第95話 エンチャントステッカー 前編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
『繋ぎ手』が放課後に誘拐された日の朝、『救い手』はカウンター席に座りながら新聞に目を通していた。
「……やはり捕まったね」
「そうだね……まあ、道具の介入があったといえ、やってはいけないところまでやってしまったのなら仕方ないだろうね。『救い手』さんももうその人に会う気はないんだろう?」
「ああ、ないよ。会うだけの理由もないし、会ったところで話す事もないからね」
いつになく冷たい声で『救い手』が答えていると、開店準備をしながらその様子を見ていたコピー兄妹は顔を見合わせてから『救い手』に話しかけた。
「……『救い手』、だいぶアイツの言葉が頭に来たんだな」
「お姉ちゃんのそんな冷たい声、初めて聞いたよ」
「君達に対してそういう声で話す事もないしね。それに、自分以外の人間を道具として扱い、道具達も自分の好きなように扱えるものなんて考え方をされたら流石のボクも怒るのさ」
「そうだな」
「それにしても……こうなると、『繋ぎ手』が不安だな。彼女自身には会わないまでも放課後になったら、『導き手』に会いに行ってこようかな」
そう言いながら『救い手』が手首につけたブレスレットを触ると、コピーの兄はふと何かに気づいた様子を見せた。
「そういえば、俺達はいつもそのブレスレットの力でワープしてるけど、そのブレスレットも『救い手』が作った道具なのか?」
「いや、これは普通のブレスレットさ」
「え……でも、そのブレスレットを触ったらワープホールが出てきてるよね?」
「そうだね。だけど、このブレスレットやいつものリュックサックが普通の物なのは嘘じゃないよ。そういった能力を有しているのは、彼のお陰だからね」
そう言いながら『救い手』はポケットから一枚のステッカーを取り出した。
「それは?」
「これは『エンチャントステッカー』という名前で、これを使う事で普通の道具でもボクや『創り手』が創る道具と同じような能力を持つ事が出来るのさ」
「へー……普通の道具にも能力を付与できる道具か。でも、それってどうやってるんだ?」
「そうだね……せっかくだし、その方法と同時にこれを創った時の話をしようか。ブレスレットやリュックサックの出所も気になるだろうしね」
「たしかにな」
「それじゃあお願い、お姉ちゃん」
「ああ、お願いされたよ」
『救い手』はクスリと笑いながら答えた後、『エンチャントステッカー』を軽く一撫でしてから話を始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。