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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第82話 ブライトアンクレット 後編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「……だから、私はお兄ちゃんやお姉ちゃんが大好きなんだ」

「わあ、そうなんだ! 私も優しいお兄ちゃんとお姉ちゃんが欲しいなぁ……」


 会話を始めてから数十分後、機会を窺っていた『探し手』だったが、中々『繋ぎ手』から気持ちを引き出す事が出来ず、徐々に顔には焦りと不安の色が見え始めた。


「どうしよう……小さいお姉ちゃんと話すのは楽しいけど、このままじゃ試練を終わらせられないし、お兄ちゃんやお姉ちゃんのところにも帰れないよ。でも、どうやって気持ちを引き出せば良いんだろう……」


 不安を感じながら呟いていたその時、『探し手』は『アルケミーボトル』をチラリと見た。


「……そういえば、『アルケミーボトル』にはまだ飲み物が入ってたはず。これを何でも正直に話してくれるようになる飲み物に変えてしまえば……」


『探し手』はそう言いながら『アルケミーボトル』を手に取ろうとしたが、その手は途中で止まり、手を引っ込みながら静かに首を横に振った。


「……それはダメ。そんなのは明らかなズルだし、『アルケミーボトル』だってそんなのは望んでない。それに、こうして『ブライトアンクレット』と引き合わされたのなら、『ブライトアンクレット』が何か関係してるからなんだもん。もう少し頑張ってみないと……!」


『探し手』が気合いを入れ直していた時、それをジッと見ていた『繋ぎ手』は羨ましそうな表情を浮かべる。


「……『探し手』ちゃんは本当にお兄ちゃんやお姉ちゃんが好きなんだね」

「え? あ、うん……それはもちろん。学校だと自分のお兄ちゃんやお姉ちゃんがそんなに好きじゃないって子もいるけど、私はそんな事ない。まだまだ未熟で小さな私にお兄ちゃんやお姉ちゃんは優しくしてくれるし、何かあったら守ろうとしてくれる。

だから、私もいつかはお兄ちゃんやお姉ちゃんを守れるようになりたい。守られるだけじゃなく、今度は守る側にもなって支える側にもなる。それがみんなに対して私が出来る恩返しだから」

「……そっか。因みに、私がお兄ちゃんやお姉ちゃんをちょうだいって言ったらどうする?」

「……あげない。勝手かもしれないけど、私はまだまだお兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒にいたい。肉親はもうお兄ちゃんだけだけど、お姉ちゃんもお姉さんも私にとっては大切な家族で、もっと一緒にいたい人達だから」


『探し手』が心からの言葉を口にすると、『繋ぎ手』は優しく微笑んだ。


「……いいな、そう思える相手がいるのって。私は一人でいないといけないから」

「……そんな事ないよ」

「ううん、一人でいないとダメなの。そうじゃないと、私はまた誰かを傷つけるし、人生をおかしくしちゃう。だから、ひとりぼっちで良い。誰かに迷惑をかけるくらいなら、私は一人で良いの」

「……ダメだよ」

「え……?」

「そんなのはダメ。一人じゃないといけないなんて事はないの。小さなお姉ちゃんが誰かと一緒にいたいって思うなら、その気持ちは大切にしないと」

「『探し手』ちゃん……」

「だから、私が──ううん、“私達”が照らすよ。この薄暗い世界も小さなお姉ちゃんの心の中も。だから、お願い。『ブライトアンクレット』」


 その言葉に応えるように『ブライトアンクレット』から目映い程の光が放たれると、空を覆っていた厚い雲は徐々に散って太陽の光が降り注ぎ、萎れていた花達も少しずつ元気を取り戻し始めた。


「……明るい」

「さあ、行こう。小さなお姉ちゃんの未来がどこにあるのかはまだわからないけど、私が一緒に“探して”あげるよ」

「うん」


 安心したように『繋ぎ手』が微笑み、『探し手』の手を取った瞬間、二人は白い光に包まれ、気がつくと、『探し手』は神達の目の前にいた。


「ここは……もしかして戻ってきたの?」

「うん、試練クリアおめでとう。一瞬悪い考えには行き着きかけたけど、どうにか踏ん張れたね」

「あ、はい……あの、さっきの小さなお姉ちゃんは……」

「彼女は試練のための幻影。だけど、君が彼女の心を静かに照らし始め、一緒に探してあげると言った事で完全に心を照らしてあげられた。だから、こうしてクリア出来たんだ」

「そっか……そういえば、お兄ちゃんはまだ戻ってきてないんですか?」

「『導き手』はついさっき次の試練に向かったよ。という事で、君も早速次の試練に行ってきてもらうよ。準備は良いかな?」

「……はい、大丈夫です」

「わかった。それじゃあ行ってらっしゃーい」


 その声と同時に『探し手』は再び白い光に包まれ、そのまま静かに姿を消した。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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