第97話 インカーネーションボトル 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「『インカーネーションボトル』……」
「そう。『探し手』さんが持っている『アルケミーボトル』と同じように水筒の形をした道具で、普通の水筒としても使えるけど、中に入れた物を飲ませる事で実体のないものは実体を得る事が出来るの」
「実体を得る……?」
「要するに、『コピーカメラ』でコピーした生物などに飲ませればそれは自分だけの肉体を持ち、制約から外れる。この二人も消えずに済むわけね」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ。とりあえず取ってくるからちょっと待ってて」
そう言うと、『創り手』は店内を歩き出し、本物の兄妹は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「これでこの二人も消えずに済むんだな」
「うん、やっぱりお姉さんの道具を創り出す力ってすごいよね」
「だな。お前達もよかったな、これで全部かいけ──」
「……なんでだよ」
「え?」
「どうして二人は私達の事をそんなに心配して、助けてくれようなんてするの? 行動には移してないけど、私達は二人から存在を奪う事を考えていたんだよ? それなのに、どうしてそこまで……」
コピー兄妹が苦しそうにしながらも本物の兄妹に疑問をぶつけると、本物の兄妹は顔を見合わせてから笑みを浮かべながらコピー兄妹に視線を向けた。
「そんなの決まってるだろ。お前達がまだ消えたく無さそうにしてるからだ」
「俺達が……?」
「そう。二人とも『救い手』の事を助け出して、これからも一緒にいたいっていう気持ちがあるみたいだからね。それなら十分助けようとする理由になるよ」
「け、けど……」
「それに、コピーだとしてもお前達は俺達だ。だったら、俺は妹のために、コイツは兄のために頑張ろうって思える」
「出会いこそあれだったけど、なんだかんだで二人は私達から無理に存在を取ろうとはしなかった。だから、私達だって二人の事を見捨てる気なんてないよ。そんな事をしたら、『救い手』が悲しむ事になるからね」
「俺達、またここから始めようぜ。お互いに支えたい相手がいる者同士、手を貸せるところは手を貸しあってさ」
『導き手』がコピーの兄に、『探し手』がコピーの妹に手を差しのべ、コピー兄妹は顔を見合わせて静かに頷きあってからお互いにその手を取っていると、『創り手』が空色の水筒を手に持って戻ってきた。
「お待たせ、みんな。これが『インカーネーションボトル』よ」
『創り手』の言葉に全員が『インカーネーションボトル』に視線を向けると、『インカーネーションボトル』は照明の明かりを反射してキラリと輝いた。
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それでは、また次回。