そしてスーツから部屋着に着替え、準備した夕食を食べていた時、男性教師はふとソファーの足元に置かれたカバンに視線を向け、何かを思い出したような表情を浮かべた。
「……そういえば、日中に生徒から変わったノートを貰ったんだったな。たしか『友達ノート』っていう名前で、頭の中に誰かを思い浮かべながらその日の出来事や思った事を書くと、まるでその人が本当に答えてくれたようにノートが返事をしてくれるって言ってたが……本当なのか?」
男性教師は疑わしそうな視線をカバンに向けていたが、やがてカバンに近づいて中から『友達ノート』とボールペンを取り出すと、ボールペンを持ちながらページを開いた。
「まあ……疑うばかりなのはよくないし、とりあえず試してみるか。けど、誰を想像して何を書こうか……そうだ、想像するのは父さんにして書くのは近況についてにするか。
最近、実家に中々帰れてなかった上に電話で話す事もなかったから、近況どころか何も話せてなかったし、本当に父さんと話してる気分になりながら試してみよう」
父親の顔を想像して懐かしそうな表情を浮かべると、『友達ノート』のページに自身の近況を書き込んだ。すると、その下にゆっくりと文字が浮かび出し、男性教師が驚いている内に文字は完全に浮かび上がった。
『そうか……最近、連絡一つ寄越さないから、母さんと一緒に心配してたが……元気そうでよかったよ』
「すごい……本当に父さんと同じ喋り方だ。それじゃあ今度は母さんを想像して俺が小さかった時の事を書いて……」
ワクワクしながら男性教師が母親の顔を想像し、幼い頃の出来事を『友達ノート』のページに書き込むと、再びその下に文字が浮かび上がった。
『そうそう。あの時は私もお父さんも大変だったけど、アンタが元気になった時は本当に嬉しかった。元気になってから行ったあの花畑……綺麗だったからまた行きたいわね』
「……母さんと同じ喋り方だし、あの花畑に行った話を知ってるのは両親と当時のダチしかいない。このノート、やっぱり想像した相手を再現する事が出来るんだ……なんだか、本当にすごい物を貰ってしまったな……」
男性教師は少し申し訳なさそうな表情をしていたが、やがて『友達ノート』に視線を落とすと、両手で静かに持ち上げた。
「とりあえず貰ったからにはもう少し使わせてもらおう。こんな出会いは中々ないし、このノートにも愛着が湧き始めたしな」
嬉しそうに微笑みながら言うと、男性教師は夕食を再び食べながら『友達ノート』との会話を始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。