第87話 ワープペンダント 前編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
ある日の事、『不可思議道具店』の店内で『導き手』と『探し手』が道具の手入れや店内の清掃を行っていた時、入り口の扉が開き、四人の男女が中へと入ってきた。
「いらっしゃいま──あ、『ジーニアスミサンガ』を持ってきてくれた二人と後は……」
「よう、久しぶり。こっちは俺が向こうの世界で仲良くなった奴らなんだ」
「なんでも魔王さんとその側近さんで、お二人も恋人同士だそうです」
「魔王さんと側近さん……ここに来てから色々な人と知り合えるのは楽しいね、お兄ちゃん」
「たしかにな」
『探し手』の言葉に『導き手』が頷いていると、魔王は少し呆れ気味に息をつく。
「……今は世界の支配など考えてはいないが、魔王と聞いてもその程度の反応とはな。勇者、お前の世界の住人達は変わり者が多いな」
「まあ、あっちと違ってこっちだと物語の中の世界の住人っていう感覚でしかないからな」
「この前も外国からいらしたという方に写真撮影を頼まれましたし、そのくらいの考え方で良いのかもしれませんね」
「そうかもしれません。そういえば、『繋ぎ手』さんは外出中ですか?」
「ああ、そろそろ帰ってくるはずだけど……」
その時、店内に青い渦が現れ、その中から『繋ぎ手』がゆっくりと姿を現した。
「ふぅ、たっだいまー。あれ、勇者君達と魔王さん達だ。珍しいお客さんが来たもんだね」
「おかえり、『繋ぎ手』。四人ともちょうど今来たところだったんだ」
「少しお話ししてたんだよ」
「なるほどね」
兄妹の言葉に『繋ぎ手』が納得顔で頷いていると、魔王は消えていく青い渦を見ながら静かに呟く。
「……この店の道具は相変わらずだな。ここまで容易に空間を移動出来るものなどあちらにはそうそう無いぞ」
「まあ、御師匠様が作る道具達はどれもすごいですからね。それに、この『ワープペンダント』とは長い付き合いですし、色々融通も効かせてくれるんですよ」
「色々融通を……そうだ、せっかくだから『ワープペンダント』との思い出も聞かせてくれるか? 帰ってきて早々で悪いけどさ」
「それくらい良いけど、勇者君達も何か用事があって来たんじゃないの?」
「いや、久しぶりに顔出そうと思って魔王達と来ただけだ。それに、あまり道具達との話って聞かないし、俺も聞いてみたいな」
「そうだな……『繋ぎ手』、頼めるか」
「はい、もちろんです。それじゃあお話ししますね」
『繋ぎ手』はにこりと笑うと、『ワープペンダント』との思い出について話し始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




