第85話 パニッシュメントシューター 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「試練の相手……って、その水筒とコイツの間に縁の縄が視える……!?」
「私も相性の靄が視えてるよ。でも、二人ともこの水筒に見覚えがないって事は……」
「そうだよ。これは『求心水』という道具で、この中に入れた水を飲んだ人間は周囲の人間の心を惹き付けるようになるという『救い手』側の道具だね」
「やっぱり……」
「ただ、二人とも勘違いしてると思うけど、彼にはもう君達への悪意も敵意もない。そうだよね?」
神からの問いかけに少年は静かに頷く。
「はい。この二人からすれば、俺は本当に信用出来ない相手なのはわかってますけど、この二人に対して何かをするつもりはないです。むしろ、ちゃんと謝るべきだと思ってます」
「コイツが俺達に謝る……?」
「え……ど、どういう事……?」
「……信じられないとは思うけど、俺はこの『求心水』と出会って、前の俺から変わる事が出来たんだ。たしかに手に入れた直後は、これで周囲の人間を惹き付けて自分の奴隷にしたり欲求の捌け口にしたり出来るって思ったさ。
だけど、彼女と出会ったり何かと頼られたりするようになる内に誰かのために何かをする方が楽しいって思えるようになって、俺は以前の俺や両親の言動を恥じるようになった。
だから、これまでの悪事の証拠を集めて警察に届けた。その結果、俺は自首した事や他の人達からの口添えであまり大きな罪には問われなかったけど、両親は今でも刑務所にいるし、そこでも問題を起こし続けてるから、もう出てこないもんだと考えてる。個人的にはそれならそれでも良いかなと思うしさ。そうじゃないと、彼女や俺と仲良くしてくれてるダチに対しても酷い事をするだろうしな」
「……たしかに前みたいな嫌な感じはしないか」
「うん……それに、前だったら私達を見たらすぐに何か命令してきたり暴言を吐いたりしてきたし、神様がこうして会わせた辺り、一応警戒は解いても良いのかも」
「うん、大丈夫だよ。そもそも君達の存在をこちら側に無かった事にしたから、彼からは君達に対してした酷い事の記憶しか残してなかったし、悪意や敵意も完全に消えてる」
神の言葉を聞いて二人が少し安心した様子を見せていたその時、『導き手』は何かに気づいた様子で手の中の『パニッシュメントシューター』に視線を向けた。
「え……そ、それじゃあまさか……」
「お兄ちゃん?」
「……どうやら『導き手』は気づいたようだね。そうさ、今回の試練の内容は君達がそれを使って彼をどうするか見させてもらうよ」
「『パニッシュメントシューター』を使って……」
「私達がどうするか……」
兄妹が動揺した様子を見せる中、『パニッシュメントシューター』は陽の光を浴びてキラリと輝いた。
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それでは、また次回。




