第80話 心惹膏 後編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
よく晴れたある日の事、『繋ぎ手』は二人の人物と共に街中を歩いていた。
「うーん……今日も良い天気だなぁ。やっぱりよく晴れた日は気分がいいね」
「うん、そうだね。『アンサーミラー』もそう思うでしょ?」
『うん、私も同感』
「まあ、曇ってたり雨降ってたりするよりは晴れてる方が動きやすいしな。それにしても……なんだか申し訳ないな、ウチの買い物に付き合ってもらっちゃって……」
首に青いチョーカーをつけ、カジュアルな服装に身を包んだ人の良さそうな男性が両手に荷物が入ったビニール袋を持ちながら申し訳なさそうにする中、野菜や精肉などが入ったビニール袋を持った『繋ぎ手』は微笑みながら首を横に振る。
「これくらい大丈夫ですよ。私達だってお世話になってるんですし、こうして偶然会えたわけですから」
「そっか……ボスから元気そうだったって話は聞いてたけど、この様子なら安心してよさそうだ」
「その話をしてる時、ボスのおじさんもすごく安心した感じだったしね」
『まあ、『繋ぎ手』とは色々あったみたいだけど、今では少しは心を許せる相手になってるのかもね』
『アンサーミラー』の中の少女がクスリと笑っていたその時だった。
「……あっ、貴女は……!」
「え……あ、貴女はこの前お店に来てくれた子だね」
嬉しそうに言う『繋ぎ手』の目の前には同じく嬉しそうにしている少女と少し緊張した様子の少年がおり、男性は三人を軽く見回してから納得した様子で頷いた。
「ああ、もしかして『心惹膏』っていう道具を買っていったっていう子かな?」
「あ、はい。えっと、あなた方は……?」
「俺とこの子もこの『繋ぎ手』に道具と出会わせてもらった側だよ。それで、今はよき友人であり協力関係みたいな物かな」
「なるほど……」
「それで、隣にいるのはもしかしてお姉さんの彼氏さん?」
「うん、そうだよ。中々告白出来なかったんだけど、彼女がその『心惹膏』をつけ始めた日にいてもたってもいられなくなって告白して、今はこうして付き合うようになったんだ」
「そうか……その様子だと、『心惹膏』ともうまくやれてるみたいだね」
男性の言葉に少女は微笑みながら頷く。
「はい。そういえば、『心惹膏』を塗りすぎるとどうなるんですか?」
「塗りすぎると、そこからどんどん体が溶けていって、最後にはドロドロの何かになって、そのドロドロに色々な人が惹き付けられてしまってたね」
「そうだったんだ……それならそうならないようにこれからも気を付けよう」
「うん、それが良いよ」
「そうだね。さて……それじゃあ僕達はそろそろ失礼しますね」
「ああ、気をつけて帰ってくれ」
「お兄さん、お姉さん、ばいばーい」
そうして少女と少年が幸せそうに手を繋ぎながら歩き去っていくと、その姿を見ながら『繋ぎ手』は安心したように息をついた。
「やっぱりあんな風に道具とうまくやれて幸せそうにしてる人を見られるのは良いなぁ」
「俺には『繋ぎ手』達みたいな能力はないけど、その気持ちはわかる気がするよ。さて、それじゃあ俺達もそろそろ行こうか。お店の人達の話も聞きたいし、よかったらウチに少し上がっていってくれると助かるよ」
「私も聞きたい!」
「うーん……まあ、時間はあるし、せっかくだからお誘いに乗らせてもらおうかな」
嬉しそうに『繋ぎ手』が言った後、三人は仲良く話をしながらゆっくりと歩き始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




