第95話 エンチャントステッカー 後編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
夕方頃、少し前まで賑わっていた喫茶店も今はすっかり客の数も落ち着いて、コピー兄妹は『救い手』と共に一息ついていた。
「今日もお客さんが多かったな……」
「うん。やっぱりおやつ時だと多くなるイメージがあるよね」
「ははっ、みんな甘いものを食べたり何かを飲んだりして気持ちをリフレッシュしたいんだよ。ところで、そろそろ学校も終わる頃じゃないかな?」
「おっと、そうだね。それならさっさと行ってくるとしよう。別に急がなくとも良いけれど、早めに会ってきた方が良いのは変わらないからね」
そう言いながら『救い手』が席を立つと、コピーの兄は少し心配そうに話しかけた。
「俺も一緒に行くか? 俺の場合、ただついていくだけにはなるけど」
「いや、君達はマスターの手伝いを優先してくれたまえ。今はお客さんもいないけど、またすぐに混み始めないとも限らないからね」
「わかった。だけど、気をつけて行ってこいよ? 『繋ぎ手』の元許嫁の息がかかった悪人に狙われる可能性だってないわけじゃないからな」
「そうだよ、お姉ちゃん。そうじゃなくてもお姉ちゃんは可愛いから、変な人に目をつけられる事もあり得るからね」
「ふふ、ありがとう。ここまで心配されているのなら、ボクもより一層気を付ける事にするよ」
「『救い手』さん、彼らによろしくね」
「ああ。では、行ってきます」
その『救い手』の言葉に三人が頷いた後、『救い手』は『エンチャントステッカー』を貼ったリュックサックを背負ってそのまま店を出た。
そして少し歩いた先にある路地裏には入り、そこで『エンチャントステッカー』が貼られたブレスレットの力で移動しようとしたその時、背後から一人の男性が忍び寄ってきた。
サングラスをかけたスーツ姿の男性はポケットからハンカチを取りだし、そのまま『救い手』の背後に近づいていたが、『救い手』は小さくため息をつくと、そのままゆっくりと振り返った。
「ボクに何か用事かな?」
「……気づいていたのか?」
「ああ、息を殺してもボクには気配でわかるのさ。それで、ボクに忍び寄ってそのハンカチで何をする気だったのかな?」
「……お前を連れてこいとボスから指令を受けているのでな。おとなしく一緒に来てもらうぞ」
「ボス……ボクの知り合いのボスならこういう真似をするとは思えないし、また別件というわけか。因みに拒否権は?」
「ない」
「だと思ったよ。それじゃあさっさと行こうじゃないか。ボクも暇じゃないのでね」
『救い手』が落ち着いた様子で言うと、サングラスの男性は少し驚いた様子を見せた。
「ずいぶん落ち着いているじゃないか。怖くはないのか?」
「怖さなんてないよ。それに、ボクには頼れる家族がいてくれるからね。ボクが連れ去られようとも彼らなら来てくれると信じているんだ」
「……そうか」
「ああ。では、そのボスのところまで案内を頼んだよ」
いつもの調子で『救い手』にサングラスの男性はため息をついた後、二人は路地裏から現れ、そのままどこかへと歩き去っていった。
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それでは、また次回。