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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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最終話 コネクトリング 中編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「それは指輪か……なんだ、嬢ちゃんにちょっと早いプロポーズでもするのか?」

「え、そうなの?」

「違うって。けど、どうしてこの指輪が……」


『導き手』が自身の手の中にある二つの指輪を見ながら不思議そうに呟くと、同じように指輪を見ていた『探し手』は『繋ぎ手』に視線を移した。


「お姉ちゃん、この指輪ってどういう物なの?」

「この子は『コネクトリング』という名前で、その名前の通り、指輪をはめた人同士の絆を結ぶ物なんだ。

『コネクトリング』で絆を結んだ人同士は、お互いの感情などを共有出来て、相手のいる場所も『コネクトリング』を通して知る事が出来るっていう二人の人物を一心同体に出来る道具だね」

「へえ……つまり、俺達がつけてる『バインドチョーカー』みたいな感じか」

「簡単に言えばそうです。ただ、『コネクトリング』は自由にはめたりはずしたり出来ますし、これといった注意点はないので、そこは違いますね」

「そっか……って事は、これを使う機会がある事になるよな?」

「そうなるけど、いったい誰に……」


 その時、『繋ぎ手』達は何かに気づいたように体をビクリと震わせると、入り口へと視線を向けた。

 そして入り口の扉がゆっくり開くと、そこには意外な人物達の姿があった。


「え……」

「『救い手』にコピーの俺達……」

「それにあなた達と……えっと、後ろのおじさんは?」

「やあ、君達。こちらにいるのはボクが『巡逢袋』と引き合わせた縁者で、『繋ぎ手』の実のお父さんだよ」

「『繋ぎ手』の実の……」

「そういえば、お姉ちゃんとあの元許嫁の人は赤ちゃんの時に両親を交換されてたんだっけ。でも、どうしてそんな事を?」


『探し手』の疑問に『繋ぎ手』の父親は哀しい顔で答える。


「……それが私の両親からの命令だったからだよ」

「両親からの……」

「私の家はだいぶ古風な家で、両親も昔から厳格なところがあり、成人をしても私は自分達の子供なのだから自分達の言う事を聞いていれば良いと言っていて、別れた妻とも両親が持ってきた見合いで仕方なく結婚をしたんだ。

だが、私はそんな両親が嫌で、どうにか私を一人の人間として認めてくれないかと言ったら、自分の子供の以外の子供を成人するまで育てられたら認めると言っていたんだ」

「自分の子供以外の子供……」

「ああ、それが同じように双方ともに少しなのある家同士で結婚をしたあの夫婦で、元妻と共に話を持ちかけたら実に乗り気で、私達は実子同士を交換してその事を隠して育てていた。

だが、その考えは本当に愚かだったと気づかされたよ。息子として育てていた彼は妻の寵愛を受けて実にワガママな子に育ち、実子である君は向こうの家でとても厳しい生活を強いられ、しまいには七つにして性的な行為を強制されてしまった。

言い訳にしか聞こえないと思うが、私はその事に反対をしていたんだ。だが、元妻もあの夫婦も、更には私の両親すらもその事に賛成をしていて、私は自分の意見を押しきる勇気もなくあの日を迎えてしまったんだ……」


『繋ぎ手』の父親が静かに項垂れる中、『導き手』は元従兄弟の少年に視線を向けた。


「そういえば、二人はどうしてここに?」

「……彼に頼まれたんだよ。俺達は同じ現場で働く者同士であり、同じくこの店のメンバーの親族同士でもあるから、一緒に来てくれたら気持ちも落ち着くからって」

「許される事じゃないけど、しっかりと謝りたいって前々から言っていたんだけど、やっぱりいざ会うとなると怖くなってきちゃったみたいなの」

「怖くなったって……!」

「貴方が意見を押しきっていれば、お姉ちゃんは今でも……!」


 兄妹が怒りを露にしたが、『繋ぎ手』はそれを手で制した。


「……良いよ、二人とも」

「でも……」

「二人の気持ちは嬉しいよ。だけど、あの出来事があったから、今の私があるんだもん。御師匠様と出会って道具達ともちゃんと話せるようになって、お兄さんや妹ちゃん、それに他の人達とも繋がりを持てた。その事は私にとって嬉しい事だから」

「お姉ちゃん……」


 兄妹の視線を浴びながら『繋ぎ手』は父親の前に立つ。


「……お父さん」

「……なにかな?」

「……正直な事を言えば、まだ貴方の事をお父さんだって認めたくないし、お父さんって呼びたいわけじゃない。だけど、こうして過去を思い出して謝りに来てくれた事は嬉しいよ。

だから、一緒に住んだり親子として関係を戻したりは出来ないけど、少しずつなら話をしたり一緒にご飯を食べたりしても良いって思ってる。私だって能力のせいで人生を狂わせて、辛い思いをさせてきちゃったから」

「……そうか」

「会いに来てくれてありがとう、お父さん」

「……こちらこそ、歩み寄ってくれて……本当に、ありがとう……!」


 父親は安心感と嬉しさから目からぽろぽろと涙を流し、『繋ぎ手』はその姿を見つめた後、『救い手』に視線を移した。


「『救い手』、貴女に一つお願いがあるんだけど良いかな?」

「君からのお願いか。別に構わないけど、内容によるかな」

「至って簡単なお願いだよ。お兄さん、『コネクトリング』をもらっても良いかな?」

「良いけ──ああ、そういう事か」

「そういう事」


 合点がいった様子の『導き手』から『繋ぎ手』は『コネクトリング』を受け取ると、その内の一つを『救い手』へと差し出し、『救い手』は差し出された『コネクトリング』を静かに見つめた。


「……これは君達側の道具か」

「そうだよ。これは『コネクトリング』っていう名前の指輪で、簡単に説明すれば、はめた人同士の絆を結ぶ物だよ」

「なんというか、実に君らしい道具だね。それで、ボクは何をすれば良いのかな?」

「それは……」


『救い手』からの問いかけに『繋ぎ手』は迷いのない目で答えた。


「『救い手』、貴女には私と改めて絆を結んでほしいの」

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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