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不可思議道具店  作者: 伊達幸綱
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第72話 求心水 前編

どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。

「あー、毎日つまんねえなぁ……」


 日もすっかり沈み、道行く人の姿も無くなり始めた頃、一人の少年が心底つまらなそうな表情で暗くなった道を歩いていた。


「楯突いたり喧嘩売ってきたりする奴は殴ったり返り討ちにしたりして黙らせてるし、これだと思った女がいたら捕まえて恐怖を与えて抵抗すら出来なくしてから楽しませてもらってる。

けど、どうにもつまんねえんだよな。なんか奴隷みたいなのを急に失った感じがしてイライラするし……あーあ、なんか良い方法はねぇかなぁ」


 少年の声が辺りに響いていたその時だった。


「やあ、そこの君」

「あ?」


 背後から聞こえてきた声に立ち止まり、少年がゆっくりと振り向くと、そこには黒いパーカーのフードで顔を隠した人物が立っていた。


「……なんだよ、お前」

「ボクかい? ボクは恵まれない人の救世主さ。それで、なんだか悩み事がありそうだったけど、何があったのかな?」

「ああ、毎日がつまんなくてどうしたもんかと思ってたんだよ。それに、急に奴隷みたいなのを失った感じがして最近イライラする事も多くなってきてたしな」

「なるほどね。なら、彼の力を借りるのが良さそうだ」


 そう言いながら『救い手』はリュックサックに手を入れると、中から一本のボトルを取り出した。


「……それは?」

「これは『求心水』という名前でね、このボトルの中に水を入れてそれを飲む事でその人は周囲の人間を心を惹き付けるようになるんだ。その人が善人でも悪人でも構わずに周囲の人間を惹き付け、その人を頼り甲斐のある人物だと認識させるんだよ」

「へえ……つまり、奴隷や俺の欲求の捌け口を増やせるわけか」

「そういう事だね。そしてこれは君にプレゼントしよう。大切にしてあげてくれたまえ」


『救い手』が『求心水』を手渡すと、少年は嬉しそうな笑みを浮かべた。


「お、良いのか?」

「ああ、もちろん。ただし、注意点があるんだ。相手を惹き付けるのは良いし、惹き付けた相手はその人の言う事を聞いてくれたり願いを叶えてくれようとしたりするけれど、惹き付けてしまうのは善人も悪人関係ないし、たくさん惹き付けようとして飲みすぎてもいけない。限度としては一日に一本分だ。それを無視してしまうと大変な事になるからね」

「一本分か……まあ、それくらいなら問題ないか」

「ふふ、ならよし。では、ボクはこれで失礼するよ」


 そう言って『救い手』が去っていった後、少年は手の中にある『求心水』に視線を向けた。


「周囲の人間を惹き付ける、か……つまり、これがあればどいつもこいつも俺に従うわけだな。よし……早速明日から試してみるか」


 少年は悪意に満ちた笑みを浮かべると、そのままゆっくりと歩き始めた。

いかがでしたでしょうか。

今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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