第68話 フレグランスバスソルト 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「……ふぅ、久しぶりに朝風呂にしてみたけど、早起きしてからだと気持ちが良いわね」
雲一つ無い青空が広がる朝、女性は湯船に浸かりながら気持ち良さそうに微笑んでいた。その湯の色は空の色を溶かしたようであり、女性が体を動かしたり軽く手で掬い上げたりする度にキラキラと輝いていた。
「昨日の夜はあまりにも疲れて入り忘れたからこうして朝風呂で『フレグランスバスソルト』を使ってみたけど、結構良い香りもするし、たしかに疲れも取れて肩のコリも解れてきてる気がする。
それに、浸かり続けてるからか肌もすべすべになってるように見えるし……これは良い物を貰ったわね。ただ、水やぬるま湯には入れたり入れた後にうっかり冷ました物には入ったらダメって言われたから、いつもより少し熱めにしてるけど……まあ、これはこれでありかもね。気も引き締まるし、仕事前には良いのかも。さて……それじゃあそろそろ上がって準備をしましょうか」
女性は湯船から体を出して浴室から出ると、バスタオルやドライヤーで髪や身体を乾かし、職場へいく準備を始めた。それから数十分後、準備を整えた女性は戸締まりを確認してから家を出て、そのまま歩き始めると、すれ違った人々は誰もが女性に視線を向けており、その光景に女性は少し驚いたような顔をする。
「……何かしら? 私、何か匂いでも……って、そういえば『フレグランスバスソルト』を使った後は翌日いっぱいまで他人にとって心地よく感じる香りがするようになるって言ってたわね。
それじゃあ、今の私からはそういう香りが出ていて、それでこうして視線を向けられているわけか。まあ、何だかんだでこうして視線を向けられるのは悪くないかもね」
少し自慢気に胸を張りながら女性が歩いていた時、一人の若い男性が近くを通りかかると、男性はハッとした様子で女性に顔を向け、どこかうっとりとした様子で女性を見つめていた。
その姿を見た女性は一瞬驚いたものの、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべ、男性へゆっくりと近づいた。
「おはよう、今日は良い天気ね」
「あ……お、おはようございます。先輩、何か香水でもつけてますか?」
「香水……ではないけど、新しく貰った物を使ってみただけよ。もしかして効果出てるのかしら?」
「た、たぶん……先輩から仄かに花の香りみたいなのがしますし、心なしか血色も良くて肌が輝いてるような感じがします……」
「そう、それなら良かったわ。せっかくだし、このまま一緒に会社まで行きましょ。まあ、君さえ良ければだけど……」
「ぼ、僕で良かったら……!」
「ふふ、ありがと。それじゃあ行きましょうか」
「は、はい……!」
男性がどこか緊張したように答える姿を見た女性はクスリと笑う。そして二人は、並びながらゆっくりと歩き始めた。
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それでは、また次回。




