第94話 エリアガーディアン 前編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
ある晴れた日の朝、高校の教室で『繋ぎ手』がため息をついていると、その様子を見守っていた『導き手』にクラスメートの一人が声をかけた。
「ねえ、なんだか『繋ぎ手』さんが落ち込んでるようだけど何かあったの?」
「……ああ、ちょっと知り合いが逮捕されてな」
「知り合い……もしかして、今朝からどこのニュース番組でも騒いでる誰も名前がわからない男の人とか?」
「そうだけど……よくわかったな」
「僕達は『繋ぎ手』さんの事情や扱ってる道具達について知ってるからね。こんな不思議な事件なら、道具が関わっていてもおかしくないよ」
「ああ、そういえば前にそんな事を『繋ぎ手』が言ってたな。たしか事情を知るきっかけになった出来事があったって」
『導き手』の言葉にクラスメートは微笑みながら頷く。
「そう。それまでは『繋ぎ手』さんの事も日常生活用の名前でみんな呼んでたけど、その出来事をきっかけにみんなで『繋ぎ手』っていう呼び名を使うようになったんだ。君の事を『導き手』と呼ぶようにね」
「俺の場合は『繋ぎ手』の分身である『救い手』からそう呼ばれるようになってからだけどな。でも、よく『繋ぎ手』の事情を飲み込めたな。結構重い内容だし、道具の事だって現実的とは言えないし」
「たしかにね。でも、『繋ぎ手』さんはそんな出来事があったとは思えない程に明るくて人懐っこいから、出会った時からみんなと仲良くなれてた。そんな『繋ぎ手』さんの事情を受け止めないわけないっていうのが僕達の総意だったんだ。それに、その道具に僕達は命を救われてもいたしね」
「複数人の命を救うような道具……その道具ってなんなんだ?」
『導き手』からの問いかけにクラスメートは微笑みながら答えた。
「道具の名前は『エリアガーディアン』、範囲を定める事で、その範囲内の生物はあらゆる事故や事件から身を守ってもらえるっていう道具みたいだよ」
「範囲を定めるタイプの道具……」
「因みに、その範囲っていうのは特定の場所だけじゃなく、特定のグループでも良いんだ。だから、『エリアガーディアン』にはこのクラス全体を守護範囲として定めていて、そのおかげで助けてもらえてるんだ」
「そういう事か……せっかくだし、その出来事についても教えてもらって良いか? 同じく道具を扱う者としてどんな事があったかは知っておきたいしさ」
「うん、良いよ。このクラスにいる以上、『導き手』君も『エリアガーディアン』の守護相手だからね」
クラスメートはふわりと笑うと、『エリアガーディアン』についての話を始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




