第85話 パニッシュメントシューター 前編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
神の力で転移をすると、そこは工事現場のような場所であり、忙しそうに働く人々の姿に兄妹はキョロキョロと辺りを見回す。
「ここは……現世、だよな?」
「うん……でも、どうしてここに? お姉ちゃんの幻影がいる感じもないし、何か危険な物があるわけでもないし……」
「強いて言うなら、工事現場自体が中々危険なんだけどな。神様、どうして俺達をここに?」
「やっぱりここは現世じゃないんですか?」
「いや、ここは現世だよ。ただ、君達にはある人と会ってもらう必要があってね。この最後の試練にはその人も関わってくるんだ」
「最後の試練……」
神の言葉に兄妹が顔を見合わせていると、神は二人を見ながらどこからかある物を取り出した。
「という事で、この試練の助っ人になる道具を渡しておくよ。はい、どうぞ」
「これは……拳銃!?」
「え……これが必要って事は、会う人ってものすごく危険なんじゃ……!?」
「いや、今となってはそうでもないさ。これは『パニッシュメントシューター』という名前で、過去に何らかの悪事を働いていたり現在悪事を働いている相手にのみ効果を発揮するんだけど、銃口を向けて引き金を引くと、その相手の精神や脳にダメージを与え、その悪事の程度次第では一発で精神を崩壊させたり植物状態に出来たりするんだ。
因みに、その相手は人間に限らず動物や植物、無機物でもよくて、精神や脳を持たない相手ならそれ自体を消滅させる事が出来て、これを撃っても使用者には何も影響は無いよ。」
「……なんだかこれまでの道具の中でもかなり危険だな。『リモートガン』と同じ拳銃ではあるけど、使用者には何も無い分、手に入れた奴が悪人だったら本当にヤバい事にしかならないし……」
「そうだね……」
『パニッシュメントシューター』を見ながら兄妹が真剣な表情を浮かべていると、工事現場では現場監督の男性が作業者達に休憩をするように告げ、作業者達が休憩を始める中、神はその光景を見ながら兄妹に声をかける。
「よし……それじゃあそろそろ行こうか。因みに、その相手と現場の人達には既に話は通してるから心配はいらないよ」
「わかりました」
「はい」
兄妹が返事をした後、四人は現場へ入っていこうとすると、そこに小さな包みを持った一人の少女が現れ、神と秘書の少女を一瞥すると、少し驚いた様子で頭を下げた。
「あ、神様達。お疲れ様です」
「ああ、お疲れ様。今日も彼にお弁当を届けに来たのかな?」
「はい、頑張ってる彼を応援したいので。ところで、そちらの二人は……?」
「ああ。彼らは僕達の友人で、彼の“関係者”だよ」
その言葉を聞いた少女は少し哀しげに微笑む。
「……じゃあ、今日がその日なんですね」
「そういう事だね。そして彼は……ああ、いたいた。二人とも、彼が今回の試練の相手さ」
「試練の相手……え、アイツって……!?」
「う、うそ……」
二人が驚く中、一本の水筒を持った作業者の服装の少年が近づいてくると、少年は兄妹を見て何かを悟ったように息をついた。
「……なるほど。今日がその日だったか」
「お、お前……!」
「……まさか、こんな形で再会するなんてね……」
「……再会、か。二人にとってはそうなんだよな」
「二人にとってはって……」
『導き手』が警戒した様子を見せる中、神は少年を手で指し示しながらにこりと笑う。
「では、紹介しよう。最後の試練の相手は君達のかつての親戚の少年さ」
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




