第78話 テレパシーキーホルダー 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「……よし、そろそろ試してみるか」
その日の夜、少年は自室の机に向かいながら独り言ちる。机の上には太陽のキーホルダーが置かれており、少年は真剣な表情で太陽のキーホルダーを見つめた。
「この『テレパシーキーホルダー』があれば、対になる月のキーホルダーを持ってる相手とテレパシーで会話が出来て、その会話は思った事が全部筒抜けになるから、嘘はつけないって言ってたな。
俺は嘘をつくつもりはないけど、アイツはもし面と向かって話せても、適当にはぐらかしたり嘘をついて誤魔化そうとしたりする可能性は高い。だから、嘘をつけないっていうこの制約は俺にも効きはするけど、だいぶ助かるはずだ」
『テレパシーキーホルダー』を持ちながら少年は独り言ち、強く握りしめながら幼馴染みの顔を思い浮かべていたその時だった。
『はあ……ダルい。このまま消えちゃおうかな……』
「えっ……」
突然頭の中に少女の暗い声が聞こえて少年は驚いたが、すぐにハッとすると、少女に呼び掛けるように頭の中に言葉を思い浮かべた。
『おい、聞こえるか!?』
『え……な、なにこれ!? 頭に声が……!?』
『……どうやら本当に聞こえてるみたいだな。俺だよ、こんな時間にごめん』
『こんな時間にと言うか……これ、どういう事なの? もしかしてあの月のキーホルダーが何か関係してるの?』
『その通りだ。このキーホルダーは太陽と月でセットになっていて、持っている人同士はこうしてテレパシーで会話が出来るんだ』
『そんな事が……』
少女が驚く中、少年は少し安心したように微笑んでから会話を続けた。
『お前が引きこもった理由を訊きたいけど、どうせ答えてはくれないんだろ?』
『……なんで言わなきゃいけないの? もう私の事なんてほっといてよ! 私なんていたってしょうがないんだから!』
『そんな事ない!』
『え……?』
『今は学校も別々になって、遊ぶ機会も減ってたけど、俺はお前がいてくれたから楽しい毎日を過ごせてたんだ。お前がいない方が良いなんて事はない。本当にそう思ってるならそもそもお前と話をしに行こうなんてしてないし、このキーホルダーをおばさんに託したりなんてしてないんだよ』
『…………』
『だから、少しずつ俺に話したい事を話してみてくれ。こういう形でも良いなら、俺はお前としっかりと向き合ってまたお前と楽しく過ごせるように努力するからさ』
『……わかった』
少女の少し心を開いたような声に少年は安心した後、少女との声を出さない会話を楽しみ始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




