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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第73話 マインドウォッシャー 前編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「あーあ……家に帰りたくないなぁ」


 日もすっかり暮れ、辺りに暗闇に包まれ始める夜、一人の少年がとぼとぼと歩いていた。


「今日もどうせ父さんから殴られたり怒鳴られたりするんだろうし、家に帰ったって良い事は何もないよ。自分の仕事がうまく行ってない日はいつもそうだし、そうじゃなくても俺達とはあまり話そうともせずにすぐパチンコや飲みに行って金だけ使おうとするからもう俺も母さんも疲れ果ててるし……はあ、どうにかならないのかな」


 少年が重い足取りで歩いていたその時だった。


「そこの君、ちょっと良いかな?」

「え……?」


 突然背後から聞こえてきた声に驚きながら立ち止まり、少年がゆっくり背後を向くと、そこにはセーラー服姿の少女と学生服姿の少年、そして紫色のパーカーに緑色のスカート姿の少女が立っていた。


「えっと……君達は?」

「私達は道具と人間の橋渡し役と助手君達だよ。ところで、なんだか落ち込んでるように見えたけど、何かあったの?」

「あ、ああ……実はウチの父さんが結構乱暴で自分勝手な人で、自分の機嫌が悪いと俺達家族にすぐ暴力を振るうし、そうじゃなくても俺達とはあまり話そうともせずにすぐパチンコや飲みに行くから俺も家に帰りたくないなって思ってたんだ」

「つまり、その父親の事をどうにか出来れば良いのか」

「えーと……あ、あるみたいだね。お姉ちゃん、鞄の中を見せてもらって良い?」

「うん、もちろん」


 そう言って『繋ぎ手』が鞄を下ろし、『探し手』はその中に手を入れると、一本のボトルを取り出した。


「それは……?」

「この子は『マインドウォッシャー』っていう名前で、中身は良い香りのリンスインシャンプーなんだけど、捻れた精神の人や心が穢れている人が使うと、頭から染み込んでその精神や心の穢れを正してくれるんだ。

因みにそれ以外の人が使っても普通のリンスインシャンプーとして使えるし、一度『マインドウォッシャー』で精神や心を正された人はずっと正しい考え方を続けるから元に戻る心配はしなくて大丈夫だよ」

「それじゃあウチの父さんみたいな人だったら……」

「うん、ただ乱暴な人ってわけじゃ無さそうだし効果はあると思うよ。そしてこれは貴方にプレゼントするよ。大切にしてあげてね」

「え……い、良いのか?」

「この『マインドウォッシャー』は店頭に置けなかったり渡しても良いって言われたりしてる奴だからな」

「なので、遠慮無くもらっちゃって大丈夫ですよ」

「そっか……それじゃあありがたく貰うよ。ありがとう」

「どういたしまして」


『繋ぎ手』がにこりと笑う中、『導き手』は『マインドウォッシャー』を見ながら『繋ぎ手』に話しかけた。


「それで、これには注意点ってあるのか?」

「うん、あるよ。この子は使ってもすぐに中身は元に戻るから詰め替えはいらないんだけど、このボトル以外に入れ換えて使おうとはしないで欲しいんだ。それをやると大変な事になるしね」

「大変な事……わかった、ウチの父さんをどうにかしたいだけだし、それはしないようにするよ」

「うん、ありがとう。それじゃあ私達はそろそろ帰るね。その子の事、大切にしてあげてね」

「ああ、もちろんだ」

「それじゃあまたな」

「またね、お兄ちゃん」


 そして三人が去っていくと、少年は手に持った『マインドウォッシャー』に視線を落とした。


「捻れた精神や心の穢れを正せる……これでようやく家に帰るのが嫌じゃなくなるんだ。よし……早く帰って試してみないと」


『マインドウォッシャー』を強く握りながら独り言ちると、少年は足早に家へと向かった。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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