第76話 チャージドラム 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「ん……」
幾つかの白い雲が浮かぶ青空が広がる朝、少年は目を覚ますと、声を上げながら体を上へと伸ばした。
「……はあ、朝か。なんだかまだ疲れてる感じがするけど起きなきゃな」
少し辛そうに言いながら体をベッドから出していたその時、机の上に置かれた小さな赤いでんでん太鼓が目に入り、少年は机に近づいた。
「これは……昨日貰った奴だな。『チャージドラム』っていう名前で、話によればこれを鳴らす事で元気や気力が沸いてくるらしいけど……まあ、試しに鳴らしてみるか」
半信半疑な様子で少年は『チャージドラム』を手に取ると、鳴らすために軽く手を揺らした。その動きに合わせて『チャージドラム』は軽い音を鳴らし、その音を聞いている少年の表情はどこか懐かしさを感じている様子だったが、次第に体は淡い赤い光を放ち出すと、その表情も驚いた物へと変わり始めた。
「な、なんだ……これ。さっきまで少し体も重くて眠気も強かったのに、それがどんどん無くなってくし、今なら何でも出来そうな気がしてくる……!?」
自分の身に訪れた変化に少年が驚いていたその時だった。
『もう大丈夫だよ、お兄さん』
「え……?」
聞こえてきた幼い少年の声に驚いて『チャージドラム』を鳴らす手を止めると、少年は不思議そうに辺りを見回す。しかし、周りにはそれらしい姿はなく、少年は不思議そうな表情のままで『チャージドラム』に視線を向けた。
「今のは……お前が教えてくれたのか?」
驚いた様子で問いかけたが、『チャージドラム』はそれには返事をしなかった。しかし、少年は嬉しそうに微笑んでから『チャージドラム』の表面を軽く撫で、再び机の上に置いた。
「……ありがとう、『チャージドラム』。おかげで今日一日頑張れるだけの元気と気力が沸いてきたよ」
微笑みながら少年がお礼を言っていると、部屋のドアがトントンとノックされる。
「朝だからそろそろ起きなさいね」
「ああ、起きてるから大丈夫」
「あら、珍しいじゃない。いつもならまだ寝てたり元気なさそうに答えたりするのに」
「今日は元気があるからさ」
「そう。まあ、それなら良いわ。とりあえず早く来なさいよ」
「ああ、わかった」
母親の声に答えた後、少年は軽く体を伸ばしてから再び『チャージドラム』に視線を向けた。
「これからも度々世話になるよ。だから、これからもよろしくな、『チャージドラム』」
そう言って少年はドアを開けて外に出ると、『チャージドラム』は窓から差し込んでくる朝日を反射してキラリと輝いた。
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それでは、また次回。




