第96話 レーダーリング 後編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
刀傷の男性は諦めた様子で言った後、『創り手』達を見回しながら静かに口を開く。
「今、俺達が進めてる計画はさっき二人が言った通りの事だ。息のかかった街のチンピラやヤクザが多い以上、あまり大っぴらには調べたり始末しに行ったりは出来ないからな」
「でも、いつからそんな計画を?」
「ここで『レーダーリング』を貰った日からだ。俺はすぐにウチの社員や殺し屋連中、後は仕事の関連で知り合った警察関係者や弁護士達を『レーダーリング』の対象者にしに行った。
その分、『レーダーリング』の説明は必要になったが、前に『リモートガン』について話した件があったからかすぐに連中も話を理解してくれ、『救い手』や『繋ぎ手』の嬢ちゃんの元許嫁の件にも関わると言ってくれた。それで、元許嫁の野郎のアジトを調べた後に俺はアイツに潜入捜査してくれないかと声をかけたんだ」
「なるほど……けど、よくわかりましたね」
「……どうやら道具の所有者達同士も縁を結ばれやすいみたいでな。俺が少し前に関わった探偵がそこを探り当ててくれたんだが、ソイツも道具を持っていて、その力を応用して探り当てたんだ。たしか……『クロノスクロック』とか言ってたな」
「『クロノスクロック』……その場の過去と未来の出来事を知る事が出来る道具。多少条件はありますが、たしかにあれならば怪しい場所があればそこの過去を知る事で様々な捜査が可能になりますね」
「ソイツもそう言っていましたし、俺が『繋ぎ手』の嬢ちゃんの関係者だと知ったらすごい嬉しそうにして、自分でよかったら手伝わせてほしいと言ってくれたんです。
それで、アジトに潜入してもらった後、アイツにはうまく立ち回ってもらいながら状況を報せてもらい、そろそろ頃合いだと感じて『繋ぎ手』の嬢ちゃんや『救い手』の話を切り出し、それに興味を持った奴さんがアイツにさらってくるように指示を出した。これが今のところ起きてる事の詳細です」
刀傷の男性が話し終えると、『導き手』と『探し手』は顔を見合わせてからコクリと頷き合い、刀傷の男性に視線を向けた。
「ボスさん、俺達をそこに連れていってくれませんか?」
「お前さん……」
「私もお願いします、ボスさん。私達が関わって怪我をしたり命を落としたりしたらお姉ちゃんが悲しむのはわかってます。でも、やっぱりこのまま待ってるだけなのは嫌なんです」
「俺の『ジーニアスミサンガ』の事もあるので、攻撃手段になる道具は全部『繋ぎ手』に渡してしまっていますけど、その分は『ディテクティブモノクル』と『ジーニアスミサンガ』の力を活かしてサポートにまわります。だから、お願いします」
「私達をお姉ちゃんのところまで連れていってください!」
兄妹が揃って頭を下げ、『創り手』達が刀傷の男性に視線を向けると、刀傷の男性は頭をかきながら小さくため息をついた。
「はあ……仕方ねぇな。わかった、早速『繋ぎ手』の嬢ちゃんを助けに行くぞ。そろそろ良い頃合いではあったからな」
「ボスさん……ありがとうございます!」
「ありがとうございます、ボスさん」
「礼なんていらねぇさ。だが、出来るなら何か身を守れるような道具が欲しいな。『創り手』さん、何か良さそうな道具はありますか?」
「そうですね……」
刀傷の男性の問いかけに『創り手』が考えていたその時、入り口のドアが勢いよく開き、店内にいた全員がそちらに視線を向けると、そこにいた人物達の姿に兄妹は驚いた様子を見せた。
「え……」
「ど、どうしてここに……?」
「……お前達に聞きたい事があるんだ」
「……お姉ちゃん、『救い手』がいるところに心当たりはない?」
息を切らしながらコピー兄妹は本物の兄妹に問いかけた。
いかがでしたでしょうか。
今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。