第67話 アテンションスター 中編
どうも、伊達幸綱です。それではどうぞ。
「……さて、今日も学校に行くか」
頭上に雲一つない青空が広がり、太陽が燦々と輝く朝、学生服姿の少年は少し気が進まなそうな表情で独り言ちた。その表情から学校へ行きたくないと考えているのは明らかであり、少年は歩き始めたものの、すぐにため息をついた。
「はあ……今日もみんなからちゃんと話を聞いてもらえないかもって思うとだいぶ辛いな。そういえば……昨日、不思議な子達から貰った物があったっけ……」
そう言いながら少年はポケットから金色の小さな星のペンダントを取り出して首から提げた。
「……たしか『アテンションスター』っていう名前で、これをつけてれば周囲から注目されるようになって、見てる人は僕から目が離せなくなるって話だけど……どれだけの力があるんだろう?」
不思議そうにしながら少年は星の部分を指で弾くと、『アテンションスター』からは綺麗だが少し不思議な音が鳴り、その音に少年は安らいだような表情を浮かべる。
「……なんだか良い音色だな。聞いてると、空に流れ星が流れていくようなイメージが浮かぶけど、流れ星なんて今まで見た事がないから、答え合わせも出来ないな」
少年は残念そうに、しかしどこか落ち着いた様子で独り言ちると、そのまま通学路を歩いていった。そして、同じように通学路を歩く生徒がいる中を少年が歩いていくと、生徒達は弾かれたように少年へと視線を向け、その視線は絶えず向け続けられた。
「……なんだかみんなこっちを見てる気がするな。もしかして『アテンションスター』の力が早速働いてるのかな」
視線を向けられて少し落ち着かない様子で少年がキョロキョロとしていたその時だった。
「きゃっ!」
「うわっ!?」
少年は突然横道から出てきた制服姿の少女とぶつかり、二人は揃って尻餅をつくと、他の生徒から視線を向けられる中で臀部を擦った。
「いてて……あ、ごめん。大丈夫だった?」
「あ……だ、大丈夫です。貴方こそお怪我はありませんか?」
「僕も平気。本当にごめんね、突然ぶつかっちゃって」
「私こそごめんなさい……って、なんだか他の生徒からだいぶ見られているような……」
「あ……」
ようやく視線を向け続けられている事に気づき、少女が落ち着かない様子で顔を赤くしていると、少年は小さくため息をついてから『アテンションスター』に触れた。
「……一度注目を集めないようにしてくれるかな」
すると、少年達に向けられていた視線は急に無くなり、その事に少女はわけがわからないといった様子でキョロキョロと周りを見始めた。
「え、え……?」
「これで大丈夫だよ。さあ、とりあえず一緒に学校に行こう。このまま君を放ってはおけないし、今は大丈夫でも歩いてる最中にどこか痛んでも良くないからね。まあ……僕と一緒が嫌だって言うなら、もちろん一人で行ってくれても大丈夫だけど……」
「……そんな事ないです。ぶつかってしまったのは私の不注意も原因ですし、貴方だって同じようにどこか痛む可能性はありますから、お互いに相手の様子を見ながら学校に行きましょう」
「……うん、わかった。それじゃあよろしくね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
少年が差しのべた手を取って立ち上がりながら少女が答えた後、二人は話をしながら並んで歩き始めた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、また次回。




