第98話 シールドフェザー 前編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
コピーの妹が泣き止んだ後、二人は『創り手』を見ながら静かに頭を下げた。
「……俺達のために道具を創ってくれた事、心から感謝している。『創り手』、本当にありがとう」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
「二人とも、何か変なところはないか?」
「特にはないな。だが、いつもよりも腹が空いた気がするし、眠気もある気がする」
「コピー体の時は生き物の三大欲求がそんなに強くないけれど、あなた達はもうコピー体ではなく、しっかりとした個々の存在だからね。これからはその辺で戸惑う事が多いかもしれないわ。特に性欲の辺りで」
「性欲……そうなると、『救い手』との関わり方も考えていかないといけなくなるのか……」
コピーの兄が難しい顔をする中、『導き手』は微笑みながら首を横に振る。
「別にこれまで通りで良いと思う。お前だって『救い手』がいきなり関わり方を変えてきたら戸惑うし、なんだか寂しいだろ?」
「そうだが、まだ扱いきれてない自分の欲求に負けて『救い手』を傷つける事になるのが怖いんだ。『救い手』も『繋ぎ手』の分身ではあるから、過去の出来事について心に傷があってもおかしくないからな」
「たしかにそうだね……でも、そこは『救い手』と相談しながらで良いんじゃないかな? あなた達の元の私達だっているし、何か困った事があったら遠慮なく相談してよ。これからは存在を奪い合う相手じゃなく、同じ物を共有する同士だから」
「うん、そうだね。ところで、私達はこれからなんて名乗ろうか。二人には『導き手』と『探し手』っていう呼び名があるけど、私達は特に決めてないし……」
コピーの妹が顎に手を当てながら考える中、『創り手』は二人を見ながら優しく微笑む。
「それなら全部終わった後、『救い手』に考えてもらったら良いと思うわ。彼女なら喜んで考えてくれそうだし」
「それもそうだな。よし……それじゃあ早速『救い手』のところに行こう」
「ああ。でも、その前に……オーナー、何か護身用の道具ってありましたか?」
「ええ、あるわよ。さっき、『インカーネーションボトル』を取りに行ってきた時に一緒に持ってきたのよ」
そう言いながら差し出したのは、表面に白い羽の装飾が施された指輪だった。
「これは……?」
「これは『シールドフェザー』という名前で、これをつけた状態なら、たとえ銃で撃たれたり何かが落ちてきても無数の羽が盾のようになって守ってくれるし、近くにいる人もその効果を得られるわ。という事で、これは『導き手』君に預けるわね」
「はい、ありがとうございます。ところで、『救い手』が持っていった道具達はどこにあるんだ?」
「今も店に置いてある。本当は連れてきたかったが、三つとも持ってくるのは難しかったし、探しに行く途中で壊れても俺達じゃ直せないからな」
「その代わり、お姉ちゃんから別の道具を前に貰ってるから、機会を見てそれを使うつもり」
「そっか」
「よし……これでようやく出発出来るな。『創り手』さん、ウチの連中をよろしくお願いします」
「はい、任せてください。みんな、気をつけて行ってくるのよ」
『創り手』の言葉に兄妹達が頷いた後、四人は刀傷の男性の後に続いて店を出ると、そのまま現世へ向けて歩き始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。