第99話 神罰錠 後編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「これで決着を……」
「ああ。『パニッシュメントシューター』は過去に悪事を働いていたり現在も悪事を働いている相手の精神や脳に相応のダメージを与える道具だ。これを使うのはだいぶ辛いと思うけど、二人ともこの道具を選んだって事は、これが現在の最適解なんだ」
「……つまり、この子を使って彼にこれまでの悪事の報いを受けさせろって事だよね」
「そういう事だろうね。それならさっさとやってしまおう。このまま何もせずにいても仕方ないからね」
『救い手』が迷わずに『パニッシュメントシューター』を手にする中、『繋ぎ手』が迷っていると、元許嫁は『神罰錠』に捕らえられたままで大声を上げる。
「やるならやってみろよ! 自分達だって悪事を働いたようなもんなのに、人の事だけを悪人扱いして満足するならな!」
「コイツ、まだそんな事を……!」
「……ううん、その言葉は間違ってないよ。さっきも言ったように私達は道具によって色々な人を不幸にもしてきて中には死んでしまった人もいるし、感情を操った事で彼らの人生だって狂わせてしまったんだから」
「『繋ぎ手』……」
「だけど、私もこの引き金を引くよ。このまま警察に引き渡しても良いとは思うけど、それで必ずしも解決するわけじゃないし、その判断のせいでまた別の人が不幸な目に遭う可能性だって十分にあるから」
「お姉ちゃん……」
「……やろう、『救い手』。私達で過去に決着をつけよう」
「……ああ、もちろんさ」
覚悟を決めた『繋ぎ手』の姿に『救い手』がクスリと笑っていると、元許嫁は怯えたような顔で再び大声を上げた。
「や、止めろ……! 俺は決して悪くない!」
「いいや、君もれっきとした悪人だ。二人の父親に何も渡す事なく家から追い出した上に二人の母親をクスリ漬けにして性の人形として地獄のような日々を送らせ、彼女らとの間に出来ていた子供に生を与えずに殺した。
そして自身の欲求のために他の異性を食い物にして、拳銃にもクスリにも手を出し続けている。世間から見れば、十分な悪事であり、能力の影響がなくてもそこまでやったというなら、君には十分悪意や邪念があったという事になるのさ」
「……そうだね。だから、ここでさようならするよ。私達の過去にも君自身にも。私達がこの先も前を向いて一歩ずつ進んでいくために」
「い、嫌だ……!」
「……バイバイ。私が一度でも愛する事も手を繋ぐ事もなかった人」
その言葉と同時に引き金に共に指をかけていた『繋ぎ手』と『救い手』はゆっくりと引き金を引き、室内には乾いた銃声が一つだけ響き渡った。
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それでは、また次回。




