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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第94話 エリアガーディアン 中編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「あれは去年の話だったよ。『繋ぎ手』さんは入学当初からクラスメート達の人気を集めていて、女子達からは同い年の妹みたいな感じで餌付けされたり男子からも何か言う度に明るく返してくれるからとても人気があったんだ」

「つまり、このクラスは一年生の頃から同じなんだな」

「うん、他のところだと文系と理系で分かれるんだろうけど、ウチは持ち上がりだからね。そんなある日、この近くで不審者が目撃されるようになっていて、怖いねってクラスメート達も話していた時に『繋ぎ手』さんが持ってきたのが『エリアガーディアン』だったんだ」

「ああ、範囲を決めると、その範囲内の生物はあらゆる事故や事件から守られるっていう奴だな」

「そう。見た目として小さなケースに入った鎧兜なんだけど、その時は僕達も何だろうってなってて、『繋ぎ手』さんに聞いたら、みんなを守ってくれる物だよって答えてくれたから、気休め程度に何か持ってきてくれたんだろうって僕達も担任の先生も考えてたんだ」

「けど、気休め程度じゃなく効果は覿面だったわけだな」


『導き手』の言葉にクラスメートは頷く。


「そうなるね。その日からこのクラスの生徒達は交通事故を含めたどんな事故にも遭わなかったし、実際に不審者に遭った生徒も何事もなく学校まで来れて後日不審者は逮捕されたんだ。

ただ、その生徒達の話をまとめると、自分が何か事故や事件に遭う前に必ず鎧武者が現れてそっちに行くなって言ってくれたり不審者を一喝して撃退してくれたりしていて、不審者の逮捕後に担任の先生も交えてもう一度『繋ぎ手』さんに話を聞いたら、それが『エリアガーディアン』という名前で『不可思議道具店』の事や『繋ぎ手』さんの過去について話をしてくれたんだ」

「そういう事だったのか……でもまあ、そんな風に道具の力を見せられたら、信じざるを得ないよな」

「ははっ、そうだね。それからは『繋ぎ手』という呼び名を使うようになって、道具と縁のある生徒や先生を『繋ぎ手』さんが感知した時には僕達もまたいたんだなって思うようになったんだ」

「そうか……因みに、『エリアガーディアン』って誰と縁があったんだ? これまでこの教室で見た事はないけど……」


『導き手』がキョロキョロと辺りを見回していた時だった。


「『エリアガーディアン』なら職員室の先生の机の上だよ」

「『繋ぎ手』……」

「例の件はもう大丈夫?」


 クラスメートからの問いかけに『繋ぎ手』はにこりと笑いながら答える。


「うん、大丈夫。そういう人なのはわかってたし、これ以上落ち込んでも仕方ないからね。それに、道具の話をしてるなら私だって混ざりたいよ」

「『繋ぎ手』は本当に道具達が好きだからな」

「ふふ、まあね。『エリアガーディアン』は特にこのクラスの誰かと縁があったわけじゃなくて、道具達と話をしてたらそれじゃあ手伝おうかって言ってもらえたから持ってきてたんだ。

それで、普段は先生に机の上で預かってもらってて、夜帰る前には範囲をこの学校に指定してから持って帰ってもらってるの。朝にはこのクラス全員を範囲に指定してもらい直してるしね」

「なるほどな。けど、この学校の全員を範囲にはしないんだな」

「そうしたいけど、全員を範囲にしたら、『エリアガーディアン』も流石に疲れるし、道具の事を知らない人からしたら怪奇現象みたいに見えて、変に騒がれちゃうからね」

「それもそうか……道具の事を知っても仲良くしてくれる奴ばかりじゃないし、変に広まっても俺達に害が出るかもしれないからな」

「そういう事。だから、校内でも事情をちゃんと知ってるのはクラスの子達と担任の先生だけで、前に道具と関わった人達以外は私の事を噂で知ってる程度。不思議な道具を持っていて、道具と人間の橋渡しをしているってね」


 そう語る『繋ぎ手』の顔は晴れやかであり、それを見た『導き手』は安心したように微笑んだ。


「……どうやら本当に大丈夫みたいだな」

「ふふ……ご心配をおかけしました。後で妹ちゃんにももう元気だよって言ってあげないとね」

「それが良いと思うよ」

「だな。アイツもだいぶ心配してたし、『繋ぎ手』が元気になったって聞いたら、本当に喜ぶだろうからさ」

「うん」


『導き手』達の言葉に答える『繋ぎ手』の顔はとても嬉しそうであり、その後も『繋ぎ手』は登校してきたクラスメート達に話しかけに行き、クラスメートと『導き手』はその様子を優しく見守っていた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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