第77話 ゴーストトランシーバー 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
頭上に星空が広がり、月明かりが地上を静かに照らす夜、男性はある屋敷の中にいた。時刻は既に深夜と言える時間だったが、屋敷内は怒声や物音で騒がしく、男性はそれを聞きながら呆れた様子でため息をつく。
「またやってるな……まあでも、それも今夜で終わりだ。そうじゃないと親父も安らかに眠れないしな」
そう言いながら男性は服のポケットから小さなトランシーバーを取り出す。
「……この『ゴーストトランシーバー』を使えば、あらゆる幽霊と会話が出来るってあの子達は言っていた。それなら、俺は直接親父にありかを訊くまでだ」
男性は決意した様子で独り言ちると、『ゴーストトランシーバー』の電源を入れてしっかりと手に持った。
「……親父、聞こえるか? もし聞こえるなら返事をしてくれ」
ザーという雑音が聞こえる中で男性が『ゴーストトランシーバー』に向かって声をかけると、受話口から老齢の男性らしきしわがれた声が聞こえ始めた。
『……なんじゃ、死んだワシを呼び出しおって』
「……親父? 本当に親父なのか!?」
『うむ、そうじゃ。それで、ワシに何の用じゃ?』
「……遺言状のありかを教えてほしいんだ」
『なるほど、そういう事か。じゃが、遺言状のありかは教えられん。どうせお前もワシの遺産が目当てで……』
「いや、それは違う。俺は……遺言状を無くすためにここにいるんだからな」
『……なんじゃと?』
父親の驚く声が『ゴーストトランシーバー』から聞こえると、男性はため息をつきながら首を横に振る。
「……もうたくさんなんだよ。遺言状一つのために言い争ったり騒がしくしたりするのは。今だって向こうでは怒声や物音で騒がしいし、このままだとこの屋敷がダメになるかもしれない。だから、遺言状自体を俺は無くしたい。どうせ誰が遺産を相続したってまともな使い方をされるとは思えないしな」
『そうか……』
「だから、教えてくれ。遺言状はどこにあるんだ?」
『……仕方あるまい。ならば、教えてやろう。遺言状のありかとその内容を』
『ゴーストトランシーバー』を通して父親が話すと、男性はその内容に驚いたが、すぐに納得したように頷く。そして『ゴーストトランシーバー』からその声が聞こえなくなると、男性は決意した様子で『ゴーストトランシーバー』をポケットにしまった。
「……なるほどな。よし……それならさっさと行動開始と行くか。教えてくれてありがとうな、親父」
笑みを浮かべながら独り言ちた後、男性は未だに怒声や物音で騒がしい屋敷内をゆっくりと歩き始めた。
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それでは、また次回。




