幕間
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
現世から隔絶された空間に建つ世にも不思議な道具を扱っている道具店、『不可思議道具店』。その店内には『繋ぎ手』達の他にも眉間に刀傷があるスーツ姿の男性達、そして神と秘書の少女の姿があり、神は店内にいる全員を見回してから静かに口を開いた。
「さて……それじゃあそろそろ話を始めようかな」
「それは良いんだが……お前さん達の話に俺達も混ざって良いのか? 俺達も話したい事があって来たが、そっちとは恐らく別件だぞ?」
「それは大丈夫ですよ。この子達の事なら僕達も関わるべきですから」
「そうか……」
「それじゃあ話を始めていくんだけど……『繋ぎ手』の能力の具現体である『救い手』の件は未だに解決していないけど、君達は彼女を無理に捕らえる気はもう無いんだよね?」
「はい。たしかにそのままにはしておけませんが、以前のように急を要するという考えはないですね。彼女にも彼女なりの考えがあり、必要な時には自分から来るという意思があるようでしたから」
「そっか、それならそれでも良いよ。僕も君達の意見は尊重したいし、『創り手』から聞いた話から考えるに暴走しているような様子は見られないからね」
神がニコニコと笑いながら言う中、人の良さそうな顔つきの男性は少し不思議そうな表情を浮かべる。
「……なんだか意外だな。やってる事自体はあまり誉められた事じゃないから、とりあえず注意喚起くらいはするって言うと思ってたのに」
「どうやら彼女達には“保護者”がいるようだからその心配はいらないですよ。さて、僕の用事はこれで終わりなので、今度はそちらの用事を済ませてもらって良いですよ」
「わかった。それじゃあ俺達の方の話をさせてもらうんだが……この前、ウチの裏の仕事の際に妙なガキと出会ったんだ」
「妙って……?」
「そのガキはあるチンピラ共が経営していた売春を目的とした非合法の店で働かされていてな、その店を潰すのが仕事だったからとりあえずやってきたんだが、そのガキはすっかり薬漬けにされて、もうまともな生活すら遅れないレベルになっていた。
ただ、その様子が少し妙でな、薬の影響で狂っているにしておかしいくらいに誰かに身を売りたがっていたんだ。それで、どうにか話を聞き出したら、『フォースコントローラー』のせいでこうなったって言ってたんだが、これはお前さん達の道具のせいではないよな?」
「はい、ウチにその名前の子はいないので、『救い手』側の道具だと思います。でも、それが一体……?」
「……ここからが本題なんだが、その店を経営していた奴らにはそいつらを裏から操ってる奴らがいて、まだ未確定ではあるが、どうにもその中に『繋ぎ手』の元許嫁らしい奴がいるんだ」
「え……?」
刀傷の男性の言葉に『繋ぎ手』が驚く中、『導き手』は心配そうに『繋ぎ手』を見てから刀傷の男性に話しかけた。
「でも、まだ未確定なんですよね?」
「ああ、まあな。だが、名前も性別も一致するし、年齢もお前達と同じくらいらしいからな。そうだと考えて間違いないと思う」
「そんな……」
「責任を感じたりショックなのはわかる。だが、こうなってくるともう『救い手』側と小競り合いをしてる場合じゃないはずだ。近い内に向こうとも話しておけ。そうじゃないと、お前達だけじゃなく、『救い手』達まで確実に被害を受けるだろうからな」
「わかりました。それなら私が時間を見て話をしてきます」
「あ、それなら俺も……」
「いや、君にはちょっと来てもらう用事があるから、今から一緒に来てくれるかな?」
『導き手』の肩に神が手を置きながら言うと、『探し手』は驚いた様子で神に視線を向ける。
「え……用事ってなんですか……?」
「彼からはある物を感じるからね。そしてそれは、恐らくこれから何か役に立つかもしれない。後、君にも来てもらおうかな、『探し手』。君からも感じる物があるからね」
「わ、わかりました……」
「という事で、少しの間、この子達を借りていくよ。それじゃあ行こうか、二人とも」
「……はい」
「……わかりました」
気乗りしない様子で答えた後、二人は『繋ぎ手』に視線を向け、そのまま神達と共に店を出ていった。その後、ショックを受ける『繋ぎ手』を見ながら刀傷の男性は小さく息をつくと、『創り手』に声をかけた。
「それでは我々はこれで失礼します。何かまたあったら報告しに来ます」
「はい、ありがとうございます。皆さん、気をつけて帰ってくださいね」
「ありがとうございます。よし、それじゃあ行くぞ、お前達」
その言葉に男性達は頷いた後、それぞれ『繋ぎ手』に声をかけてから店を出ていき、店内は『創り手』と『繋ぎ手』の二人だけが残された。
「……どうしよう、あの時にただ逃げるんじゃなく、ちゃんと能力を解除しておけば……」
「それを今言ってもしょうがないわ。今は後悔をするよりも事態を終息させる事が大事」
「事態を終息させる……そうですね、こうなった以上、どうにかしないといけない。だったら、泣いたり迷ったりしてる暇はないですもんね」
「そういう事。さあ、とりあえず次に向けて話し合いをしましょう?」
「はい!」
ようやく『繋ぎ手』に笑顔が戻った後、二人は話し合いをするために店奥へ向けて歩き始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




