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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
237/317

幕間

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

 とある街中にある一軒の喫茶店、その店内で『創り手』はカウンター席に座り、淹れたてのコーヒーを飲んでいた。


「ふう……」

「どうですか、『創り手』さん」

「……はい、とても美味しいです。久しぶりに来たけれど、やっぱりマスターさんの淹れるコーヒーは絶品だと思います」

「そう言って頂けて嬉しいですよ」


『創り手』の言葉にマスターが微笑む中、その様子を隣の席で見ていた『救い手』は手に持ったカップに注がれている紅茶を一口飲んでから『創り手』に話しかける。


「それで、本日はボク達にどういったご用件かな?」

「特に用事があるわけじゃないわ。ただ、昨日の夜にここの話をした時に『導き手』君が妙に複雑そうな顔をしていたから、もしかしたらと思っただけよ」

「そうか。やはり彼は正直者だね。因みに、コピー体として君はそんな本体をどう思うかな?」

「……やっぱりなとは思う。俺もあいつも嘘をつくのは苦手だからな」

「たしかにお兄ちゃんはいつも色々な事を正直に話してくれるからね。もっとも、本当に隠しておきたい事は隠しておこうとするけど」

「ふふ、そうだね。さて……こうして“ボク”として会うのは初めてだよね? 『創り手』」

「ええ、そうね。『救い手』、貴女の目的は何? 何のために貴女は道具を創り、それを色々な人に渡しているの?」


『創り手』の言葉に『救い手』は再び紅茶を一口飲んでから答える。


「……一言で言うなら、罪滅ぼしみたいな物、なのだろうね」

「罪滅ぼし?」

「ああ。ボクが発現してその力を使った事で、彼女は数人の人生を狂わせてしまった。もちろん、その数人が彼女に対して正しい行いをしてきたわけではないけど、ボクが彼女の姿をしているのは、ボクという過去を乗り越えて、また誰かを心から好きになれるようにしてほしいからなんだと思っている。ボクとしてはその相手として選ぶなら『導き手』君がおすすめだけどね」

「……それは同感ね。恋愛感情は無いようだけど、異性の中では一番のお気に入りで、過去に強制されたような事を今度は自分達の意思でするとしても理想の相手は彼のようだから」

「そうだろうね。そうして人生を狂わせてしまった分、今度は誰かの人生の手助けをしたい、恵まれない人生を送っている人を救いたいという思い。それが最近になってようやく見つけたボクの存在理由さ。道具として扱われていたボク達が今度は道具の力で誰かの助けになろうとするなんてなんだか不思議な話だけどね」

「救う、と言うわりには何人もの人生をまた狂わせているようだけど?」

「それはそちらも同じだろう? ボクは救いたいとは思うけど、ただ救おうとするんじゃなく、高められた悪意や邪念にも負けずに頑張った相手に幸せになってほしいだけさ。道具に頼るだけで何もなく幸せになろうなんてのは烏滸(おこ)がましいし、それはあのどうしようもない大人達と元許嫁と一緒だ。彼女を道具として扱って、その道具にだけ全てを背負わせて自分達は楽に幸せになろうとする。実に馬鹿馬鹿しい話だよ」


 その『救い手』の表情には憎しみの色が浮かんでおり、その様子を見ながら『創り手』は小さく息をつく。


「……つまり、貴女からすればあの子に対して敵意はないわけね?」

「ないよ。この二人を『コピーカメラ』でコピーしてきたのもあくまでもボクにも一緒に笑いながら話したり協力しあったり出来る助手が欲しかったからだし、時が来たら彼女に会いに行って全てを終わらせるつもりだ。

ボクがいつまでもこうして彼女の姿をもらったままでいるわけにもいかないし、ボクは彼女に幸せな人生を今度こそ歩んでほしいだけだからね」

「……それなら私からも言う事はないわ。一応、神様にはこの件は話しておくけど、たぶん神様もそれなら貴女に何かをする気はないって言うはずよ」

「それは助かるよ。ところで、ボクの創った道具達は同じ道具を創る力を持つ者としてどう見えたかな?」

「……そうやって試練を与えていこうとする貴女らしい道具達だと思うし、どれも面白い道具達だわ。もっとも、乗り越えられなかったら、大抵は人生の破滅か死が待っているようだけど」

「まあね。だけど、その代わりに乗り越えられたらその人にとって本当に幸せな人生が訪れるのは間違いないよ。君達がローリスクローリターンなら、ボクはハイリスクハイリターンでやっているからね」

「ハイリスクで済むレベルには見えないけれど……」

「ふふ、君にとってはそうかもね。さて、こうしてせっかく来てくれたんだ。もう少し話していってくれたまえ。もちろん、君さえよければだけどね」


 その『救い手』の言葉に『創り手』はため息をつく。


「……まあ、たまには良いかしらね。私も貴女の道具を創る時の話は興味があるから」

「そう言ってもらえて嬉しいよ。では、時間が許す限り、存分に話そうじゃないか。まあ、マスターの手伝いをする時はそちらを優先させてもらうけどね」

「ええ、構わないわ」

「ふふ、ありがとう」


『救い手』が嬉しそうに笑い、『創り手』が優しそうな目で『救い手』を見る中、コピーの兄妹とマスターは嬉しそうにする『救い手』をどこか安心したように見守っていた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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