第97話 インカーネーションボトル 前編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「『救い手』の居所……?」
「もしかしていなくなっちゃったの?」
「……ああ、昨日から帰ってない。『繋ぎ手』の件でお前達に会いに行ったはずなんだが、中々帰ってこないし、連絡もないんだ」
「昨日、お姉ちゃんって会いに来てた?」
「いや、来てないな……」
「うん、それどころかこっちもお姉ちゃんを連れ去られてるから、今から救い出しに行くところだし……」
「『繋ぎ手』が連れ去られた……?」
「ど、どういう事……?」
コピー兄妹が困惑する中、刀傷の男性は少し申し訳なさそうにしながら頭をポリポリとかく。
「あー……それなんだが、『救い手』も同じところにいるはずだ」
「え?」
「どういう事だ?」
「今、ウチの秘書を『繋ぎ手』の元許嫁のアジトに潜入させてるんだが、『繋ぎ手』の嬢ちゃんだけじゃなく、『救い手』も連れてくるように言われてたみたいなんだ」
「『救い手』まで……」
「でも、どうして? お姉ちゃんを連れていく理由なんてどこにも……」
「『救い手』が道具を創り出せる事や感情を操る能力を持ってる事が理由だろうな。その能力さえ手中に収めれば、世界中を自分の物にする事すら簡単に出来ちまう。それに、『繋ぎ手』の嬢ちゃんだけ連れていっても、『救い手』が簡単に救い出してしまうと考えたんだろうさ」
「そんな……」
「くそ……そんな奴に『救い手』を連れ去ら……れ……」
コピーの兄は悔しそうな表情を浮かべていたが、目眩を起こしたように体がぐらりと揺れると、突然その場に倒れこみ、コピーの妹も続けて倒れこんだ。
「お、おい!」
「大丈夫……!?」
「……そろそろ時間切れか」
「時間切れ……」
「……私達は『コピーカメラ』の力で生まれただけの分身だからね。二人から存在を奪って本物になれなかったら、私達の方が消えちゃうの」
「そ、そんな……!」
「何か方法はないのか?」
「……存在を奪う以外にはない。だけど、それは『救い手』が望んでないからな」
「悔しいけど……私達はここまでかな……」
コピー兄妹が哀しそうな顔をし、本物の兄妹が今にも泣き出しそうな顔で二人を見つめていたその時、『創り手』は仕方ないといった様子で息をつく。
「……これは前払いという事にしましょうか」
「前払い……」
「お姉さん、何か手があるんですか?」
「あるわ。元々、『救い手』にはこの二人の事を頼まれていたのよ。あの子を過去の呪縛から解き放つための協力をしてくれる見返りとしてね」
「そんな事が……それで、その方法っていうのは?」
『導き手』からの問いかけに『創り手』は真剣な表情で答える。
「それ用に創っていた『インカーネーションボトル』の力に頼る、それしかないわね」
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。