第89話 サーチドローン 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
ある日の事、喫茶店のカウンター席に座っていた『救い手』はココアが注がれたカップを手に持つと、ゆっくりとそれを口へ運び、こくりこくりと喉を鳴らしながら飲んだ。
「……ふう、やっぱりホッとする味だなぁ……」
「それは良かった。今日はもうお客さんも中々来なそうだし、後はゆっくりと出来そうだね」
「そうですね。けど、私も早くお店の手伝いに慣れないと……厚意で置いてもらってる以上はちゃんと手伝わないといけないし……」
「そこまで気負う必要もないさ。君の本体がお店の手伝いをしていたとはいえ、こことはジャンルが違うからね。あまり急かす気もないし、ゆっくり慣れていってくれ」
「……わかりました」
喫茶店のマスターの言葉に『救い手』が少し安心したように微笑んでいると、ドアベルの音が鳴り、一人の男性が店内へと入ってきた。
「いらっしゃいませ」
「あ、すみません……この辺りで茶色い封筒って見ていませんか?」
「茶色い封筒……いえ、私は見ていませんが、君はどうかな?」
「私もさっき外を見てきた感じだと見てないです。あの、その封筒には何か重要な物が入っているんですか?」
「そうなんだ……私は出版社の物なんだが、漫画家の先生から預かった原稿が入っているんだよ」
「漫画の原稿……」
「ああ……失くしたと知られたら、先生もたいそうお怒りになり、きっとウチではもう描かないと言われてしまう……」
男性が頭を抱え、マスターが顎に手を当てる中、『救い手』の膝の上に置かれていた『サーチドローン』が話しかけた。
『なあ、俺が手伝ってやろうか?』
「え、君が?」
『ああ。探し物なら俺の得意分野だしな、その茶色い封筒っていう情報以外にももう少し教えてくれさえすれば確実に探してやれる。
だが、あまり目立ちたくないなら別に無理にとは言わない。そういう行為をして、『繋ぎ手』にお前の居所を知られても良くはないからな』
「うん……」
『だから、最終的にはお前の判断に任せるよ。お前が助けたいなら俺も手伝うし、目立つのを避けたいなら俺も何も言わない。きっと、マスターも同じ判断をしてるから、俺達には何も言ってこないんだろうしな』
その言葉を聞いて『救い手』はチラリとマスターに視線を移した後、覚悟を決めた様子で頷いた。
「……手伝ってくれる?」
『ああ、もちろんだ。よし……それじゃあまずは情報をもう少し集めるか』
「うん」
嬉しそうに返事をした後、『救い手』は項垂れる男性に声をかけるために静かに口を開いた。
いかがでしたでしょうか。
今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。




