第87話 ワープペンダント 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「よし、今日はこんなところかな」
ある日の夕方、『繋ぎ手』が独り言ちていると、それを聞いた道具達は話し始める。
『たしかにな。今日は珍しく何人かに渡せてるし、そろそろ良い気はする』
『そうだね。早く帰らないと『創り手』も心配するし』
『同感。それにしても、いつもは0か1なのに珍しく多かったのは何かあるのかねぇ』
『それだけ私達の仲間も増え、人間の中で縁を結ばれる相手が増えたからなのかもしれませんね』
「だねぇ……でも、ちゃんと道具と向き合ってくれてる人もいるわけだし、こういう出会いは増えてほしいところかな」
『まあな。『繋ぎ手』も他所に行った道具達から近況報告が来るのを楽しみにしてるわけだし、悪い事ばかりでもないからな』
『たしかに』
『繋ぎ手』と道具達が話しながら歩く事数分、『繋ぎ手』達が交差点まで来た時、そこに後ろからパタパタという歩調の早い足音が聞こえ、『繋ぎ手』が振り返ると、そこには急いだ様子で走る少年の姿があった。
「彼、だいぶ急いでるね」
『ああ、だけどあの感じだと交差点に気づけてない気がするんだが……』
『うん、急ぐ事に集中しすぎてる印象は受けるね』
『そうですね……』
『コピーカメラ』達が心配そうに話す中、『ワープペンダント』は小さくため息をついてから『繋ぎ手』に話しかけた。
『……『繋ぎ手』、ちょっとあそこの奴の手助けしてやろうか』
「あれ、珍しいね? いつもならあまりそういう事は言わないのに」
『どこかへ急いでる時こそアタシの出番だからね。普段なら『繋ぎ手』達くらいしか移動させてやりたくはないけど、今回は特別だ。アンタ達が心配そうにしてるのに知らんぷりは出来ないからね』
「『ワープペンダント』……ふふ、やっぱり『ワープペンダント』は優しいね。ちょっと言い方はキツい時があるけど、みんなの頼れるお姉さんって感じで」
『そんな風に言ったってワープゾーンしか出してやれないよ。それで、どうする?』
『ワープペンダント』からの問いかけに『繋ぎ手』はにこりと笑ってから頷く。
「うん、お願い。あんなに急いでるなら本当に急ぎたい理由があるんだろうし、流石に私も見て見ぬふりは出来ないし、したくはないから」
『はいはい。ただ、毎回そうやろうとはしないから、そこだけはわかっておきなよ?』
「りょーかい。さてと、それじゃあ声をかけさせてもらおうかな」
嬉しそうに笑った後、『繋ぎ手』は交差点へ向かって走ってくる少年に声をかけ始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




